1年3カ月後の『絶望の林業』書評
「グリーンパワー」12月号の書籍紹介欄に『絶望の林業』が取り上げられた。
いやあ、忘れられかけた時の紹介、有り難い(^o^)。さすがに一時の勢いはないが、コツコツ売れて、もう一度増刷されることを願っている。
ちなみにこの紹介の中で木材の価格について触れている。現在は木材の量ばかりを追って安きに流れていること、国内の消費者は「国産材は高い」と思い込んでいること、実際には「世界一安い」と言われていること……。
実は、私は今も価格の形成の原理について考えているのだ。何が商品(とくに木材)の価格を決めるのか。
たとえば労働価値説に基づけば、数十年かけて育てる木材の価値はかなり高くなるはずだ。だがほとんど価格に反映されない。それどころか長引いて太くなると、逆に安くなる有様。
では市場原理に基づいて供給と需要のバランスかと言えば、それも怪しい。補助金が狂わせているのは言うまでもないが、それ以上に木材代替マテリアルの席巻で、需要が増えても供給が絞られても価格は上がらない。上がりかけたら代替物に移るからだろう。それにタイムラグもありそうだ。需要に合わせた供給にタイムラグが数か月以上あるので、価格に連動しにくい。必要なときに適切な価格にならない。さらに気候や海外リスクなど不安定要因も数多くて、それを価格にどう取り込むかわからないまま。だから異業界の思惑で動く。林業界内で制御できない。
……という風に考えていくと、結局合理的な木材価格の形成要因がぼやけて見えないのだ。
これを分析して解決方法を編み出さないかぎり、林業は産業として成り立たないのではないか。まさに絶望のまま終わる。
そう、『絶望の林業』の確信は強まるばかりだ。
« Y!ニュース「焚き火は自然破壊になるか?…」を書いた裏事情 | トップページ | 恐るべきコウモリ »
「書評・番組評・反響」カテゴリの記事
- 森の教養~只木先生の非売本(2021.01.22)
- 「けものが街にやってくる」を読んだ(2021.01.06)
- 映画「斧は忘れても、木は覚えている」(2020.12.28)
- 『獣害列島』東京新聞書評とオンライン講演(2020.12.24)
- 「池の水」抜くのは誰のため?~相互誤解のススメ(2020.12.12)
コメント