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森と林業と動物の本

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2020/07/28

『百姓たちの山争い裁判』に見る山利用

百姓たちの山争い裁判』(渡辺尚志著・草思社刊)を読んだ。

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百姓とあるが、これは農民を指すのではない。さまざまな仕事をする庶民であり、その中に山村に住む民も入る。そして林業も立派な百姓の仕事である。彼らは、はるか昔から山の境界線を巡って隣村などと戦い続けてきたらしい。

具体的には、山の木だけでなく草刈りの権利であり、薪や炭焼き、食料を採取することもある。

江戸時代では、まず村内のことは村内に裁判権がある。それが隣村も交えると代官や藩が出てくるが、それをも超えて江戸の幕府に訴えることもある。なかには燐の藩との争いになり、藩の領地の奪い合いのため裁判になることもあったようだ。表向きは地元の庶民、つまり百姓の争いだが、実は藩、つまりサムライも後押ししていて、江戸で領地争いを繰り広げたのだ。

また裁判の方法には、鉄火起請のように焼けた鉄の棒を長く持ち続けた方が勝ち、という恐ろしい判定方法もあるが、やはり証拠となる文書をいかに集めるか、そして訴えを認めてもらえるような起訴文を書くことが必要で、さらに弁の立つ、口頭弁論が有効。今の裁判と基本的には同じだ。ただし三権分立ではなく、お役人が一人で3役(行政・立法・司法)をやってしまうのだから面倒だ。もっとも判決が出ても認めず抗弁する百姓もいるから、サムライ側もうんざり……。

なかには300年続いた裁判……一つの判決が出ても、また次の争いを起こし、延々と続くのだが、江戸時代が終えて明治になっても続けていたのだ。いやはや、大変。しかも裁判で勝っても、その訴訟費用を支払うために、その山を売却したりするのだから(゚д゚)。
それが崩れるのが明治の官民有林の区分だ。これまでは所有が誰であろうと、問題は利用権、いわゆる入会権だったが、ここで所有権=利用権となってしまう。これが日本の土地制度の根幹を変える。

……とまあ、近代以前の土地制度を考えるのに勉強になる。実は、日本には土地の所有権なんてなかったのかもしれない。

一方で山村の焼き畑と言えば、自給自足的農業をイメージするが、実は商品作物も栽培していたらしい。コウゾ、ミツマタ、クワ、そしてカヤを生やして屋根葺き材料にもしたし、スギやヒノキを植えて森を育てていた。

こんな資料から、育成林業の誕生を感じることもできるのである。

 

 

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