VUCA(ブーカ)の世界
最近、ビジネス用語で「VUCAの世界」という言葉があるそうだ。もっとも、その語源は軍事用語だという。
VUCAは、
Volatility―変動性、
Uncertainty―不確実性、
Complexity―複雑性、
Ambiguity―曖昧性
の頭文字をとったもの。ブーカと読むそうだ。
この言葉はどれも正確なことは何一つわからず、すぐ変動するし、曖昧で複雑……なんだか手を出しようがないような世界である。ようするに予測不能ということだ。
なぜこれが軍事用語だったかというと、1990年代にこれまでの国対国の戦争はなくなりつつある代わりに、ゲリラ闘争やテロ行為が頻発する国際紛争が増えると想定したことからなのだという。
敵が国なり目に見える組織でないとなると、いつ、どこで、何を仕掛けてくるかさっぱりわからない。そして次々と標的を変えるし、指揮系統も読み取れない。そもそも戦略さえあるのかどうなのか……という状態になる。それに対して行う戦闘というか防御方法とは何か。という軍隊の戦術や組織システムを考える中で「VUCAの世界」という概念が生まれたらしい。
そして、その概念が今ではビジネス界にも持ち込まれたのだ。
改めて、現在の世界を覆うコロナ禍は、このVUCAの世界だ。だから政界も経済界もトップの立案に頼る戦略では対応しきれていない。
VUCAという不確実性の強い世界では、組織のすべてのメンバーが現場で柔軟かつ素早い決断をし、行動しなくてはならない。判断をトップに仰いでいたら間に合わない。常に情報をアップデートして、主観ではなく客観的で信用できる情報を集めて、何をどうするのが最善なのかを決断して選択をすべきだ。ある意味、現場力と言えよう。
何もトップリーダーの判断がいらないというわけではないだろう。むしろリーダーはビジョンを示し、そのビジョンが現場指揮官に共有されてこそ、現場の判断が生きてくる。
判断(理念、構想)と行動(作業、対応)というのは抱き合わせないといけないんだな、と思う。自分で判断して、自分で行動するからやる気も出るし、判断も磨かれて内容もよくなっていく。そして利益も伴う。
ところが近年は管理と作業を分離することが増えた。その方が効率をアップさせ作業が進む、儲かると考えたのだろう。しかし現場から分離されたリーダーが考えるとトンチンカンで現場に合わない判断になる。判断させてもらえない現場では、言われただけの作業をして、それが無意味な作業であろうと止まらない。しかし意欲を削がれる。そして疲弊していく。しかしリーダーはこれでいいんだ、金はやるから文句言うなという態度で、現場も金をもらうために黙ってするしかない。
そんな組織は硬直化する。資本主義の末路である。
なんの話をしてるって? もちろん、林政と林業現場の話である。
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