CLTビルに反対した理由を探る
某地の木造ビル、CLTによる建築物の見学に行った。
そこはざっと6年ほど前、まだ建築基準法がCLTに対応するよう改正されていない時期に建築計画を出して建てられている。だから建築は、ある種の実験的な意味合いの許可を取っていた。なかなか大変だったらしいが、そのため国を動かし自治体を動かし、各界の協力を得てなんとか建築することができたという。
ただ、その際にもっとも反対したのは誰か。
単に建築費が高くつくとか、施工業者が初めての工法を嫌がったとかいうのではなく、「何でCLTなんかで建てるんだ……」と言ったのは誰か、という意味である。意外な答えが出ましたね。
それは……林野庁だったというのですよ。えっ、と思うだろう。だって、CLTをもっとも推進していたお役所のはずだから。まあ、正確には銘建工業の猛烈なプッシュがあったからなんだけど、政府も全面的に応援していたはずだ。農林水産大臣はもちろん、内閣府も。もちろん林野庁はその矛先のはず。だから短時間で建築基準法の改正ができたのだ。
どうも幹部らのCLT推進とは別に、現場レベル、おそらく課長クラス以下?が、CLTビルの建設に文句を受けたのではないか。「面と向って言われるとは思わなかった」という。
さて、問題。なぜ林野庁はこのCLTビルの建設に反対したのでしょう。その理由を推理しなさい(^^;)。
① CLTなんか林業振興に役立たないよ、と本音では思っていた。
② 上からやいのやいのと言われて仕事が増えたんだよ。実際に建築となったらさらに仕事が増えるじゃないか。
③ 建築基準法の改正に一生懸命になっているのに、例外的な方法でCLTビルを建てるなんてケシカラン。
④ 林野庁に相談せずにCLTビルの建築計画をつくるとは、民間がでしゃばるな。
⑤ 自分たちが第1号ビルを考えていたのに、先に建てられたら面目が潰れる。
……これぐらいかなあ、思いつくのは。
ま、どれもありそう。もしかしたら全部理由になるのかもしれない。
今は、とくに役所が関わらなくても建てられるようになった。構造計算が楽になったらしい。それでもゼネコンなどは新しい工法は手間が増えるから嫌がるという。それに価格も割高かなあ。
さて、CLT建築は今もさほど増えていない。どこが間違っていたのだろうか。
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①です。ひょっとしたら15%と言われる歩留まりの悪さです。製造過程で減量の殆どが鋸屑に消える原料(原木)の買い取り価格が高価であるわけない!こりゃ〜林業振興の役にたたんわ…と、言う事が霞ヶ関の実務を担う忖度の無い優秀な諸君には分かっていたのですね。流石です。
木材産業関係者であれば、推測できるのですがね(笑)
投稿: 山のオヤジ | 2020/12/05 21:53
官僚性善説ですねv(^0^)。
信じましょう。きっと本音ではCLTの問題点をわかっていたんですよ……ムナシイ
投稿: 田中淳夫 | 2020/12/05 23:14
一縷の希望という意味では①ですかね...今や責任を問われている拡大造林についても、当時の林野庁はあくまで計画的な施業を想定していたのに、伐れや植えろやの世論に押されての結果なので。CLTについても現場レベルの林野行政官には実情が見えているけどどうにもならない...という希望と同情混じりでそう思い込みことにします
投稿: 0 | 2020/12/07 08:35
林業には役に立たない、と思いつつ推進するというのも情けないのですが、自分たちが計画的に勧めているんだから民間は後ろに下がれ、というのだったら、もっと情けないですねえ。。。。
投稿: 田中淳夫 | 2020/12/07 09:55