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2021/01/20

木造人工衛星がめざすもの

京都大と住友林業が、2023年に木造の人工衛星を打ち上げる計画を発表した。もちろん世界初。

すでに新聞などで記事になっているが、ほとんどがその目的を「人工衛星は、運用終了後に大気圏に突入させて燃焼させるが、これまでは燃焼時に大気の汚染源となりうる微小物質(アルミナ粒子)が発生させていた。木造人工衛星なら完全に燃え尽きてクリーンで環境に優しい人工衛星になる」という点を指摘している。

それもあるだろう。だが、よく考えたら馬鹿げている。なぜなら人工衛星全部が木製のわけはなく、中に様々な金属部品を含み観測や通信などを行い電子制御を行わねば人工衛星たる機能は果たせない。だから、完全にクリーンに燃え尽きるはずはない。なんで、ここに注目するのだろう。ちょっと紹介している記事を総ざらえしてみると、BBCがそのように報道していた。イギリスでは、そこがウケたのかもしれないが、それを日本のメディアが丸飲みしたのてはないか。

そこで計画の元ネタを探して住友林業のニュースリリースを読んでみると、「木材は電磁波・地磁気を透過するので、アンテナや姿勢制御装置を衛星内部に設置でき)」点や「衛星構造を簡素化して、軽量化できるので、打ち上げコストなどを低減できる可能性がある」ことにも触れている。なるほど、木製にはいくつもの利点があったのだ。(もちろん欠点もあるはずだ。)なんで、そうした点を取り上げないのか。

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なお、今回の計画で打ち上げるのは、一辺が約10センチの立方体。あくまで実験用だ。真空状態で最も変形に強かったホオノキを用いて、国際宇宙ステーションと同じ高度約400キロで半年~1年間、定期的に木の強度や変形度合いのデータを地球に送信させる計画らしい。いきなり実用的な人工衛星を木製化するわけではない。

さらに計画をよく調べると、京大と住友林業の協業テーマは多くあり、木造人工衛星というのはその中の一つにすぎないよう。ほかにもこんな項目が並ぶ。

共同研究テーマ
・宇宙環境における木材の物性に関する研究
・宇宙環境における樹木の育成に関する研究
・宇宙ステーション等の極限環境におけるストレス低減に及ぼす 木の効果研究
・宇宙環境における木造建築物構築に関する研究
・宇宙の大気、土壌等に関する研究

そのうえで、木造建築向け超高耐候性木質建材の開発して、(地球における)木造建築・木材利用推進につなげようというわけだ。それなら将来的なビジネスにも結びつくから研究する価値は高まるだろう。

 

私自身は、「宇宙環境における樹木の育成」というテーマがもっとも興味ある。木材より生きた樹木ですよ(^o^)。

それで思い出したのは、40~50年くらい前のSF映画に「サイレント・ランニング」というのがあって、そこでは地球上に植物は絶えてしまい、宇宙空間で植物を保存しているという設定だった。ドーム型衛星をいくつか打ち上げて、その中に森林をつくって植物を栽培している。しかし管理者たちもほとんど植物には興味なく投げやり。その中に、たった一人植物の大切さを感じている担当者がいた。
ところが予算削減から「植物保存計画」は打ち切りになり、宇宙空間に森をつくっていたドーム衛星を爆破することになった。だが植物を愛する担当者は抵抗して、とうとう仲間を殺すことになってしまい、一つのドーム衛星を切り離し宇宙に放す……そんなストーリーだった。

かなり低予算で、しかも未来の宇宙船の描き方は陳腐だったが、結構感動できた(笑)。あれが「2001年宇宙の旅」や「スターウォーズ」などの宇宙SF映画の系譜につながっていくのだとも思える。

今回の研究も、そんな宇宙に森をつくる壮大な計画を目標にしてくれたらなあ。

 

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