コロナ禍で大工が減れば林業従事者も減る?
コロナ禍によって、大工職人の廃業が相次いでいる、というニュースがあった。
コロナ禍で住宅建設が止まってしまい、一人親方の大工が次々と止めていくのだそうだ。もともと高齢化が進んでいたが、一人親方は雇用ではなく事業主扱いなので、行政の支援も少なく、しかも日雇い仕事が多い。長く仕事がなくなると、とても持ち堪えられず廃業せざるを得ないのだろう。
もともと、彼らの仕事は現場で木材を加工することだった。しかし近年はプレカット材による建設が増えるにつれて簡略化されたため、労働単価の低下が続いていた。かつては1日3万円以上になったというが、今や半減し、交通費や道具代も自腹だから収入は厳しい。蓄えもさほどできない。腕自慢は高齢になってもできるから貧困は目立たなかったが、仕事がなくなると、しがみついても大工を続けようとは思えなくなるのだろう。
ちなみに2020年の大工人口は、推定21万人。だが数年後にどこまで減っているかは読めない。
このニュースを読んで、そのまま林業従事者にも当てはまると感じる関係者は多いだろう。それこそ一人親方で、日当で、交通費や道具代も自前……という林業従事者にも多いのだ。コロナ禍でも、職場の3密はないにしても、建設が止まって木材が売れなくなると必然的に林業現場でも仕事は止まる。
そして「2020、21年度の2年間で20万戸の新設戸建て住宅の需要が失われる」(野村総合研究所)という予想まであると……。20万戸の多くは木造住宅だろう。それがなくなることで大工職人も急減してしまうわけが、それは木材需要そのものの縮小も意味する。住宅に使われる木材は、まだまだ国産材が多いが、そこの需要がなくなると、どうなる? 今は林業そのものが木材生産を止めているが、仕事がなくなったことで山仕事を諦める人も出てくるかもしれない。
仮にコロナ禍が終了して数年後に住宅需要がもどったとしても、すでに大工が足りずに木造住宅は建たなくなるかもしれない。木を伐採できる林業従事者も減ってしまえば、木材生産量が減る可能性がある。結果的に住宅は非木材系の建物になるだろう。もっとも、非木造系の建築職人も十分に残っているのかどうかわからないが。
コロナ禍の影響はいろいろあるが、こんなところにも落とし穴がありそうである。
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学生です。CLTが普及すれば、大工の人手不足は解消するでしょうか?CLTは規格化されたものを工場で生産し、あとは組み立てるだけで、大工さんのよう職人の手を借りる必要がほとんどないと聞いています。
投稿: 横山豊 | 2020/08/22 19:39
CLTに限らず、従来の大工仕事抜きの建築技法や建材はいっぱいあります。でも、それをこなす職人がまた必要になる。CLTにはクレーンの操作職人がいるそうですよ(笑)。
建材としてのCLTは、住宅に向かないし、設計の幅もない。価格もまだ高すぎる。日本の建築家が嫌っていますね。ついでに林業には全然寄与しない。
投稿: 田中淳夫 | 2020/08/23 09:52