林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会 (@_@)
資源エネルギー庁と林野庁が、先月「林業・木質バイオマス発電の成長産業化に向けた研究会」を立ち上げて第1回会合を開いた。
テーマは、「木質バイオマス発電の発電事業としての自立化と、木質バイオマス燃料の供給元としての森林の持続可能性の確保を両立させるため、経済産業省、農林水産省、及び関係事業者団体等が、課題認識を共有するとともに、課題解決に向 けた方策を官民連携により検討」すること。
バイオマス発電を成長産業に、とは恐ろしい発想ではないか。今まで以上に建設して、数を増やし、多くのバイオマスを燃料に燃やすという意味なのだから。私は、早く撤退してほしいのだが。
バイオマス発電は、燃料を集めるのが最大のネックだ。そこで燃料費をFITで嵩上げして集めている。しかしFITは20年で切れる。それまでにコストを削減しなければならないが、燃料コストが全体の7割も占めるだけに、そう簡単に削減できない。削減するというのは、木材を安く買いたたくということだ。それでは売る人がいなくなるだろうし、何より林業振興にならない。補助金を積み上げて高く買い取れば、燃やすために木を伐ってしまうから、これまた林業は持続的にならない。
やるとしたら、産廃(建設リサイクル材)のような安価なバイオマスだけを燃料にすることだ。それは成長産業にはならない……。どう考えても堂々巡りで、成り立たない。
さて、肝心の会議は傍聴はオンラインでできるということだったが、さすがにおつきあいはしなかった(^^;)。
その内容と当日の資料が、経産省のHPで公開されている。
その中から、両庁の資料が見られる。
なかでもエネ庁の資料には、
なんとFIT制度を20年度中に抜本的に改めるとな?本当ならすごい。なんとか「未利用材」区分をなくしてくれないか。そして輸入バイオマスにFITを適用しないでくれ。それでは維持できないというのなら打ち切ることだ。
一方で両庁が、それぞれ課題と思うところを並べていた。
なんか、生ぬるい。絶対に成長産業にならないことを薄々感じつつも、無理やりこじつけて結論を出そうとしていないか。早生樹植林まで持ち出しているが、植えて、育てて、燃やす、のだろうか。さらに広葉樹を持ち出すところを見ると、雑木林や天然林も燃料扱いか。
私も委員に入れてほしかったなあ(笑)。徹底的に論破してつぶしてやるのに。
私案としては、バイオマス発電はゴミ発電と抱き合わせて、全国に5件くらいに絞る。発電は従として熱利用を主とする。燃料は、ゴミと端材と建設リサイクル材のみ(もちろんFIT価格はずっと引き下げ)。これが量的にも限界だろう。林業振興ではなくなるから、林野庁は外してゴミ問題を扱う環境省を入れる。
いかがか?
« 日本の樹木数は1200種・210億本! | トップページ | バイオマス白書2020、公表 »
「政策・行政関係」カテゴリの記事
- 食品等流通法はエガリム2法に近づけるか(2025.02.05)
- 南三陸の林業地が自然共生サイトになった(2025.02.01)
- 森林経営管理制度の改正(2025.01.26)
- 国有林の増伐計画と予算要求(2024.11.26)
- FSC30周年に寄せて考える(2024.11.14)
早世樹とはおそらく北海道で実施している燃料用のヤナギではないでしょうか。超短伐期でバイオマス用に供するための栽培研究が行われています。(むしろ違ったら問題なような…)ただ…せいぜい1産業として成立するのがやっとな気がします。成長産業って聞こえはいいですけど実態は伴わないでの半ば詐欺みたいなものですよね…
以下はヤナギ研究のリンクです
https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/saizensen/2020/20200622-01.html
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/seibi/attach/pdf/190204-3.pdf
投稿: | 2020/08/19 09:13
はい、海外では燃料用のヤナギが植林されていますね。
ところが資料には、はっきりコウヨウザンと書かれているのですよ。林野庁の資料を丸写ししたか?
投稿: 田中淳夫 | 2020/08/19 10:04
これ林野庁の仕事?
環境問題では無いんでしょうか?
奈良県では林業は産業ではなく環境問題として環境部門に所管替えとなりなしたよ。
だから、国も環境保全の観点から、森林整備が継続出来るよう、山村に林業従事者を定住させる方策を考えれば良いと思うんですけど。
産業に対して補助金をつけるのではなく、森林整備を行う従事者の山村への定住にお金を使って、その余力で材木を活用すればええのとちゃいますか?
そうすれば森林整備は進むのではないでしょうか?
でも皆伐はあきません。
間伐施行で優良な森林を育てるって事で。
先のことは未来の人達に考えてもらいましょう。
だって林業は途方もない時間がかかるんですから。
投稿: 大峯遊歩 | 2020/08/20 21:06
林野庁は、基本的に産業官庁ですから、あくまで産業として振興を企てます。その手段がバイオマス発電なわけですが、これ、多少とも長期スパンで見たら絶対に成り立たない事業なわけですよ。
そしてお題目の環境にも寄与しない。輸入バイオマスを使っている点で失格だし、日本の山もはげ山をつくってしまう。
それでも止めない・止められない状態になっているんでしょうね。そもそも長期に森林を考えられなくなっている。
投稿: 田中淳夫 | 2020/08/22 00:01