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森と林業の本

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2020/07/18

異変・奈良の鹿減少? 

奈良のシカの頭数は、毎年7月に行われている(奈良の鹿愛護会調査)のだが、だいたいにおいて増え続けていた数が、今年はいきなり102頭も減った結果が出た。

昨年は過去最高の1388頭だった。ところが、今年は1286頭。これほど大規模に数が減少したのは始めての記録ではないか。終戦時などを除けば。

原因は、今のところはっきりしない。そこで、推理してみた。

まず、コロナ禍で観光客が減ったので鹿せんべいをもらえる機会が減って、それならわざわざ公園に出て人間に媚びる必要ないや、と気づいた鹿たちが、森から出てこなくなったという推論が成り立つ。シカは、人に会いに公園に出てくるのではないのだ。むしろ溢れる人間に触られたり追われたりするストレスがなくなって喜んでいるかも。
あるいはソーシャルディスタンスをとって、バラバラにいたら数えにくくなって見落としが増えた……という推論はどうだ。

なお頭数調査を行うのは、寺社の境内や芝の公園部分で、春日山原始林内は調べていない。だから森の奥に潜んでいたらカウントできなかったと考えるのが自然だ。

もしかしたら、鹿せんべいをもらえない公園に用はないと、旅に出たことだって考えられる。春日山を越えて大和高原まで行く。あるいは住宅地に入って街路樹や庭木を食べることを覚えて居つく。こうなると調査にカウントされないだろう。

ただ、別の考え方もある。先月末までの1年間に死んだ鹿の数は308頭で、これは前年より129頭多い。死因別では、病気が102頭(前年比15頭増)、交通事故(前年比15頭増)の49頭頭。また老衰や死因不明などは144頭だが、これは前年比86頭増なのである。

全体に不慮の死が増えたことになるし、老衰・死因不明が非常に多くあった点が気になるところだ。

そこで気になるのは、前々から奈良のシカは栄養失調気味であったことだ。奈良公園というエリアに1000頭以上のシカがいるのは異常なのである。同じ広さの森なら、せいぜい300頭くらいしか住めないはず。4倍以上になって、餌が足りなくなっている。鹿せんべいも、シカの食欲を賄うのには足りない。だから植物繊維なら何でも、と森の樹木も食べられて劣化させる現象も起こしている。それでも足りずにごみ箱漁ったり、落葉食いまで始めている。もっとも植物が豊富な夏なのに落葉を食べなくてはならないというのは危機的かもしれない。

いずれにしろ餌不足が続くと、奈良のシカの健康状態に問題が出る。すると病気や怪我で亡くなる可能性も高くなるのではないか。

……これらは邪推だろうか?

ただ減ったとはいえ、まだ1200頭をはるかに越す頭数がいるのだ。まだまだ多い。下手に心配して鹿せんべいを大量に供給しようとか、野菜などを撒いて餌やりをしようなどと思ってはいけない。あくまで奈良のシカは野生なのだから、このまま様子を見よう。さらに減るか。あるいは来年はちゃっかり元にもどっているか。いずれにしても自然の摂理だと見るべきだろう。

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