渋沢栄一と「木を使うもの」の義務
遅れて始まったNHK大河ドラマ『青天を衝け』も、明日で3回目。正直、私はイマイチだと思っているが……(笑)。
なんか、初っぱなから引きつけるような魅力が描かれていないんだな。話が農民の渋沢と、将軍になろうとしている徳川慶喜の2本立てになっていて、焦点がぼやけているような気がする。
まあ、今後両者が発展し合一してからに期待したいところだ。それに、もう一つ。渋沢栄一は、日本の「資本主義の父」である点にも。封建主義を抜け出したばかりの日本にとって、万民が平等に力を競い合える資本主義は希望だったはずだ。それがねじ曲がっていく過程も見えるのだが……そこに彼の著書「論語と算盤」が登場するわけである。だから渋沢は、日本の「福祉事業の父」でもある。
近年は資本主義がブームみたいとところがある。『人新世の「資本論」』もベストセラー入りしつつあるが、そもそもマルクスの「資本論」は、何も共産主義の教科書ではなく、資本主義批判が基本だった。この本も、行き詰まった資本主義をいかに乗り越えるかという点から共同体コモンの復活を唱えているように思うが、それこそ「論語」の部分だろう。現在の資本主義が過去の封建主義に近くなってきている中、希望のイデオロギーは何か。
資本主義の父と資本主義批判の書がどう並び立つか。
とまあ、のっけから脱線しているが、渋沢栄一は、もう一つ、日本の「製紙の父」でもある。今に続く王子製紙を設立しているのだ。そこでは「木を使うものは木を植える義務がある」という思想を著している。実際、現在の王子ホールディングスは19万ヘクタールもの社有林を持つ、日本一の山主(第2が日本製紙の9万ヘクタール)なのも、その系譜を引き継いでいるからだろう。
果たして、現代の「木を使うもの」は、「木を植える義務」を果たしているだろうか。
東京・飛鳥山の紙の博物館。その隣には渋沢史料館もある。
渋沢栄一の本人の筆と思われるのだが……。
実は、渋沢と土倉庄三郎は昵懇の仲だったようで、度々両者は会っている。そこで多少とも渋沢の史料の中に土倉庄三郎が登場しないかと調べたことがあるのだが……残念ながら見つからなかった。膨大な量に負けてしまった面もあるが。
まあ、そんな目で「青天を衝け」を見たら、(多少は)面白くなるかな?
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