森林認証とウッドデザイン賞を取ったお菓子
日本では、森林認証がなかなか広まらない。いや面積だけはそこそこ広がってきたが……まあ、ほとんどの林業家や消費者から認識されていないのではないか。なぜって、利益に結びつかないからである。認証取ったって、木材価格が上がるわけでなし、売れる量が増えるわけでなし。
森林認証とはそんなものではなく、むしろビジネスのプラットフォームに乗るための条件であり倫理的な基準なのだ……と言いたくもなるが、日本の林業家と消費者が全然とんちゃくしないのでは話にならない。
そんなときに、森林認証を取得したお菓子があると聞いた。秩父である。
正確には、SGEC/PEFCのCoC認証を取得したお菓子 「ちちぶまゆ」。マシュマロだそうである。
埼玉県秩父市の市有林がSGEC認証(国際的なPEFC認証と相互認証)の流通認証を取得しており、そこから採れた楓の樹液、つまりメープルシロップをつかっているからだそうである。今年6月に発売開始とか。
本来の森林認証とは、その森林の施業が環境に配慮しているかどうかを問われるわけだが、認証を取った森から採れる産物は、その流通経路を押さえればなんでも認証付き商品になる。
そういや森林認証付きシイタケというのがあった(宮崎県諸塚村)が、とうとうお菓子の世界に踏み込んだか……。
秩父では、天然林のカエデから樹液を採取して、それを煮詰めてメープルシロップを作っている。
秩父市および林業家は、この手の発想が豊かで、また扱いも上手い。私が秩父の樹液組合を訪れた際は、採れるカエデの樹液なんて量がしれているから、たいした実利に結びつかないのではないか、と思っていたのだが、秩父駅に降り立ってびっくりした。いきなりお土産物として秩父産メープルシロップのパンやお菓子類が並んでいたからである。ほか「カエデゼリー」とか「カエデサイダー」もあった。使用しているシロップの分量はごくわずかだろうが、とにかく使っていたら看板になる。そして結構な種類の商品が生まれていた。言い換えると「秩父産メープルシロップ」のブランディングに成功したわけだ。
そして、今度はお菓子である。秩父産メープルシロップというブランドだけでなく、そこに森林認証を被せてくるとは。
しかも、それだけに終わらず、なんとこの商品、ウッドデザイン賞を受賞したのだ。ウッドデザイン賞の基準て、なんなの?と思わないでもないが、この際、どうでもよろしい(笑)。
これこそ、日本における森林認証の上手い扱い方なのかもしれない。木材にこだわらず、森林認証はブランディングのツールとして使えるのだよ。
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