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森と林業と田舎の本

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2020/11/11

90年前の国有天然林の調査報告

拙著『森と日本人の1500年』(平凡社新書)で、日本の国有林が恒続林を目指して択伐・天然更新施業に力を入れた時代があったことを紹介した。大正末期から昭和初期である。当時は「恒続林を語らざる者は山官に非ず」と言われたそうだ。現在とは真反対のベクトルだろう。

残念ながら、政権交代などもあって上手く進められないうちに戦時体制に入って木材大増産時代に入り恒続林どころか天然更新も消えていく。

が、意外な置き土産があったようだ。

というのも、森林総合研究所で「昭和初期の国有天然林調査報告書の発見」というニュースが出ているからだ。

森林総合研究所は、長年保管してきた古い資料の中から、昭和初期に国有林内の天然林で行なわれた森林調査の膨大な報告書の原資料(662件)を見つけたので、整理しして目録として印刷・公表したという。どうやら、天然更新などを行う前に、その前提の天然林の状況を全国的に調査したらしい。それも、かなり大規模なものだと推察できる。一部は「国有天然林調査報告書」として公刊されたが、多くは忘れられたらしい。ただ原資料は残されたのだろう。

これらの資料は、昭和初期に青森から九州、屋久島まで一斉に行われた調査結果を取りまとめた貴重な資料です。戦中・戦後の伐採で失われたであろう、多くの天然林の姿を今に伝える植生データ、精密な手描きの森林断面図や平面図、膨大な直径と樹高の調査原簿、現場写真などが含まれています
 今後、わが国の森林に対する温暖化影響や森林管理のあり方を考える上で基礎となる貴重な原資料の分かりやすい詳細な目録です。同じ場所で調査を行うことができれば、90年間の気候や土地利用の変化が天然林に与えた影響を検証できるかもしれません。

ただ戦争に突入し、さらに戦後の人工林至上主義?へと移る中で忘れられていたのか。

資料は、青森営林局75件、秋田営林局11件、東京営林局164件、大阪営林局19件、高知営林局139件、熊本営林局254件。これは、戦後の拡大造林によって消えた約90年前の天然林の姿を記録したものとして貴重だろう。それこそ日本の“潜在自然植生”が描けるかもしれない。現在と比べたら、人為による変化はもちろんだが、ほかにも気候変動による植生の変化なども浮かび上げられるかもしれない。

ところで私が感じたのは、この報告書の内容とは別に、新しい政策を採用する際は、これぐらい慎重に調査したうえで行おうとしたことだ。ほかにも小林班づくりや人材育成なども行った上で、天然更新・恒続林をめざしたようなのだ。それが政権交代で中途半端になってしまったうえに、戦争に突入したことで、雲散霧消してしまうのだが……。やはり政策も長期間持続させないと成就しない。

今の林政は……あああ、暗くなる(^^;)。

Photo_20201111162001森林総研HPより借用



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