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2021/01/05

樹木葬墓地が広がってきた

正月、娘に促されて母の墓参りをした。

私は墓参りが苦手である。あの、石の墓標に何の愛着も感じないからだ。娘は意外と律儀?で、「行かなくちゃダメでしょ」とせっつくのである。そこで訪れて、墓石を磨いて、花を供えて、線香を立てて、手を合わせてきた。

ところで、私はどこの墓に入るのだろうか。この墓に入るのか……と考えた際に、頭に浮かぶのは樹木葬である。

私が『樹木葬という選択~緑の埋葬で森になる』(築地書館)を出版したのは、2016年だから5年前になる。ちゃんと重版がかかったから、そこそこ売れた本なのだが、発売直後はそれなりに声がかかって講演やら原稿執筆を行ったが、やがて音沙汰がなくなった。拙著のラインアップからすると特異すぎるのだろう。一見、森林とも林業ともつながらないからか。私的には樹木葬で森を守り育て、限界地域を活性化する壮大な可能性を描いたつもりなのだが。

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しかし、昨年あたりから再び声がかかり始めた。樹木葬墓地をつくりたいという人から連絡があるのだ。

実際、各地に「樹木葬」を名乗る墓地は増えてきた。ただし、私の基準からするとまがい物が多すぎる。なかには「木のない樹木葬」さえある。芝生に埋葬するのだ。スペインから輸入した巨大なオリーブの木を真ん中に植えて、その周りに石の墓板 (゚o゚;) を並べる「樹木葬」もあった。墓石の代わりに樹木を、という基本さえ無視されている。「自然に帰る」という理念もない。樹木葬の定義自体が蹂躙されたと言ってよい。墓石があるのに、なぜ樹木葬なのか……。単に墓石の周囲に花木があるだけだ。植木の世話は墓石以上に大変だし、遺族は継承が大変になるだろう。

 

そんな中、大阪府の公設霊園(大阪北摂霊園)に樹木葬エリアを設けて、今春開園するというニュースがあった。この霊園は総面積98ヘクタールもあり、山の中に広がる巨大霊園である。私も訪れたことがあった。縁者が眠っているからだ。
この広大な敷地の一部の森に生えている木を墓標にするドイツ式(正確にはスイス式)だそうだ。樹木葬エリアは「木もれびと星の里」と名付けるという。広さは6500平方メートル。232本の木立から自分で木を選び、その根元に埋葬できるようにするそうだ。ほか集合墓も設ける計画だ。計約2000人分の区画ができるという。契約金額は1件15万~120万円に設定するらしい。

まだ完成していないし、詳細はわからないが、私の定義する樹木葬になんとか含められそうだ。(定義については省略するが、世界的には「緑の埋葬」と呼ばれる潮流に関わっていること。拙著をお読みください。)

なぜ、各地に樹木葬墓地(エリア)が設けられるようになったかというと、近年、通常墓の契約数が減少しているからだそうだ。死者は増えているのに墓地が売れなくなってきたのである。一方で、2019年の墓の購入のうち4割が樹木葬だったという統計もある。これは母数がネットで墓の資料請求をした人の中で、という条件がつくし、何より樹木葬を名乗っているだけで、中身はいい加減なものが多いから数字そのものは信用ならないが、少なくても樹木葬(という言葉)は人気があって、希望者が急増しているのは間違いない。

しかし、本当に満足できる墓になるだろうか……私も、自分が入りたくなる樹木葬墓地を作りたいなあ。と、正月から終活を考えてしまったのであった。

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森林活用(茶・蜂蜜・山菜…樹木葬)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
「樹木葬という選択」を読んでとても惹かれています。
紹介されていたところを見学したいのですが、要介護の犬が居て今は何処にも行けません。
その後の樹木葬のニュースを知りたいです。
講演会は今は無理ですね。

一昨年に、毎日新聞で知りました。私は奈良市ですから近くの森林ジャーナリストさんということで興味をもちました。
「絶望の…」は近著ということでまず読んでみましたがホントに絶望というだけあって読んでて苦しかったです。「ワンダーランド」は楽しく読みました。
「千年の知恵」は老犬の介護で苦労してるのでヒントがないかなと。奈良の歴史がとてもよく分かりました。


なんだか拙著のラインナップを読んでいただいているようで感謝しますv(^0^)。
樹木葬、とくにちゃんと森になる樹木葬は、全国的には増えています。やはり関東ですね。拙著を書いたときは、10ヶ所を見つけるのに苦労したけど、今なら2倍はある。ただ関西では少ないのが残念。奈良にもつくってほしいですねえ。山を持つお寺は結構あるのだけど、住職と地元の人が乗り気にならないと……。意外と嫌う坊さんは多い。墓は石という固定観念があるようです。
『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』が老犬の介護につながるかどうかはわかりませんが、奈良市民がシカとどれだけ苦労して共生してきたかと知っていただければ幸いです。

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