自然公園法改正案で動物に「餌やり禁止」項目
環境省は、自然公園法改正案を提出している。3月上旬の閣議決定を目指すそうだ。
そこでニュースになっているのは、
国立公園や国定公園の一部地域で、クマなど野生動物に餌を与えることを禁じた上、30万円以下の罰金を科す規定を新設する。
という条項だ。
昨年は市街地までクマが出没して人を襲ったり大騒動になったが、ほかにも頻繁に野生動物が人里に出没するようになった。その背景に餌付けされた野生動物が人に慣れて出没した可能性があるからだろうか。
具体的な改正案は、自然公園の「特別地域」(もっとも厳正に自然を守ることを規定された地域)で、哺乳類や鳥類に餌を与えてはならないと規定するものだ。公園を管理する国や都道府県の職員は、餌を与えている人にやめるよう指示でき、従わなかった場合は罰金を科す。一部メディアには罰金30万円と見出しを付けているが、確定ではないだろう。
野生動物への餌やり禁止は結構なことだ。クマばかりクローズアップされているが、ほかの動物もみんな含むのだろう。シカやイノシシ、そしてハクチョウ、カモなどへの餌やりが目立つ。
実は奈良公園のシカ(ナラシカ)への勝手な餌やりも問題になっていて、奈良県の条例で禁止項目を作ろうとしているのだが、先にこちらの法律ができたらしめたものだ。奈良公園は国立・国定公園でもなければ特別地域でもない(そもそも自然公園ではなく、都市公園)が、便乗することができる(笑)。
私が目撃したナラシカへの餌やり。わざわざパン屑を持ってきて配る人がいる。ときに軽トラで野菜クズを運ぶ人まで。。。
もっとも、本気で禁止すべきなのはノネコだろうなあ。生態系への影響が半端ない。奄美や沖縄、伊豆諸島、小笠原諸島などでは顕在化しているが、多分本土も少なからぬ被害が出ているはずだ。誰も調査していないけど。すばりノネコに餌をやったら罰金! という法律をつくってほしい。それも特別地域と狭く規定するのではなく、日本全国でノネコ・ノラネコへの餌やり禁止! 私の夢だ(笑)。ただし、そのネコが野生動物かどうかを確認するのが大変なうえ、世論を敵に回すから実現までの壁は高い。
ちなみに、改正案にはさまざまな項目が並ぶ。パプリックコメントの時期は終わったが、そのベースとなる素案(中央環境審議会の自然公園等小委員会の答申)は以下の通り。
自然公園法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(答申案)
この中の餌やり禁止の項目は、実はほんのわずかだった。
(利用のルール・マナー)
利用形態の多様化等に伴い、動物への餌付けによる人馴れ、ドローンの飛行による騒音、登山道の自転車利用による事故や荒廃のおそれ、ペット同伴登山による他の利用者や利用施設への迷惑行為、野外へのし尿の垂れ流しによる悪臭、トレイルランニング大会による歩道の適正な維持管理の妨げや静穏の阻害等の利用環境への悪影響を与えうる事例が一部見られる。地域で独自の利用のルール・マナーを定めている場合があるが、法律による強制力のない自主的なルールでは指導に限界があるとの指摘もある。
ここにあるように、ルールの中のドローンの飛行やトレイルランやマウンテンバイク、イヌなどペット連れ登山などの規制とセットに触れられているだけ。それが、大きくニュースになったのは、取材した記者が目をつけたのではなく、多分、官僚から説明(ここがポイントですぜ、読者ウケするでしょ? )を受けたのだろう。
でも、ドローンぐらいいいような気がするけどなあ(笑)。騒音もだけど、落ちたら困るか。
なお、動植物の観察などをする自然体験プログラムを促進するための登山道など環境整備の財政支援や、手続きの簡素化という項目もある。ワーケーションや環境教育を意識したのだろう。地味だが、こちらの方にも、もう少し注目すべきではないかと思う。果たして、素案どおり通るだろうか。それとも変更を余儀なくされるか。罰金を外されたら効果がなくなる。
3月国会を少しは注目しよう。
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