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森と林業と田舎の本

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2021/01/26

「木材・石炭・シェールガス」を読む

『木材・石炭・シェールガス』(石井彰著 PHP新書)を読んだ。副題は「文明史が語るエネルギーの未来」だ。

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著者は日経の新聞記者を経て石油公団で資源開発に携わり、さまざまな研究機関で調査分析をしてきたエネルギーアナリストだ。そして、この本の出版は2014年5月。この基礎情報を知っておいてほしい。

この本が説いているのは、一言で言えば再生可能エネルギーのまやかしだろう。木材から石炭、石油、原子力と流れてきた歴史を追いつつ、世界の潮流となった再生可能エネルギー(水力、太陽光、風力……)。これは地球温暖化防止の方策を模索した果てに選んだ道だ。

しかし、著者に言わせれば、まったく「貧相なロバ」であり、どれも使い物にならないのだそうだ。どれも実は支えているのが石油や石炭、天然ガス、そして原子力でつくられた安くて大量の電力であって、再生可能と言っているだけで、まったく機能していないという。それは欧米も同じで、進んでいるかに見える再生可能エネルギーの利用もデタラメ?というか、誤魔化しだらけらしい。電気自動車を増やせば増やすほど、CO2の排出が増えてしまう……。その中で新たな天然ガスと石油であるシェールガス(とシェールオイル)の実態も解説している。全体としては(シェールオイルではなく)シェールガスに期待する一方で、原子力に未練を示す(笑)。さらに地球温暖化の原因が人為的なCO2だということにも疑問をはさむ。(温暖化は認めている。)
一方で東日本大震災を経ているだけに、「日本で原子力はもう増やせない」ということも認めている。

私自身の感想としては、その通りだろうな、とは思った。個別項目には異議もあるが、全体としては同意せざるを得ない。残念ながら広く薄く存在しているエネルギーである風力や太陽光を集めるのは極めて難儀である。水力は、大型ダムによる発電なら効果的だが、もう適地がないと言える。それに環境破壊がひどい。さらに蓄電用電池などに必要なリチウムも稀少金属だけに広く薄く存在するので、採掘には莫大なエネルギーを消費してしまう。
再生可能というわりには、薄っぺらいエネルギーなのである。地球規模で考えれば、全然CO2の抑制にはならないし、電力料金も何倍にも膨れ上がってしまう。

ここで著者のエネルギー論や私の意見を事細かに紹介するつもりはない。

ただ、気になる項目がある。それはバイオマス発電を評価している点だ。そこで示される日本の森林・林業の状況などは、私に言わせれば素人的な理解の陥穽に落ちている(笑)ので話にならんのだが、「間伐材や切り落とした枝をペレットにして燃料とする」発電は日本に向いているとする。

本書を執筆したのは2013年~14年前半だろうが、このころバイオマス発電所はほとんどなかった。それゆえ理念的なバイオマス発電を描いているようだ。現在稼働しているバイオマス発電所が、「間伐材や枝」どころか燃やすために山を丸ごと裸にしていること、わざわざ海外からペレットやPKSを輸入していること、そして建築廃材のような産廃を未利用材と偽り高いFIT価格を適用させる詐欺まがいが横行していること……などを著者が知ったらどんな反応をするだろうか。

思えば私も、2000年ごろには木材エネルギーを推奨する記事を書いていた。理念的には優れていると思えたのだ。だが現実は、理念より目先の利益を求めて環境破壊を推進する方向へと進んだ。それは太陽光も同じだ。

では、どうすればよいのか。……答えはない。あるのはベストミックスを求めて右往左往するだけだ。(私は、既存ダムによる水力発電の拡大には期待できそうに思うのだが、これも理念だけかもしれない。)

とりあえず再生可能エネルギーの構造的欠陥を知るには勉強になる。

 

 

 

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