4パーミルイニシアティブと「地中の森」づくり
「木材活用地盤対策研究会」というのがあるらしい。
木材活用は山ほど言われ続けているが、地盤対策ということは、杭を打ち込んで軟弱地盤を強化する工法のことだろう。昔からある、というか、極めて古い技術のように思うが、これを現代にもっと普及させようという意図らしい。それはよいが、その目的を地球温暖化防止と結びつけるというアクロバットな(笑)発想だ。
地面に打ち込んだ杭、つまり木材は、すぐに腐って崩れ二酸化炭素を放出するように思えるが、条件次第では腐らず長く保てる。今でも江戸時代に打った杭が発掘されることもあるのだから。その状態をカーボンストックとしている。まあ木造建築を「街の森」と呼んで、木材(カーボン)をストックするという発想も広がっているが、さらに地下まで広げようというわけだ。地下の森、地中の森か。
研究会の目的には、木材活用地盤対策研究会は、地球温暖化緩和・森林育成と木材を活用した地盤対策技術の普及、向上、並びにその発展を図ることを目的として設立されました。とある。
ようするに、木材需要を増やすためにはなんでもありというか、木を地中に埋めてしまえ、ということか。会の役員には、ゼネコンやハウスメーカーが並んでいる。住友林業は、この場合ハウスメーカーの立場なんだろうな。会員には森林組合なども混ざっているが。
これ、土木や建築分野から「木の杭を打つ地盤強化法」として研究するなら結構なんだが、地球温暖化(近年は気候変動と呼ぶべきだろう)を持ち出すところにダサさがある。杭にする木も十数年か何十年か育てたのだから、高く買い取ってやってくれ。それが一番の森づくりにつながる。まさか「地球温暖化防止のために使うんだから安くしてね」とか値切るなよな。
実は同じようなニュースを別途読んだ。
「地中に炭素を閉じ込める研修会」という山梨県のニュースだ。こちらは果樹の剪定木を炭にして地中に埋めるというもの。これは、土の中に含まれる炭素の量を増やすことで大気中へ排出される二酸化炭素と相殺し温暖化を抑制しようと、「4パーミルイニシアチブ」という国際的な取り組みなんだそうだ。これに山梨県は参加している。そこで2月4日に研修会を開いたという。
4パーミルとは、4/1000(0,4%)のことで、全世界の土壌中に存在する炭素の量を毎年 4/1000 ずつ増やすことができたら、大気中の二酸化炭素の増加量をゼロに抑えることができる、という発想を表している。具体的には、人間の排出する炭素量は毎年43億トンなので、同じ量の炭素を地中に増やしていくということだ。これ、誰が言い出したんだ?(フランス政府らしい)
桃の枝およそ25キロをステンレス製のすり鉢状の形をした特殊な装置の中で燃やし、およそ20分ほどで炭になりました。
研修会に参加した農家で、JAフルーツ山梨大藤支所生産部の小野忠道部長は「二酸化炭素を減らす国の目標もあり、いま環境問題に取り組まないと将来に禍根を残すことになる。できるだけ早く取り組んでいきたい」と話していました。
これもなあ。わざわざ炭に焼いて地球温暖化防止、ですか。その熱を利用して化石燃料の使用を減らしたのならよいのだけど(^o^)。でも、土壌に木炭を巻くのは微生物の生育促進や水はけをよくするなどよい効果もある。というか、そちらがメインだろう。後付けで、それはカーボンストックにもなるよ、という程度なら笑って聞いていられるのだけど、最初に二酸化炭素排出削減のためという大風呂敷を広げられると、なんか脱力する。
なんだか戦争末期の精神主義(^^;)みたい。竹槍で突撃かよ。
いっそ、森林や草原を焼いて、その灰を地中に漉き込むぐらいのことをするか。黒ぼく土を人為的につくるつもりで。いや、そもそも腐葉土を溜めていけばいいのだ。日本では落ち葉や剪定木を焼却処分しがちだが、禁止法をつくって全部積み上げて腐葉土をどんどん厚くしていく。森林土壌に腐葉土を10センチ積み上げたら、十分カーボンストックになるだろう。杭打ったり、炭焼かなくてもいいよ。
オーストラリアのような土壌が貧相なところでは、有機物を焼却すること自体が悪とされているから、日本でもアリだ。もっとも温暖化が進むと、その腐葉土の分解速度もどんどん早くなるけどね。
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