侮るなかれ、ネコの捕食力
この写真、よくわからないかもしれないが、近くの山の中にあった鳥の羽根。その散らばり具合から襲われたのだろう。実は一カ所ではなく、ほかにも何カ所かあった。つまり、この山(というより丘)では鳥がよく襲われているらしい。そして、その“犯行”を誰がやったかと言えば……鳥を襲えるような敏捷な動物は、おそらくネコであろう。タヌキ、イタチなども候補に挙げられるが、ちょっと弱い。事実、この近辺にノラネコは多いのである。
山の中で、ネコに出会うことがある。捨てネコからノラネコになりつつある。そのうちノネコとなって野生化する可能性もあるだろう。
これは、また別のところで見かけたネコ。
拙著『獣害列島』でも、イヌ、ネコ、とくにネコの野生化について論じたが、そのために調べているうち「ノネコ問題」に話を絞っても面白いかなあ、と思うほどだった。実に奥が深い。
ネコ科は最強の肉食動物と言われていて、なかでもネコは小型ながら自然界におよぼす影響は大きい。環境に害を与える「世界の侵略的外来種」にネコは認定されているのだ。それなのに人間からは「可愛い」ということで保護されてしまう。駆除に対しても風当たりが強いのだが、少なくてもノラネコ・ノネコ(野生化ネコ)問題はもっと真剣に考える必要はある。
というようなことを考えていたら、森林総研や東大、そして山科鳥類研などによるこんな研究が出ていた。
準絶滅危惧種オオミズナギドリの大規模繁殖地が危機に ―伊豆諸島御蔵島のノネコによる捕食の実態が明らかに―
伊豆諸島の御蔵島でこんなことが起きていたのか。小笠原諸島や奄美群島のノネコ問題は、これまでも多少紹介されていたが、御蔵島はもっと小さな島だから影響は大きいだろう。175万~350万羽もいたとされるオオミズナギドリが、10万羽程度まで減ったというのは大変なことだ。
ノネコ1匹が、平均313羽(年間)捕食しているという推定はすごい。ノネコの推定生息数は書かれていないが、最低でも数百匹はいるんだろうな。
ノネコの狩猟本能は強く、また餌として食べる量からして自然界に与える力は強い。小笠原諸島でアカガシラカラスバト、奄美ではアマミノクロウサギやアマミトゲネズミ、ケナガネズミ……など絶滅危惧種を襲って食べ、生息を圧迫している。世界的にもネコのために絶滅に追い込まれる動物は少なくないのだ。
とはいえ、ノネコ駆除を言い出すと、また反対する連中がわんさかいるんだろう。小笠原諸島からは1000頭以上が捕獲されたが、それらは殺処分せずに東京都獣医師会が引き取って里親探しをしている。東京の人口が多いからできることだが、それでも十分な引き取り手がみつかるわけではないらしい。場合によっては獣医師の手元で飼い殺しになる。これほと捕獲しても小笠原諸島のノネコはいなくならない。捕まらないネコが今も増殖しているのだ。それなのに、御蔵島のノネコまで引き取れないだろう。
本州のような大きな島となると、ネコが鳥獣に与える影響を調べるのは難しいだろうが、決して軽微とは言えない。しっかり研究をする必要があるだろう。
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