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森と林業と田舎の本

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2020/11/14

川辺川ダム再び? 思い出す土木研での対話

熊本県を流れる川辺川(球磨川の支流)。かつてダム建設で揺れて、紆余曲折を経て11年前に白紙撤回となった。それが今年7月の熊本豪雨で氾濫した球磨川流域の治水策の中から、熊本県が再び建設容認に転じたと伝えられている。もしダムがあれば、氾濫浸水面積を6割減らせたと説明されている。

さしづめ国土交通省の11年を経ての反撃といったところか。私は、この6割減という数字にうさん臭く感じるものの、そうしたことは、今後検証されていくだろう。ただ県が建設を希望するのは、流水型ダム(穴あきダム)らしいが、はたしてそれも認められるかな。

そこで思い出したのが、かつて私が国交省の土木研究所(の自然共生センター)を取材した時のことだ。約20年前だと思う。取材の本筋は、多自然(近自然)工法の川づくり、とくに人工洪水についてだった。河川の自然の維持には定期的な氾濫が欠かせないという研究があって、世界各地で人工洪水が実施されていたが、日本でもそれを取り入れるべく研究している現場を訪ねたのである。

洪水は自然破壊的な目で見られるが、実は洪水があることで流域環境に攪乱が起きて、自然は一新され守られていく。河底の石や砂利の移動、岸辺の浸水、その他もろもろの事象が定期的に起きないと河川流域の自然は変化してしまうのだ。洪水という形で、常に川辺の環境は維持されていた。それが、ダムや護岸の建設で増水を抑えるため、肝心の自然が劣化するケースが出てきた。
そこで洪水がいかなる役割を果たしているか、という基礎研究から始まり、洪水を人間社会に被害を出ない程度に制御できないかと考えられた。そのための手法の研究と言えるだろうか。

Img002_20201114231601

土木研究所と聞いたら、ゴリゴリの河川工学とか砂防工学をやっているのかと思いきや、意外や現場は生物の専門家がたくさんいて、植物や昆虫などの生態に通じた人がたくさんいて、ちょっと驚いた記憶がある。そして、みんな川にじゃぶじゃぶ入たり、魚をすくったりと、アウトドアぽい光景が見られた。人工河川にダムからの放水を行い流量増加(洪水)の実験をやっているのだが、なんたって広い。そういや、あの現場を回るのに、出始めた電動アシスト自転車を借りて、初めて乗った思い出も(^o^)。

Img001_20201113213501自然共生センターの人工河川

それにしてもデカくて、金をかけている。森林系の研究所なんか束になっても敵わない(笑)。

その後、センターの所長とあって取材した。というか、雑談になり、やがて河川改修のあり方、ダムのあり方の議論になった。

今や断片的にしか覚えていないのだが、「曲がっている川を見ると真っ直ぐ伸ばしたくなるのよ」なんて言葉が出たのを覚えている(笑)。実は、曲がった自然河川を真っ直ぐにする河川改修から、また人工的に曲げる研究もされている。こちらの取材も後に行った。
一応、私も大学時代に河川工学をかじっているので、流量変化と流量速度、水面上昇の問題などを突っこんで話した。

そしてダムの必要性を治水の他、利水、発電、環境などにも話が及んだ。たしかその頃、干ばつが続いて、四国やら中京圏などで渇水が問題になっていたこともあって、ダムがなければどうするのよ、と言われる。しかし、私は、農業用水は余っているのに上水道水が足りないのはおかしい、水利権の調整で十分水は確保できるはず、と逆襲した。

さらに治水用ダムなら、普段は水を溜めないでもいいはずだ、その方が空っぽのダムにゼロから水を溜めるので治水効果が大きいと持論を展開。ダムサイトだけつくっておいて、普段は開放しておくのだ。それなら建設費も安くなる。しかもダムサイトの土地だけの自然破壊で済む、上流域を水没させないから、大部分の自然は保たれるのではないか、また小規模な人工洪水を定期的に起こして自然環境も守れる……と提案した。
すると「もったいないじゃないですか。せっかくダムをつくったら水も利用しないと」と所長は応えた。

……ところが今は、流水型ダム、穴あきダムという名で、私の提案した理屈のダム建設が各地で行われている。私の炯眼を褒めてほしい(笑)。

ちなみに、そうした話は、極めて和やかに行った。激論なんてことはなく、それでもお互いの意見を丁々発止とやり合ったのは面白かった。完全に取材から外れていたが、向こうもそれなりに面白がってくれたと思う。国交省も自然環境の保全と防災の両天秤している姿勢はわかったし、もっと意見をすり合わせていけば、妥協点が見つかるのではないか、と思わせたのが私の感想だ。

さて、今回の川辺川ダムの再計画はどう進むか。せっかく研究した知見を活かしてもらいたいものだが、またぞろ、建設利権で動いている輩が大手を振って「国土強靱化」の掛け声を元に、ガチガチのコンクリートで自然を固める工法を求めるかもしれない。
流水型ダムが実現するのかどうかも怪しいが、今はもっと新しい防災方法が議論されているはずだ。気候変動は20年前より格段に進んでいる。一方で流域人口は減少局面だ。

次の一手を打たねばならない。先日の里海と同じく、自然と人の生活という天秤をいかに維持するのか。

 

 



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