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2020/11/20

盗伐カルテルは、成長産業!

日本の山では、相変わらず盗伐がのさばっている。これまでの盗伐告発は宮崎県が中心だったが、最近は鹿児島や熊本など周辺県でも告発が相次ぐようになってきた。さらに広がりそうだ。盗伐は全国で起きているのだから。
盗伐の犯罪性は、単に他人の山の木を勝手に伐ってしまう窃盗というだけでない。数十年育ててきた山主の気力を奪う仕業なのだ。しかも切り方は乱暴極まりなく、土壌も引き剥がすから、再び造林するのも至難の業。そして剥き出しの土は、雨で流れだすだろう。環境破壊であり山崩れなどの災害を誘発する。その点からも重大犯罪だ。にもかかわらず、取り締まりは遅々として進まず、わずかに捕まった犯人も、執行猶予のつく大甘の刑罰。だから頻発する。

Img001_20201120231901宮崎県の盗伐を報じる地元紙

そんな疑問が広がる中、こんな記事を読んだ。主に中南米で激化している盗伐のルポだ。盗伐とは世界レベルのものであることを伝えている。

木材マフィア ラテンアメリカの森を侵食する

ここにはコロンビア、ホンジェラス、メキシコ、ペルーの大規模な盗伐が報告されている。コロンビアの伐採規制を行う当局が、違法木材の供給者になっている事実や、ホンジェラスでは盗伐が産業として成り立ち、マフィアのボスが木材流通チェーンを経営していること、メキシコでは麻薬カルテル(マフィア)が盗伐事業に乗り出していること、ペルーには元警官の盗伐ネットワークがあること……などがルポされている。

もちろん盗伐は中南米だけではない。中国や東南アジア、シベリア、そしてヨーロッパでも盗伐が起きていることを伝えられている。

こうした記事に目を通していると、すでに国家の産業に盗伐が組み込まれていることを感じる。それも巨大産業なのだ。そして、腑に落ちた。なぜ日本の盗伐がなくならないのか。それは世界中で起きている事情と同じだからだろう。

まず不思議というか興味深いのは、世界中の林業関係者が「木材価格が下落して儲からない」というのに、違法伐採すると木材が儲かるということだろう。
何も盗伐業者が、木材を高値でさばけるルートを持っているわけではない。それどころか違法ゆえ価格は安値で扱われているはず。ただ莫大な量を動かすから儲かるのだろう。しかも本来は対価を支払うべき森林所有者への還元を無視して、再造林もしない。仕事は荒っぽく済ませる。また環境破壊に対する防止策も何も取らないことで経費がかからないから利益が上がる。
言い換えると、通常の方法では利益を出せないから、違法性を利益にして儲けるのだ。しかも証拠を消すため、伐採後に森に火を放つらしい。災害が起きても、当然ながら賠償することもない。

そして摘発されないのは、地域社会(ときに国家そのもの)と密に連携しているからだ。盗伐された木材であっても、それを欲しがる業者がいる。違法な木材であっても取引すれば流通業者も利益を得るし、製材業者も、加工業者も、建設業者までビジネスとして動く。輸出もするから貿易業者も儲ける。最後は施主も、違法木材を使った方が安価になるなどの利益を得る。適法では手に入らない貴重な木材を得られるのも魅力だ。その間には警察機構や行政、そうして政治家まで利益を得る構造がつくられている。
ちなみに日本の輸入する木材の約1割は違法性の懸念があるという。盗伐された木材は日本をお得意様にしているのだ。

そして日本の盗伐も、基本的な構造は一緒だ。儲からない林業も、違法にやれば儲かるから参入者が絶えない。そして、それは政治家や行政組織、そして産業構造に食い込んでいるからやたらと取り締まらないし逮捕もされない。盗伐してでも木材を出さないと、木材産業(伐採業者から製材、建築まで。さらに木材輸出やバイオマス発電まで含む)が立ち行かなくなっているのだ。
自治体も、盗伐によって木材生産量が増えたら、地域経済の活性化することを期待する。「林業を成長産業にする」という目標を掲げる国にとっても、盗伐を取り締まることは、自ら目標達成の足を引っ張ることになりかねないから目をつぶる。さらに業界・政界の圧力があるのか、警察機構も摘発に及び腰だ。ただでさえ仕事を増やしたくないのだから。

かくして日本にも盗伐マフィアと盗伐に関わる各業界のカルテルが生まれている。違法であっても、みんなが利益を得られる。損をするのは森林所有者だが、実は彼らも「林業は儲からない」と思って山を放置してきたから、被害意識が希薄になりがちだ。ただ物言わぬ環境だけが破壊されていく。いつか大災害を引き起こすかもしれないが、先のことは考えない。

もはや盗伐の成長産業化をみんなが後押ししている状態だ。今が良ければいい、という空気が蔓延している。将来、森林の破壊がもたらす厄難より、今、自分たちが利益を得ることを優先した結果だ。世界の盗伐事情を見ていると、日本の盗伐の謎部分も透けて見えてくる。

ただ、新たな動きも多少あるそうだ。宮崎県では、警察が被害届の受理をかたくなに拒み、仮に受理してもすぐに不起訴にしていたのが、急に盗伐に関して被害届を受理しだしたのだ。被害届を出していない人にまで提出するよう促しているという。検察のトップが交代したことと関係があるのかもしれない。その本気、続けていただきたい。検察までが盗伐産業に組み込まれることがないように。

 

 

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コメント

そもそも立木価格が補助金混みで㎥数千円も還元できず、それでは育林比も出ない、やればやるほど赤だ、というところが問題の根本なのですから、数百万する育林費がタダになれば、それは儲かりますよ。伐っておしまいなら、今の半額だって儲けが出ると思います。但しそれでは下流が困るということで林業作業員が募集されしかしながら儲からない構造は放置されているのです。今や人口比率でごく少数となった彼らをしも救う気のない社会の隙に付け込んで彼らは盗みをはたらくのです。

補助金もらわないと採算が合わないということと、盗伐が進むというのは、わりと紙一重の関係かもしれませんね。

完全適法で、補助金なしの林業を考えたら、木材価格は今の何倍になるか。でも、それで買い手がいなくなるとしたら、ようするに産業として成り立っていないことの証明となる。

前の投稿にコメントするが、盗伐は犯罪でありドロボウである。許してはいけない犯罪行為である。しかし、施業技術が未熟な為や儲け重視の為に起こる適正で無い間伐はどうなのであろうか。乱伐の中に入るのではないか?残存木を傷だらけにした間伐…締め固め不十分であったり、施業後の排水が不適切な森林作業道等。盗伐以外にも犯罪に近い施業が増えている事実もある。

盗伐は山主に対して法的にも財産的にも犯罪です。
合法ながら非持続的な施業は、環境に対する犯罪ということになるでしょうか。そして持続できないという点も産業に対する罪もあるでしょう。

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