「ガダルカナル島の近現代史」とソロモンの切手
『ガダルカナル島の近現代史』(内藤陽介著 扶桑社刊)を読んだ。
ガダルカナル島(餓島)は、太平洋戦争において、旧日本軍の海軍も陸軍も墓場となったような激戦地として知られる島だが、私にとっても思い出深い。40年近く前に初めて、その後も学生を連れて探検隊として訪れたからだ。
その旅については「ナンバワン ソロモン」に記したが、こちらはソロモン諸島ではあるが、ガダルカナル島はほぼ登場しない。私の処女作とも言える「不思議の国のメラネシア」には、少し触れているかな。また「森は怪しいワンダーランド」にもソロモンの体験は多く取り上げている。
ともあれ、懐かしの島である。私も訪れるときは、それなりにソロモン諸島の歴史、そして餓島の戦闘などについては勉強したものだが、決して詳しいわけではない。そこでこの本を読んだのだが、いやあ、知らないことばかり。
イギリスのソロモン植民地がいかに苛烈な……というより現地人を人間扱いしていなかったかわかるし、戦争についても一般の戦史とは切り口が違っている。そして独立する成り行きや、その後のソロモン政府まで……。こんなにヘンで怪しい人物がソロモンの首相だったのか、と驚く。
実は私の滞在中にも選挙があったりしたのだが、わりとウェストミンスター流に、投票で議員と首相を決める点は感心していた。しかし、その陰で……。なぜ日本の会社ソロモンタイヨーが撤退したのかも、ようやくわかった。
なお表紙の帯文には「中国の札束外交に……」とあるが、これは最終局面であって、中心の話題ではない。ただ混乱の外交と内政の中で最後につけ込んだのが中国だったわけだ。そしてソロモン諸島は恩のある台湾を捨てて、中国と国交を結ぶ。一部の島を中国に売り渡すという噂もある。
著者の内藤氏は、郵便学者という肩書を使っている。郵便物、とくに切手を通して各国の事情や歴史、政治まで読み解く学問分野を自ら切り開いたそうだ。だから本書にも、多くの切手が紹介されている。
それで思い出した。私もソロモンの切手を持っていたのだ。と言っても、滞在当時に動物が描かれた切手ばかりを選んでお土産のつもりで購入したはず。あまり歴史はわからない(^^;)。
価値があるかどうかわからんが、なつかしい。
激戦地ガダルカナル島オースチン山の記念碑で遊んでいた子どもたちと、撃墜された飛行機。おそらく日本軍のものだろう。
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写真の飛行機が日本機ならば、脚が出ていて、翼が厚いので、99式艦爆かもしれません。零戦なら時期から21型か32型と思いますが、翼端が写っていないので不明。
投稿: | 2020/11/23 14:18
大昔撮影なので、細かな記憶はありませんが、零戦ではなかったような。99艦爆は、ガタルカナルまで飛んでこられたかどうか。
米軍機だったら、コルセアですかね。いやワイルドキャットF4Fかも。ガダルカナル島に撃墜された飛行機という点からも考えてもいい。
投稿: 田中淳夫 | 2020/11/23 22:01
拙著をご紹介いただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお付き合いください。
まずは取り急ぎ、お礼のご挨拶のみにて失礼いたします。
投稿: 内藤陽介 | 2020/11/23 22:57
なんと、著者じきじきのコメントが。恐縮です。
ソロモン諸島の歴史は、私にとっても興味深いです。ブーゲンビル島の独立戦争も関わっていますから。あの島々の自然には今も憧れを持っていますが、政治となるとなかなか一筋縄では行きません。
投稿: 田中淳夫 | 2020/11/24 09:38