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森と林業の本

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2020/07/04

CLTのデメリットを主張しているのは……?

ふと見つけた、こんな記事。

これからの工法・CLT工法 メリットとデメリットは? (前)(中)(後)

ほう、CLTのデメリットを指摘する記事があるのか、というのが私の最初の感想。CLTの記事は、最近になって増えているが、多くは「将来有望な工法、建材」という切り口で、なかなかデメリットを指摘していない。でも実際に売れていないのだから、どこかに問題があると思わないといけないだろう。それを指摘してほしい、私も知りたい、と常日頃から思っていた。

それで読み出したのだが……まず(前)は、CLTそのものの紹介とメリット部分。「日本の林業を振興する」とか「地球温暖化対策の二酸化炭素削減に寄与する」などが並べられ、さらに工期が短い、デザインが変わる、断熱性が高い……などの建材と建築上のメリットが指摘されている。

うん、すでによく出される点だ。では、課題は?と惹きつける。

そこで(中)。

4階建以上になると一般的には耐火建築物で、構造部は1~3時間の耐火性能になるため、「石膏ボードなどを貼る必要がある」(日本CLT協会)

燃え移りを防ぐためCLTパネルにサイディングなどが必要となり、せっかくの木目が見えなくなってしまう。

CLTパネル工法はRC造やS造に比べて、材料コストがまだ高いことが課題

CLTパネルは新しい材料で、接合工法など建て方がまだ確立されていない。データが少なく、安全性などを現場で確認しながら建てる必要がある

CLTパネル工法は経験のある建築士や施工会社がまだ少ない。さらに木造建築は、高度な構造設計ができる技術者が不足していることも課題

RC造や木造軸組工法と比べてアンカーボルトを設置する際の精度の確保が難しく、技術が必要

こんな項目が並ぶ。なるほど、正直知っていることだけど、デメリットを指摘している点はよしとしよう。まあ、研究途上の工法であるのは間違いない。が、それに対する反論的に「補助金が充実しているから、コストは抑えられる」とか記されているのにはムカッ。税金使うのを前提にするなよ。ずっと出し続ける気かよ。

そして、いよいよ(後)だ。ここでしっかりCLTの根本問題を指摘しているか。

(後)を開いて思わず笑った。だって、森林ジャーナリスト田中淳夫氏に聞く CLT工法に課題「業界超えた情報交換を」

ようやく思い出した。少し前に電話で取材を受けたのだった。それが公開されていたのね。
CLTの問題点を、というのでたっぷり話したが、それだけでは全否定になりかねないので、先方は困っている様子だった。それを、なんとかこんな形で(先にメリットを記して)掲載したのね。最後に無理やりひねり出した、CLTを林業振興につなげる方法だって、別にCLTだけのことではない。木材全般の問題だ。

まあ、記事の基本姿勢はCLTを推進したがっているのはわかったので期待はしていなかったが、私のコメントは圧縮して記事をつくったよう。こうなるのも仕方ないだろう。

ちなみに私の立場とコメントを、ここで改めて触れておこう。
CLTは建材としては、そこそこ魅力的。だから建築業界では興味を引くかもしれない。しかし、CLTが日本の林業を振興することは有り得ないし、むしろ木材価格を引き下げる可能性が高い。さらに国産材CLTがつくられることも少なく、超厚物合板マス・ティンバーのようにCLTのライバルとなる新しい建材も次々と登場している。日本で十分に普及するように思えない。数ある建材の一つとして部分的に使われるのが関の山ではないか。

050 

CLTによる建築風景

 

 

 

 

 

 

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木製品・木造建築」カテゴリの記事

コメント

机上の空論は大いに主張するのに、机上でもわかることを何も考えていないのが、この国のありようと思われます。
例えば、集成材での原料となる輸入材の工場での価格が分かっているのですから、それと同等の価格で国産材が入れられるのかが、まず判断することです。その基本を何も検討していない無責任さがあります。
林業用大型機械を導入する際も、稼働時間が十分にペイするものかを事前にわかるはずです。それを無視して導入を促進するから盗伐事件が起こり、それを黙認するような事態になるのです。
この国は基本的なところが腐ってきています。それは国というより国民自体にも大きな問題があるのでしょう。

日本、日本人がいかに非科学的かといつも思います。論理的には結論が出ていることでも、無視して行うのだから。先の戦争もこうして始めたのだろうな……いや、今のコロナ対策も同じだな、と言わざるを得ません。とりあえず、やってる感?を出すことが重要なのでしょうか。

CLTとはあくまでも合成接着剤で板を張り合わせたものですよね。あくまでも強度を強調していますが、それの耐久性とか使用される状況により強度が保たれない。そのことは何も謳われていないですが、問題はないのでしょうか?

接着剤を使うのは、集成材も合板も一緒で、それぞれ最低数十年持つことは確認されています。
CLTも、別に1000年持たせようと思っていないでしょうから、かまわないんじゃないですか。

CLT工場で働いてる人たちは、離職率は高いようです。環境が良くない、接着剤が強すぎて、生活に響くなどなど

なるほど、製造工場で働く人という視点は気がつきませんでした。離職率が高いのはCLTに限ったことかどうかはわかりませんが、労働環境をよくしないと人は集まりませんね。
結局、日本のものづくりの現場そのものが問われているのでしょう。

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