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森と林業と田舎の本

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2021年3月

2021/03/31

住宅寿命が伸びれば木材需要は……?

日本の住宅の寿命は、約30年。とはよく言われたものだ。ところが、日経ビジネスオンラインに『「日本人は新築好き」は幻想にすぎない』という記事が出た。

詳しくは本文を読んでいた炊きたいが、そのリードには
日本人は欧米人とは違い、新築住宅が大好きだとよく言われる。「古い建物を大事にせず、スクラップ&ビルドを繰り返している、もうそんなことはそろそろやめてはどうか」という意見はよく聞かれる。また、「日本の住宅寿命は30年程度で諸外国よりも著しく短い」という指摘もある。しかし、データからは、そのような“新築信仰”は近年、薄れてきたことが読み取れる。なぜ新築信仰が薄れてきたのか、そもそも新築信仰とは何だったのかを考えてみたい。
とある。

記事では、さまざまな統計手法によって年代別計算の住宅寿命(サイクル年数)を示しているが、それこそ26年から72年まで幅が広い。
たしかに、私も住宅寿命を29年だとかいう統計を見て、それを引用した記事を書いた記憶がある。あまりにも短すぎる。住宅寿命は木造住宅が主だから、林業にも大きく影響を与えているからだ。住宅寿命が短いほど、木材需要が増える。かつて木材需要を支えているのは、住宅だったのである。今は、どんどんシェアが縮んでいるが、それでもA材の売り先は建築材だから、影響力は小さくないはずだ。

私が子どもの頃に住んでいた家は、私が生まれた年に建てられたと聞いた。その後、親が売却して生駒に移り住んだのは私が20歳前後だったと思う。それから何年後だったか、30代半ばに昔の家の近くまで行く機会があったので、「あの家はどうなっているだろうな」と懐かしんで訪れたら、まったく違う家が建っていた。建て直されたのだ。それは、最初の家が30年そこそこで建て直し、つまり壊したということだから、たしかに日本の住宅寿命30年説は当たっていたことになるだろう。それだけ安普請だったということか。

しかし言葉を変えれば、この安普請の寿命の短い木造住宅が、戦後日本の木材需要を支えていて、林業界にも恩恵を与えていたのかもしれない。

最近の家は長持ちするようになってきた。30年が50年、60年、いや国は200年住宅なんて言っているが、これは木材需要をへらすことに貢献するかもしれない。ただ使われている木材は、国産材とは限らない。柱などは外材の集成材が増えているだろう。昔とは逆に合板が国産材かもしれない。ただし人口が減少しているのだから、住宅着工件数も減っていくだろう。

そこに記事が指摘しているように、中古物件の流通が増えているとなると、日本の木材需要はいよいよ縮む。
相変わらず国は、公共建築物を木造化して木材需要を増やそうと意気込んでいるが、それも
バイオマス発電の燃料で統計上の木材需要を膨らますのと同じだ。これまでの木材需要そのものが、無駄な消費に支えられていたと考えれば、需要が縮むのは正常にもどる過程かもしれない。

本当に木材を使いたい利用の需要量を見極めないと、木材でなくてもよい木材需要ばかりを喚起する政策ばかりになる。

2021/03/30

林業産出額から見るバイオマス発電依存

2019年の林業産出額の統計が出た。

令和元年 林業産出額

それによると、国産材の生産量は増加したものの、キノコ類の生産量が減少して、前年比44億円減少で、4976億円(対前年増減率0.9%減少)である。なんだか下がった原因をキノコにしているが……。

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木材生産額の内訳を見ると、

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製材は、さして増えていない(約15億円増 0・7%)し、輸出は減っている(約2・4億円減 -2・2%)。増えているのは燃料用チップなのである(約39億円増 15・8%)。ようはバイオマス発電に支えられているわけだ。

生産量で見たら、もっと顕著。燃料材の伸びが圧倒的だ。製材などはほぼ横ばいなのである。(量の伸びほど額の伸びは小さいのは、やはり価格が安いからか。)

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これを言い換えると、日本の林業は、せっせと燃やすために数十年前に植えて、数十年間育ててきたことになる。なんだか情けない。

ちなみに昨年の状況は森林・林業白書にまとめられている最中だが、「コロナ禍の影響も軽微で堅調」という結論を出す模様(笑)。そりゃ、バイオマス発電は止められないから減らないよ。

ただ今年に入って材価の値上がりが続いている。これは、先日に「予言」したとおり、アメリカで起きているコロナ・バブルによる外材輸入が厳しくなったことがある。製材や集成材、合板などの原料を軒並み国産材へシフトし始めたからだろう。

もう一つ「予言」をしておこう。バイオマス発電燃料として大きなシェアを占めるPKS(ヤシ殻)。これが値上がり、もしくは輸入量がタイトになりそうだ。なぜならコロナ禍でマレーシアのパームオイル生産量が激減しているからだ。意外と知られていないが、マレーシアはすでに労働力を外国人に依存している。とくにアブラヤシのプランテーションで働いているのは、7割がインドネシア人かバングラディッシュ人。
彼らが入国できなくなり、オイル生産が止まっているのだ。
年間で1714万トンのパーム果実を収穫できず、昨年は343万トンの粗パーム油と85万7000トンのパーム油の生産が失われたと発表している。当然、ヤシ油も品薄になり価格が上がるだろうが、搾りかすであるPKSも出てこないから値が上がる。

となると、輸入燃料をあてにしていた日本のバイオマス発電は困ってしまう。こちらも国産材にシフトするかもしれない。すると国産バイオマス燃料は値上がりするだろう。と山の現場も、燃やすための木材生産を増やすだろう。

かくして日本の林業は、よりバイオマス発電依存を強めると読んだ。そして林野庁は「林業産出額も木材生産量も増えて、林業は成長産業となった」と自慢するに違いない(笑)。クソつまらない林業だな。

2021/03/29

林業経済学会シンポ~帝国日本が台湾で行った森林政策

先週3月24日に、林業経済学会の春季シンポジウムが開かれた。私は学会員でもないのだが、今回はオンラインで行う上、部外者もOKということから拝聴させていただいた。

というのも、テーマが「近代化と森林管理 : 知の普及に注目して 」だったからである。と言ってもピンと来ないかもしれないが、事例として取り上げたのが、日本の領有した期間の台湾における森林開発だった。

私は、植民地林業に面白さを感じていた。一般の理解というかイメージとしては「本国が征服者として植民地の資源を収奪したのだろう」と思ってしまうのだが、こと森林に関してはそうではないかもしれないのだ。森林開発に赴いた森林官は、母国ではできなかった「理想の林業」を植民地で展開した、という逆説が成り立つかもしれないと感じていたのである。

林業だ森林利用だというと、どこも長い歴史の間に地元住民と為政者によってがんじがらめの慣習や約束事ができてしまう。そこに近代的な科学知識に基づく林業理論を持ち込んだって、なかなか採用されない。それどころか反対されて追い出される。そんなところに「フォレスター症候群」と呼ばれるような、よそ者の森林官が机上の空論をぶって地元で浮いてしまう現象がある。

さて、日本の試みはいかがだったか?

シンポでは、2本の講演が行われた。

中島弘二(金沢大学)   日本帝国における森林の開発と保全―台湾を事例に― 
竹本太郎(東京農工大学) 日本帝国における植民地森林官の思想と行動:齋藤音作の前半期の足跡から

実は、斎藤音作は赴任してすぐに玉山と阿里山に登っていて、その行程に私は興味を持っていたのだが、それはまたの機会に。

ここでは中島氏の森林開発の歩みに注目したい。

なぜなら常に森林の保全がテーマになっているからだ。ある意味、環境林業の萌芽が見られる。

そのための森林計画なども興味深いが、わかりやすい例として、造林がある。実は伐採より造林面積の方が圧倒的に広いのだ。

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これは論文の中のグラフだが、まず樟脳を取るクスノキを絶やさないようにクスノキの造林を大々的にやっている。で、伐採を示す折れ線部分は、はるかに下の方。圧倒的に造林の方が多い。そうか、土倉龍次郎が行った1万ヘクタール借地による林業も、その枠の中に入っているのか。

実際、日本が領有した頃の台湾は、はげ山だらけだったらしい。焼き畑が多く、清国の野放図な伐採が続いていたからだろう。そこで日本は、せっせと木を植えたという。さらに先住民の森林利用の研究も行っていて、その智恵を収集した研究者もいた。おかげで現代の台湾人学者から非常に高く評価されている。う~ん、なんかこそばゆい(^o^)。

一方で先住民を弾圧したため、霧社事件などさまざまな反乱事件が起きたとされるが、少なくても森林官は、先住民の森に手を付けないよう頭を巡らせ、彼らの生活を守ろうと努力した跡も見受けられる。

ここに「理想の林業」を追求した日本の森林官を思い描けるのだ。もちろん、昭和に入って戦時体制が進む中で、その理想どおり進められたとは言えないのだが……。

ああ、日本の林業には絶望している私だが、どこか“植民地”で理想の林業を描いてみたい(⌒ー⌒)ヾ(- -;)

2021/03/28

巨木の樹形~天狗杉

奈良県山添村には,、神野山(こうのやま)という山ががあるのだが、その山頂近くにあるのが神野寺。

そこに巨木があると聞いて見に行った。どうしても巨木という言葉に弱い(^o^)。

それは寺の裏手にあった。

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なるほど。デカい。樹高約20メートル。胸高幹周り426センチ(とあるが、約30年前の計測なので、現在は数センチ太っているのではなかろうか)、樹齢はざっと300年近くか。

正直、大きさから言えば、さほどではない。ただ地上2メートル当たりで3本に分かれていて、それぞれが伸びている樹形が気に入った。なんだかスマートでありながら力強い。巨木は大きさだけでなく、見た目、つまり樹形がよくないと感動しない。太くて真っ直ぐな幹が長く伸びていても、それは林業的な目で銘木だと思うだけで、巨木鑑賞の点からはイマイチなのである。
そして名は天狗杉。この当たりには天狗伝説があって、伊賀の天狗とケンカした話も伝わる。

……ちなみに、この天狗杉は2代目とのことである。先代が近くにあったのだが、枯れたのでこちらが2代目襲名(笑)。そういう逸話もなんか楽しい。

 

なお、近くに天狗岩もある。

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こちらは星空のアルタイルと相関しているという伝説……というか、ようするに最近つくられたお話がある。意外とそういうのは多い。生駒山に連なる大阪府枚方市~交野市には地上の石と北斗七星を相関させた七夕伝説があるのだが、それも昭和に入ってつくられたのだとか……。閑話でした。

2021/03/27

竹林が枯れる理由は何?

せっせと散歩するようにしている。森歩きは、目ぼしいコースを歩いてしまった。自宅周辺で新コースを開拓するまでお休みだ。

というわけで、佐紀佐保の古墳周遊コースを歩いていたのだが……次々と現れる巨大前方後円墳の姿はなかなか興味深いのだが、そんな中でふと目にしたこの景色。

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何かといえば、枯れた竹林だ。なぜか見事に枯れている。こんな枯れ方することもあるんだ。竹は伐っても伐っても生えてくるしぶとさで有名だが、一斉に枯れ、その後生えてこないこともあるらしい。

原因を考えてみた。
まず一斉開花したので枯れた? でも1本単位で枯れても、竹林全体が枯れるのはあまり聞かない。それに枯れたあとにまた新芽?タケノコが生えて来ないのか。
では、誰かが竹林の地面に除草剤でも大量にぶちまけたのか。ちょうど盆地状で湿地みたいだったから。しかし、大量の除草剤は高くつくし、そんな手間は誰がやる。
ならば、石油とか有害物質を垂れ流したら,枯れるかも。そりゃ環境破壊的だな。
いやいや、そもそも寿命が来た、というのは? そもそも竹林は、全部地下茎でむすびついている1個体だから。

原因はわからない。でも、無敵の強さを誇る竹も枯れるのだ。60年とか120年周期だけど。


ちょっと口直し映像。

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これ、カメラのファインダーを覗かず、目隠し状態のスナップ。なかなかよい出来じゃないか。

 

 

 

 

2021/03/26

土倉翁磨崖碑の展望台

川上村大滝には、土倉庄三郎を顕彰する磨崖碑があるのだが、これまでは駐車場もなく、わりと見るには苦労した。

そこで今年度(土倉翁生誕180年)の事業として、展望台が整備されている。これまでガソリンスタンドがあったところが廃業して放置されていたので、そこから磨崖碑を眺められるようにしたのだ。

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駐車スペースを確保するとともに、高い壁を外して、磨き丸太の手すり。う~ん、なぜ磨き丸太なのかといえば、余っていたから(^o^)という声もありましたが。なかなか見通しがよくなって、磨崖碑だけでなく、真下の大滝の瀬もよく見えるようになった。

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こんな標識もある。肝心の磨崖碑は、また苔がついて文字の色落ちしてきたから見えにくくなっているのだが。誰か、吾と思わんものは、壁によじ登って(下ってもいいが)、磨崖碑清掃に挑戦してくれたまえ。

整備はこれで終了ということではないだろうが、川上村を訪れる機会があれば、新しいここで磨崖碑の見学も加えよう。これまでにない角度から眺められるという点でも新鮮だ。
なお、この岩壁のある(吉野川)流れの下流・東ノ川に入ると、対岸にはサクラが満開。吉野の隠れたサクラの名所である。(吉野山は、ヤマザクラなので、咲くのはまだこれから。)

 

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2021/03/25

人間を恐れないシカ、増殖中?

北海道苫小牧市の小学校の校庭に、エゾジカが大挙(約20頭)押し寄せたというニュースがやっていた。

改めて探すと、ユーチューブにアップされていた。

小学校にエゾシカの群れ 北海道・苫小牧市 シカ出没相次ぐ 

何本もある。何度も出没しているらしい。しかも角のあるオスジカも多い(3月なのに、まだ落ちていない)し、警官も出動したよう。児童の通学を心配したり、交通規制もするとかしないとか。。。

なんとなく笑ってしまったのは、そこに映る光景は、奈良では日常だからだろうか。もちろん、奈良のシカは角きりをされていて危険性が低いし、体格もエゾジカより小さいのだが……。ちなみに私が見たのは、奈良女子大学の構内(左)と、奈良教育大付属小学校(中、右)かな。別に騒動にはならない。たいていの人・学生は、無視して通りすぎる。

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奈良はいいのよ。歴史的にシカとつきあってきて、住民はシカの扱いに慣れているしシカも昔から当たり前のように人と交わり市街地に出没している。子どもたちもシカを平気で触る。シカも触られて平気。怪我したとは聞かない。(観光客は、たまに怪我する。)
しかし、北海道のシカがなぜ人に慣れてしまったのか。その点は不思議だ。

かつて北海道ではエゾジカを片っ端から捕獲して缶詰にしていた。今も駆除は相当な規模で行われている。しかし人前に姿を現しても追われることはないという確信を持っているかのようだ。今回の「学校に出没」ではなく、エゾジカがコンビニに出没して、人に触られている動画もあったはずだ。

巷間言われるように、餌がないから仕方なしに、こわごわ町に入った……という様子は見られない。新天地を求めて足を延ばした冒険心あふれるシカがいるのか。いや、やっぱりなめられているんじゃないか?

おそらく郊外、それも田園や放牧地なら人が追い払ったり駆除しようとするので逃げるのだろう。しかし都会ほど、人は甘いと気づいたのかもしれない。それとも北海道の農家でも、人はシカを追わないのか。諦め気分かもしれないが……。人に出会って危害を加えられなかったことを学習してしまうと、どんどん人里、都会に進出するようになるかもしれない。

 

 

2021/03/24

アマゾンも、水田も、シカも温暖化ガスを排出!

ちょっとショッキングなレポート。

アマゾン盆地、実は温暖化を助長している可能性、研究森林によるCO2吸収効果をその他の悪影響が上回る

アマゾンの熱帯雨林は今や、地球の温暖化を助長している可能性が高いことが、30人以上の科学者が関わった最新の研究でわかった。論文は3月11日付けで学術誌「Frontiers in Forests and Global Change」に発表された。

ナショナルジオグラフィックが報道しているという点もちょっと意外だが、すでにここまで来ているか、と思わせた。
しかも主な理由は、森林伐採が続いているとか森林火災が相次いだことではなく(いや、それも含めるが)、雨期が伸びて洪水が頻発したり、ダムが建設されたりして森林が水没することだという。森林が水没すると、森林土壌の有機物が分解され、メタンガスが発生する。メタンは二酸化炭素よりもはるかに強く(30倍とか)温室効果を発揮する。

で、気がついた。この理屈だと、アマゾンだけでなく多くの熱帯雨林でも起こるだろう。雨が多い森なんだから、いたるところに湿地ができているのだから。またダム建設なら温帯地域でもたくさんあるだろう。

ここまで考えて、さらに気がついた。水田は肥料をたっぷり入れて水を張っているのだから、メタンガスを発生させないのか?
もう一つ。ウシなど反芻動物も、ゲップとオナラでメタンガスを出すから温室効果を高めるとされる……。あ、反芻動物と言えば、シカもだ! シカが増えすぎたら、地球温暖化が進む! (今後、この現象も獣害に含めようかな。)

いや、そもそも木はメタンを発生させるそうだ。メタンは曲者だ。一見、二酸化炭素の排出が少ないエネルギー源だと思わせておきながら、実は自身が温暖化ガスなのだから。

先に気温上昇が続けば、森林も二酸化炭素の排出量が増えるという論文が発表されていた。私は、それで記事を書いたのである。
温暖化で腐葉土の分解が進んで二酸化炭素が多く出されるだけではない。葉緑体自体が光合成を止めてしまうらしい。つまり二酸化炭素を吸収して酸素を出してくれない。

なんだか、ありとあらゆる要因が地球温暖化⇒気候変動を引き起こそうとしているみたい。

なかなか笑えない冗談になりそうだ。

 

 

2021/03/23

不動産業が果たす価値~「ガイアの夜明け」から

昨夜BSテレ東で、ガイアの夜明け【ニッポンの山は“宝の山”!?】を見ることができた。前回の地上波放送時には『まだ「山林を買う」ブームか?』にも書いたように見損ねていたからである。

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さて、いかなる感想を持ったか?……うん、よい番組だった。切り口も、紹介する事例もいい。山林売買を、土地の価値だけではなく、立木も算定して行う業者もいるのは嬉しい。これは林業の基本だが、せっかく山林売買ブームと言いつつも、それを行える業者は少ない。山林は土地だけではないのである。
そして送電線の通っている山を狙って買うとか、1円の土地や家屋を扱う業者とか、面白い事例を集めている。なかなかの趣向だ。

私が考えたのは、不動産業の価値である。まず山林の所有を負担に思う人がいて、一方でその山林に価値を見出す人がいる。その両者を繋ぐのが不動産業である。このような両者のマッチングこそ、不動産に限らず、すべてのビジネスの基本ではないか、と。

世間的には、不動産業、会社にしろ町の不動産屋にしろ、そんなによいイメージは持たれていないように思う。バブルの頃の地上げ屋のイメージも残るし、値段があってないような値付けでぼろ儲けしているんじゃないかという不信感。危ないプローカーの存在。土地にしろ建築物にしろ、権利関係が複雑なゆえ後々トラブルが発生することも多いからだろう。

しかし、持て余している荒れた山林でも、そこに何らかの使い道や価値を見出して、それを求める人を探し出す人脈とアイデアは不動産業ならではだ。チェンソー販売店に荒れた山をチェンソーの練習場にしませんか、なんて持ちかけるのはすごい。

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人をつないで不動産を動かす。これこそ不動産業の醍醐味ではないか。山林だけでなく、たとえば町の空き家とかぼろ家でも、それをリノベーションしておしゃれなカフェを開きたいと思う人を見つけてマッチングすることができれば、店ができれば町の価値か上がり活性化になるわけだ。そして空き家に入る人や店を見つけてくるのは、不動産業の仕事なのである。決して行政のできることではない。

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これは某地方都市の商業地にできた空き地の図。こんなに空き地があっては、空洞化が進み、とても活性化はできない。早く空き地を埋めて行かないと、町おこしは不可能だろう。ここにテナントを呼び込むのも、不動産業の仕事だ。

同じように荒れた山林も、商業地にできた空き地と同じだと考えればよい。そんな山でも探せば「魅力」「用途」はあるはずだ。そして、その「魅力」と「用途」を求める人もいるはず。それをマッチングの材料にする。
以前、話を聞いた林業家は、さかんに山林を購入していた。価格は二束三文だが、売り主は持て余しているからそれでよい。どうせ、自分の山にはロクな木がないと思っている。しかし購入後によくよく林内を探索してみると、必ず高価に売れる木々を発見するそうだ。それを伐採搬出すれば元が取れるのだとか。残りは利益が薄くてもかまわない……という発想であった。

林業の活性化とか、山村の振興を考えると、すぐ補助金目当てになる。あるいは行政が机上の空論を振り回すだけになる。本気で山を動かそうと思うのなら、見る目のある不動産屋を呼び込もう。そこまでが、行政の仕事だ。

ほかにも本気になってくれる金融機関だったら、異業種マッチングに力を発揮する。また税理士ならば相続なども含めて取り組める。いずれも「山林に興味を持っている」という条件付きだが、任せると何かが起きそう。本当に放棄山林が「宝の山」になるかもしれない。

2021/03/22

Y!ニュース「タンチョウの数過去最多。」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「タンチョウの数過去最多。鳥害と観光の狭間を考える」を書きました。

タンチョウのことは、実は『獣害列島』より前、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』を執筆するときに調べたのだった。野生動物を手なづけて観光に利用するという点が奈良のシカ、ナラシカと似ていると思ったので。しかも、どちらも天然記念物。増えすぎて食害を出している点も一緒。

だからタンチョウを見てナラシカについて考えよう、という発想なのであった。

そこに現在のタンチョウの棲息数調査の結果があったので、抱き合わせたわけだが、その数が1500羽あまりとは、数までナラシカと近いなあ。

そこにコウノトリやトキまで加えると、それなりの形になる(^^;)。野鳥は苦手というか詳しくないのだが、こうして勉強していくのであった。

2021/03/21

我が家からの雲海

我が家からは、時として雲海が見える。普通は冬の寒い日、のはずなんだが、今朝は雨空の中、ベランダから見えたのでパチリ。

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我が家は生駒山の中腹にあるが、奈良市側を見ると、まず生駒谷を降りて、その向こうに矢田丘陵があって、その向こうが奈良盆地、という配置だが、生駒谷と奈良盆地に雲が低く垂れ込めている。

ただし、本当は結構電線が写っているんだよね。ちと興が削がれる。そこで消せないかと考えたのだが、そのための専用アプリは持っていないので、「ペイント」でシコシコ塗りつぶす作業をしました(笑)。本当は手前の家も消してしまいたいのだが……。

が、なかなかいい雰囲気になったではないか。

もっとも、その後は雨足が強くなって、完全に靄に包まれてしまった。その意味では、一瞬のシャッターチャンスだったことになる。

2021/03/20

仏隆寺に行ってきた

奈良県宇陀市の山間にある仏隆寺に行ってきた。

この寺、関西人なら知る人も多いだろう。桜の名所だ。ただし本数が多いのではなく、巨木の桜があるから。また秋は、曼珠沙華、ヒガンバナが咲き乱れる。

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ただ桜はまだ早い。だが咲いていない方がいいのである。満開時期には何百人と押し掛けて駐車場も小さいため大騒動になるからだ。何キロも歩いていくほどだ。その点、蕾も硬い今ならのんびり見られる。(何を見るんだ?)

実は隠れた価値が仏隆寺にはある。

それは大和茶発祥の地ということ。それは日本の茶の故郷ということ。

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中国から持ち帰った苗を植えた伝説がある。それが全国に広がったと。茶の木は自生していたとも言われるが、茶文化は中国から伝えられたのは事実だから、まあいいか。今の仏隆寺には、参道の周辺に繁っている。

2021/03/19

『絶望の林業』リターンズ?

出版から約1年半。『絶望の林業』の書評が載った (@_@)、いや(^o^)。

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消費者レポート」という、日本消費者連盟の機関誌(になるのかな)。1部1000円というから、なかなかのお値段。

実は、このところ再び『絶望の林業』がらみで取材を受けることが重なっている。まず3月初旬に雑誌のインタビューを『絶望の林業』の内容で受けた。4月発行の号に載るのだろう。
さらに某メディアの記者が、バイオマス発電の取材をする中で、林業に興味を持って勉強する中で『絶望の林業』にたどりついたというものもある。もう少し正確に言えば、発電の取材先の人は、「今の林業はどうにかならんか。軸足がぶれているから困る」などと言ったのだそうだ。そちらの業界の方にも心配されている日本の林業界……(´Д`)。で、私にはバイオマス発電の話はおいといて、林業の取材に来た。すぐに記事にするのではなく、今後林業を追いかけて取材するための勉強だという。これで、いつか林業の記事を書いてくれたらよい。

さしずめ私は、林業界に興味を持つメディア人を増やす役割を担っているのかな。そう考えると、納得する。なんでも教えるからどんどん増えてくれ。そうしたら、私は林業から引退できる。私も林業界の情報に網を張っているのは飽きてきた。このブログも、裏ブログのように楽しい話題を探して書く方が楽しい。

ともあれ、有り難いことである。これでまた『絶望の林業』の売れ行きが伸びたら、7刷目に期待……(笑)。

 

 

2021/03/18

獣害に「忠犬」を!

田畑を荒らすイノシシやシカなど追い払うロボットオオカミ「モンスターウルフ」で獣害対策が話題になっているが、私はその効果に疑問を持っている。

それより効果があるように思う“秘策”がある。

というと語弊を招くが、実は先に妻籠(南木曽町)を訪れたとき、山間部を走って目にしたのが「忠犬」の看板だった。

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忠犬? 南木曽にも忠犬ハチ公みたいな伝説とかエピソードが伝わっているのか?と怪しんだが、なんでもイノシシやシカ、そしてサルなどを追い払うためのイヌの利用事業が進んでいるのであった。

これこそ我が意を得たり、なのである。なぜなら獣害対策には、私は何よりイヌが効果的ではないか、と思っていたからだ。ロボットではなく、生きたイヌが現れた野生動物に合わせて臨機応変の対応(吠える、追いかける、かみつく、人を呼ぶ……)をする方が効果的だと思うからである。機械による音や光では、動物側はすぐ慣れてしまうことは多くの事例が示している。そこで動物には動物を、なのである。
もちろん、人間も追い払いに頑張るべきなのだろうが、野生動物と向き合うと危険な側面もあるうえ、高齢者が増えている山間部では体力的に無理だろう。さらに夜も田畑を見回りするなど考えると、日々の暮らしへの影響が大きすぎて、とても連日できることではない。

そこでウシやウマ、ヤギ、ヒツジ……などの放牧も考えた。しかし、どこでも飼える動物ではないし、その動物の世話がまた大変になる。ヒツジなどでは、逆に襲われてしまう可能性だってある。

やはり、もっとも身近で、飼育に抵抗感もなく、何より効果的なのがイヌなのではあるまいか。イヌ自体が夜行性だし、畑を走り回って出没する動物を追うことは、イヌの本能にも合致する。追い払う能力や範囲などは、少しの訓練で身につくだろう。一部でオオカミを放て、とおバカな意見も出ているが、絶滅したオオカミを海外から持ち込む前に考えるべきは、オオカミと同じ種であるイヌだろう。(せいぜい亜種)

実際に、戦後すぐまではイヌの放し飼いが当たり前で、なかなか効果的だったという声もある。だいたい「忠犬ハチ公」のようなエピソードもイヌを放し飼いできた時代だから生まれたのだろう。
それができなくなったのは、1953年に狂犬病予防法が制定されたことが大きい。 狂犬病の恐れから放し飼い禁止が義務づけられたからだ。またノライヌの駆除も進められた。

しかし、今こそ中山間地のイヌの放し飼いを解禁すべきではないだろうか。リスクより益の方が大きいはずだ。だいたい、ネコは今も野放図な放し飼いを容認されているのに、イヌだけを取り締まるのはおかしいだろう。

……とまあ、そんなことを考えていたところに、目にした「忠犬事業」なのである。

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イヌを訓練して、人に危害を与えないようにするのはもちろんだが、シカやイノシシを追うようにしつける。また行動圏を決めて、それ以上遠くには行かないように覚えさせればよい。たとえば柵で囲んだ田畑に放し飼いなら問題も起こりにくいはず。
私が子どもの頃飼っていたイヌも放し飼いをしていたが、町の一角の袋小路の路地から出て行こうとしなかった。たまに私が首輪にリードを付けて遠くに連れて行こうとすると(たいてい狂犬病予防接種などをうけさせるためだが)、必死に抵抗して出るのを嫌がった。自分のテリトリー意識は高いようだ。

「忠犬事業」は、イヌのシツケにかかる費用などを補助しつつ、集落単位で認知させるらしい。全国で20~30自治体ぐらいで実施しているようだが、もっと普及させる価値があるのではないか。サル追いに特化したモンキードッグもいるそうだが、そこは臨機応変でいい。

イヌの放し飼いが獣害の抑制にどさだけ役立ったか確認する必要もあるが、ゼロということはないはず。それに高齢化の進む集落でイヌを飼えば、人々の癒しや体力維持にもなるし、防犯やコミュニケーションにも役立つ。むしろ可愛がりすぎて、愛玩ペットになってしまうと、野生動物を追わなくなるかもしれないから、そちらの方が心配か。

南木曽町の「忠犬」というネーミングもステキだねえ(^o^)。横文字でなく、「忠犬」ですよ。

2021/03/17

モンスターウルフって、怖い?

SNSで「モンスターウルフ」なるものがいっぱい流れてきた。そこでネタ元を探してみると、だいたいこれ。

「モンスターウルフ」福島県国見町導入へ 鳥獣害対策、鳴き声で撃退

これ、昨年に登場していたのだが、また実験など始めるとしてニュースになるのね。

ようするにオオカミをかたどったフィギアで全長120センチ、高さ80センチ。赤外線センサーで野生動物を感知すると、身体を動かすだけでなく、目などに仕掛けてあるLEDが点滅するほか、オオカミの鳴き声や銃声など50種類以上の音を発する。開発したのは北海道の「太田精器」。

そのパンフレットは、こちらだ。詳しい仕様は、リンク先を見てもらいたいが、

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う、う~ん。本気で、これでシカやイノシシ、そしてクマを追い払えると思っているのだろうか。

いくら動きや鳴き声のパターンを買えて馴れさせないと言ってもなあ。これまでの実験では成功したというのだが。。。

むしろ私は何カ月持つかな、と考えてしまう。すでによく似た装置はいろいろあった。音や光や超音波発生なんてのもあった。しかし最初は驚いても、徐々に馴れるのがこれまでのパターンだ。動物もバカではないからね。毎回別の個体が姿を見せるのならよいが、たいてい同じ個体が毎晩のように出没すると言われる。そこで追いかけられなかったら、徐々に「怖くない」と学習するだろう。

仮に半年持てば、収穫を終えるからよいか。しかし、多分、学習効果は何年も続くから、甘く見ないほうがよい。

むしろ人間の野菜や果実泥棒に効くかもよ。

2021/03/16

Y!ニュース「「蛇抜け」の本場で進む国有林の伐採…」を執筆した裏事情

Yahoo!ニュースに『「蛇抜け」の本場で進む国有林の伐採計画。土石流の歴史に学べ』を執筆しました。

結構、難儀した記事。具体的には、ネット記事で私には珍しい帰納法的執筆をしたこと。ネットには演繹的執筆が似合うと思っていたのに、あえての変更。

なんのことやらと思われるかもしれないが(^^;)、結論を初っぱなに書くのが演繹法だから、南木曽で進む分収育林の伐採計画を取り上げようとしたら、冒頭にその計画を説明し結論を出さねばならない。その後から事実関係を積み上げ検証する。ネットは、最後まで読まない人が多いから、先に結論をぶつけるのである。

だが、それだとつまらない記事になってしまうと感じた。分収育林、そして「緑のオーナー制度」についてに説明し始めると専門的だし、地味。面白くない。それこそ冒頭で読むのを止めてしまう。あげくに南木がかすんでしまう。

そこで、前半でじっくり「蛇抜け」について説明を重ね、南木曽、妻籠の地質の特徴を歴史的に知ってもらうことにした。そして後半に伐採問題を紹介した。分収育林については、さほど重視しなくてもいい。事実を重ねて、最後に結論という帰納法的な構成だ。果たして飽きっぽいネット読者を後半まで引っ張れるか……そんな試みだったのである。

 

ちょっとオマケ。

大崖砂防公園の敷地の地面に、矢印に示したような赤いテープが張られたものがあった。これ、ボーリングして地質調査したものなんだという。で、何のための調査かというと……砂防とは何の関係もない、リニア新幹線のルートだから。リニア新幹線は、この真下何十メートルかの地下を通すらしい。リニアはほとんどトンネルだからね。大丈夫かなあ。蛇が暴れるかもしれんよ。

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2021/03/15

世界中の科学者がバイオマス発電を批判!

最近いらだつのは、フェイクニュースを元に政策がつくられていると感じるときだ。

国際環境NGOのFOEjapanがブログで「500名以上の科学者が日本政府に書簡を提出:森林バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」を公表した。

内容は、42の国と地域の500名を超える科学者が、日本のほかアメリカ、EU、韓国に対し「木質バイオマスを使った発電はカーボンニュートラルではない」と主張する書簡を提出(アメリカ時間の2月11日)したというもの。バイオマス発電のために森林が伐採されていること、森林の再生には時間がかかり、数十年から数百年にわたって気候変動を悪化させること、バイオマスの発電利用は化石燃料を使用した場合の2〜3倍の炭素を放出する可能性があること……などを指摘している。

詳しくは本文を読んでいただければと思うが、実は以前から指摘されてきたことだ。そして、その内容は、あまりにも当たり前すぎるもの。だいたい燃やすために森林を伐採して、どこが「地球温暖化防止」対策なのだ。とくに日本はバイオマス発電燃料の過半を輸入している(国内の燃料も遠方から運んでいる)うえ、発電だけで熱利用をせずエネルギーの半分以上を捨てている点でも、欧米以上にたちが悪い。

科学者が真摯に突きつけた提言に目を通しても「バイオマス発電は再生可能エネルギーで、地球環境をよくします」と平気で口にする役人や学者は、単なるバカか、あるいは見て見ぬふりをする嘘つきだ。

 

まだある。政府は森林間伐等実施促進特別措置法の改正案を閣議決定した。同法は市町村の計画に基づいて行う間伐を支援するものだが、2020年度末で期限が切れるため、30年度まで延長するよう改正するものだ。
そこでは地球温暖化対策計画で、21年度から30年度で年間の間伐面積を45万ヘクタール行うための補助金を出すと記されている。これがかなり噴飯もの。

そもそも間伐したら、なぜ二酸化炭素の排出が減る(=地球温暖化が止まる)のか、本気で説明してほしい。科学的でないだろう。だって、間伐というのは木を抜き伐りすることだが、炭素を蓄えた樹木の本数を減らすことが、なぜ二酸化炭素削減になるのか? 伐られた木を燃やしたり腐らすことで、逆に放出しかねないではないか。仮に木材として利用しても、歩留りは半分以下だ。

残した木は、周辺の木がなくなることで日当たりなどがよくなることでよく生長し、二酸化炭素をよく吸収する……というのも子供だまし的な説明だろう。たしかに開いた空間に枝葉を伸ばし少しは幹を太らせるかもしれないが、それも間伐された木の分だけしか生長しない。何年も経って、ようやく間伐前の吸収量に近づくだけで、以前より多くなることは有り得ない。一定の森林空間で生長するバイオマス量は一定、というのは森林学の常識だ。(間伐するな、というのではない。間伐の役割は別にある。間伐が二酸化炭素の吸収を増やすという説明が嘘だ、と指摘しているのだ。)

ついでに言えば、若い木の方が老木より二酸化炭素の吸収も多いというのも怪しい。ネイチャー論文を少しは読んだらどうか。拙文でも指摘した。「老木ほど生長する!」
ちなみに日本の林政では、スギを50年で老木扱いして「伐期だ、早く伐れ」と補助金をばらまいて皆伐を推進する。だがスギの寿命は屋久杉など特別なものを除いても、200~300年は優に生きる。50~60は鼻ったれ、というか若木だ。どんなに少なめに見ても100年生ぐらいでなければ生長が落ち着いたと言えないだろう。

こうして世の中、嘘と過ちの情報を元に政策が推進されているんだなあ、と絶望的な気分になるのである。

 

2021/03/14

謎の皆伐地&謎の美術館

近鉄大阪線に、榊原温泉口という駅がある。位置は三重県津市に当たるが、そこで下りたら駅前に、こんな景色が見えた。

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丘の麓がガッツリと伐採されているが、これは何を意味しているのだろうか。

拡大したのがこれ。

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残された上部の森は人工林だが、どうやら伐ったのは広葉樹、いわゆる雑木林のようだ。何のために伐ったのかね。麓の周辺は農地で、人家はない。あえて言えば農地の日当たりをよくするため? 雑木がヒノキ(しかも斜面上部)の生長に影響するとも思えないし……。しかし一部に竹だけ残している。竹を残すと、その後竹林になってしまうのではないか。それに、これだけの面積を皆伐するのは結構な手間だし、コストもかかったと思うんだけどね。

でも、すそ野をすっきりさせたらシカやイノシシが出にくくなる効果はあるかもしれない。

ところで、駅名は榊原温泉口というものの、近隣に榊原温泉が見当たらないのはどうしたことか。そこで地図を覗いたら、かなり遠く、10キロ近く離れていることがわかった。タクシーも停まっていなかった。こりゃ、電車できた人にとっては温泉旅館の迎えの車でもないと行きようがない。

ただ、別の名所があるんだよ。

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ループル彫刻美術館。これはすごいですよ。ミロのビーナスもサモトラケのニケも。さらに自由の女神原像もツタンカーメンの黄金マスクもロゼッタストーンも。名品ぞろい。どれも偽物じゃない! オススメです(^o^)。

 

 

 

2021/03/13

化石未満のメタセコイア

先日の伊賀を訪れた際に、こんなものを目にした。

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わかるだろうか。一見、樹皮に見える。実際、木繊維ぽいものが見え、層になっている。しかもペラペラとめくれる。触ると柔らかそう。

が、木質ではない。では石か。化石か。……しかし、指先に力を込めると、あっさり割れる。そしてサラサラの砂になる。いや、砂というより土か。乾燥した粘土のような様相だ。化石未満の植物だろう。

断面は、こんな感じ。

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さらに地層断面を見ると……。

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表土の下に薄い亜炭らしき層があり、その周辺に、この化石未満がある。その下層に粘土層があり、さらに下は花崗岩の風化層。

実は伊賀盆地の当たりは古琵琶古層。かつて琵琶湖があったところだ。その周辺には森林があり、それが琵琶湖の移動とともに分厚い堆積物は山となったらしい。だから木の化石がたくさん出る。私が採集したのが何かははっきり言えないが、よくメタセコイアの化石が見つかり、古琵琶湖の周辺の湿地にはメタセコイアの大森林があったと言われている。日本列島が大陸とつながっていた証明にもなる貴重な化石だ。これは化石未満だけど(^o^)。

現在の琵琶湖周辺、滋賀県などは、あまり森林地帯のイメージはないが、古くは田上山の巨木林(平城京の建設で使われる)や、東大寺大仏殿の建設の木材を用立てた甲賀杣などがあって木材産地だった。だからメタセコイアの森林があったと思ってもおかしくない。ただ絶滅したと思われていたが、20世紀に中国の奥地で生きた樹木として発見された。
今では日本にも移入されて、今は街路樹や並木として日本全国に植えられている。実は現代の琵琶湖岸にも、たくさんのメタセコイア並木が見られて観光名所にもなった。そのご先祖様が、地下深く眠っているのだねえ。

 

2021/03/12

国産材、高騰の兆し?~予言か妄想か~

このところ林業にはあまり触れていないし、書いても絶望的な話ばかりなんで(^^;)、ちょっと感じている「兆し」を記しておこう。これが予言的中となるか、あるいは素人の妄想に終わるか、……知ったことじゃない(笑)。

というのは、どうも国産材の価格が上がり始めたようなのだ。それ自体は、木材を扱っている人も感じているかもしれないが、その理由を探ると、どうやらアメリカのバブルにあるらしい。

アメリカはコロナ禍の中の経済てこ入れが凄まじくて、ちょうど200兆円の予算を組んだばかり。おかげで住宅市場が沸騰しているようだ。そのため木材価格もバカ上がりし始めたのだ。北米材の価格がバク上がりしたことで、急遽ヨーロッパ材が流れ込む。日本に売っていた製材までアメリカへの輸出に回している。日本なんぞに売るより高くて儲かるから。

この動きは中国にも響いているはず。中国はロシア材が規制で入ってこなくなり、もともと日本材にシフトしかけていたが、米材やヨーロッパ材も入ってこなくなったら、いよいよ日本材を買いに来る。韓国も台湾もベトナムも追随する。

日本の実力では、高くなった米材はもとより、ヨーロッパ材も買えなくなってきた。さて、どうする? 

昨年のコロナ禍の始まり時の林業界は、「おれたち野外だからコロナウイルスなんか怖くないよ~」とのんびり構えているのを見聞きしたが、徐々に建築業界まで停滞して、価格は下落。結果的に材の生産量はしぼんでしまった。

しかし住宅建設は遅延できたとしても、合板や集成材は工場を止めることができない。装置産業だからラインを止めるのは死活問題。そこで国産材へのシフトが高まってくる。高くても買うよ! となっているようだ。

実際に、ヒノキのB材の価格が1万8000円/㎥なんて実質2倍になったケースも聞く。フローリング材も外材が入って来なくて国産材を探している声が伝わってきた。まだ局所的だが、メーカー全体がそちらに舵を切れば、一気に国産材不足が顕著化するだろう。増産するなら今でしょ!
ところが主な林業地では、まだ増産していないらしい。そうしたらより逼迫して、価格はドカンと高騰するかもしれない。 

すぐに動かないのが日本の林業の特徴だ(笑)。そんな世界的な動向を読んで経営している業者そのものが少ない。それに補助金がつかないとやる気が出ないらしい。これも依存症ならではの特徴か。これまでは、価格が下落しても「補助金が出るから伐る」というのが問題だったが、逆に言えば補助金は即時即応できないから、フレキシブルに動けない。チャンスをピンチに変える名人ぞろい!! 
もちろん一過性の高騰に便乗したら、必ず来る下落に足を取られるかもしれないから、怖くて手を出さないという業者もいるだろう。おそらく高騰時期は短期間だから。

それにしても経済は世界規模で動きつながっている。当然、日本の山もそこにリンクしている。的確に立ち回れば儲かるはずなんだが。……と、ここまでが私の予想。

さあ、どうする? 私は予想が外れても全然平気(笑)だが、関係者は自分で判断してくださいね。

 

 

2021/03/11

水に浸かった洋館

田畑の広がる田舎の風景の中に、洋館。

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ここは三重県の伊賀地方某所だが、まるですり鉢状になった地形の中に、ポツンと洋館の一軒家が建っていた。聞くところによると戦前の建築らしいのだが、木造の今見てもなかなかオシャレな造りである。

だが、この洋館が、一度水に浸かったと聞くと、見る目が変わってくる。

それは昭和28年、1953年9月25日。台風13号が紀伊半島東方を進み、志摩半島に上陸して本州中部を横断していった。この際、近畿各地に1時間100ミリ以上の雨が数時間続き、各地に大災害をもたらした。主な被害は、死者・行方不明者478人、全壊家屋8604棟、床上浸水家屋14万4300棟、流失家屋2615戸と記録されている。

この洋館のある地域では、川の流下口に流木が詰まって水位が上昇、洋館の1階部分が完全に水没するほど水がたまって湖のようになったという。洋館の住民は2階に避難していたが、家具や冷蔵庫など全部流されたそうだ。当時中学生だった現住人は、なんだか楽しそうに当時の様子を話す。ただ驚いたのは、水が引いた後、この洋館はびくともしていなかったということ。

だから、そのまま住み続けたのだそうだ。それから70年近く経っているのだが、古びてても特に住むのに困ることはないようだ。

近くで見ると、壁もみんな木材。基礎はしっかりしているが、とくに太い材を使っている様子もなく、よくぞ持ち堪えたと感嘆する。腐りも入っていない。今なら水没した家屋のほとんどは壁が落ちたり、構造材が緩んだり、建材が汚水を吸い込んだりして使い物にならないことが多いだろうに。

意外や洋館は強かった。大工の腕がよかったのか。木材は実は水に強いのか。そんなことを考えながら見学した3月11日であった。

 

2021/03/10

まだ「山を買う」ブームか?

昨夜、テレビ東京系の「ガイアの夜明け」で「ニッポンの山は“宝の山”!?」として山林地の売買を取り上げていたようである。

実は事前に気づいて見るつもりだったのだが、急に気分が悪くなり「これは、出かけたからコロナウイルスに感染か」とおびえて寝てしまったのである。ま、風邪ぽい症状は何もなく、むしろ胃が気持ち悪く腹がぐるぐる動いたので、多分飲み過ぎ・食べ過ぎであろう(^^;)。

さて番組については、内容はHPに乗っているし、BSテレ東で再放送もやるだろう。忘れていなければ見られる。それにしても山林購入ブームはまだ続きそうだ。私は、もう手を出さないつもりだが。

ちょうどヤマケイ新書からずばり「山を買う」という本も出版されている。
こちらは情報を得てから気になって探していたのだが、なかなか見つからず、先日ようやくジュンク堂書店で見つけて手にとった。そして立ち読み(^^;)\(-_-メ;)。

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内容は……これもAmazonに目次も含めてわりと詳しく紹介しているから確認してもらえばよいが、わりとまともだった。

実は、しょせん昨年から始まった「山林購入」ブームにあやかって緊急出版したもので、山林問題に素人のライターがやっつけで書き上げたものじゃないかと怪しんでいたのだ。しかし私が確認した限り、真面目に書いている。山林に詳しいとは言えないが、著者にはこれまでもマンション問題など不動産関係の著作もあるし、本人は登山をやるらしいから山を身近に捉えているのだろう。

ただ、山林売買のメインストリームである林業には触れていない(森林経営管理法には触れている)。そして農林業における山林取引がどんなものか、歴史的な経緯も知らないようだ。一方で「外資が森を買う」といった以前から広がる噂には触れているが、単に紹介するだけでその内実も、また正否も書いていない。本当にあると思っているのか?

プライベートキャンプ場をつくるために山林を買う、というより、田舎暮らしのためとか、森遊び、自然保全のための山林購入を中心に据えているようだ。事例も12ばかり載せている。でもハウツウとしては弱いかな。むしろSDGsのような環境問題の視点がにじむ。

私のように山を持つと苦労するよ、といった論調でもなく、山林購入を勧めるわけでもない。真面目に書いている(^o^)。Amazonの紹介にあるように、「山を買うことのさまざまな情報をまとめた気になる一冊」という感じ。

「ニッポンの山が宝の山」とも書いていないから、「ガイアの夜明け」と比べてみたい(笑)。

 

2021/03/09

白山神社の大杉~日本一のスギは?

妻籠に行った際に見学に行ったのは、白山神社である。妻籠からは少し離れるが、同じ南木曽町の一角。結構、標高の高い山の中の集落にある。

ここには巨木群がある。ヒノキ(これは木曽檜と呼んでいいのか?)も多いが、やはり最大の巨木はスギだ。スギは、条件さえ揃えば非常に大きくなる。

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比較のため、私が並んで撮った写真だが、その横の説明によると、幹周り8・2メートル。樹齢は800年と推定。天然記念物とある。

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ただ、よく読むと、昭和41年12月の指定なのだ。1966年だよ。つまり、55年前。その間に木も太ったに違いない。意外なようだが老木ほどよく生長する。元気なら葉も多く付けているからだ。仮に直径で10センチ太れば周囲は30センチ以上となるし、20センチ太ればなら周囲は60センチ長くなる。今は8・5メートル以上あってもおかしくないだろう。

 

ところで、日本一のスギは、どこのスギだろうか。何を持って日本一とするか、その定義だってないが、直径か幹周り、高さ、材積……などかもっとも樹齢の高いものという基準もあるかもしれないが。

一般に思う浮かべる屋久島の縄文杉は、幹周り16・1メートル。高さも30メートルない。残念ながら、これでは日本一にはなれない。屋久島には、さらに大きなスギも見つかっているが、
さらに大きいのは、高知県大豊町の「大杉」は、2本あって夫婦杉とも呼ばれるが、南大杉は根元の周囲が約20メートル、樹高が約60メートル。北大杉は根元の周囲が約16.5メートル、樹高が約57メートル。

新潟県・三川村にある「将軍杉」は、木の根元近くから5本の幹が天に向かって伸びていて、胸高1.3メートルの幹回りが19.31メートルで、樹高約40メートルとなっている。

スギは、折れたりすると枝が太くなって合体することがあるらしく、そうした場合は胸高当たりの周囲は太くなる。純粋に太いと言えるかどうか難しい。

私も、アチコチの巨木を訪ねており、大杉も縄文杉も見ているのだが、写真がすぐには見つからないからカット。大杉という名では、岐阜県の加子母にも「大杉」があって、幹周りが13メートルぐらいあったし、大台町にも「大杉」はあるし、京都にもある。

まあ、樹木は計る場所が少しずれたら、直径や周囲は何十センチも変わる。それに計測日がはっきりしないので、古いものならその後の生長分も見込めるだろう。だから、この手の数字は当てにならないことをお忘れなく。

2021/03/08

妻籠宿の欄間

信州・妻籠の宿に行ってきた。

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そう、こんな古い宿場町。島崎藤村の『夜明け前』で描かれた世界。

そこでやっていた雛祭り展。

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なかなか壮観だろう。何百体あるのやら。ほとんどは寄付だそうだが、もう受け付けられないほど集まったそうだ。やっぱり女官や女児が多いのかなあ。いっそ、昨今の風潮を取り入れて、男女比を1:1にしたら面白いと思うが。五人囃子に女官を、三人官女には男官を。
まぁ、そうした戯れ言はおいといて、この中には昨年今年ゆえの扮装をした雛人形がいるそうだ。それを探せという。「ウォーリーを探せ」じゃないだから……。

 

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やっぱり、これじゃろうねえ。。。。まあ、この目立つ緑の格子模様ですぐにわかったが。ほかにもバーベキューしていたりテレビゲームに興じる子どもたちもいるのだが……。

これだけじゃ寂しいという、本ブログのクラスター向けには、宿(松代屋)の欄間を紹介しておこう。

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わかるかな。丸太の筏流しシーンが描かれているのだった。

 

2021/03/07

林業は“クソどうでもいい仕事”にむしばまれる

ウォールストリートジャーナルの記事。

Lumber Prices Are Soaring. Why Are Tree Growers Miserable?

Sawmill operators harvest gains while Southern landowners struggle with tree surplus; ‘I’m not making anything’

これを機械翻訳すると、
木材価格は高騰しています。なぜ樹木栽培者は惨めなのですか?
製材所のオペレーターは利益を収穫し、南部の土地所有者は木の余剰に苦しんでいます。「私は何も作っていません」。

もう少しこなれた日本語への意訳に挑戦してみた。
木材価格は高騰しているのに、なぜ林業家は惨めなのか?

製材者は利益をがっぽり確保しているのに、南部の山主は材価が下がって苦しめられている。「私は何も得ていない」


この記事、実は有料なので冒頭しか読めない。もし契約している人がいたら、読んで内容を教えてもらいたいが、タイトルと冒頭だけでも、アメリカの林業家は儲かっていない、利益を得ていない。製材所ばかりが儲けている……と理解できる。

どうやら住宅ブームで木材は高値になっているのに、肝心の山主には還元されていないらしい。

森林の所有者に利益は還元されずに、伐採搬出、製材加工といった業界に転売されていくことで中間業者、そして全体を覆う管理業務が利益を吸い取っていくというのは、日本の林業界で顕著な構造的な問題だが、なんとアメリカも同じ状況とは。生産者より消費者に届くまでの中間でマージンが抜かれていく状況とは何だ?

本来、製材も流通管理も必要な仕事だが、本当に必要な働きでなければ無意味になる。伐った木は本当に使われているのか。歩留りの悪い製材では無駄ばかりを生み出す。管理も、それによって全体の無駄がなくすものなのに、管理するためだけの仕事になれば、利益だけを吸い取る搾取になる。

文化人類学者デヴィッド・グレーバーのいうところのブルシッド・ジョブ……“クソどうでもいい仕事”が増えて、利益を収奪する現象が林業界にも蔓延しているというわけか。いや、世界中の経済が“クソどうでもいい仕事”を増やし続けていることの象徴か。

 

 

 

2021/03/06

高みのタラの芽はどうする?

タナカ山林のタラの芽が伸びてきた。もう少しで新芽も出るだろうが。

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伸びすぎや……高さ2・5メートルぐらいになっている。これじゃあ、収穫できないではないか。

どうしようか。昨年だいぶ幹を切り落とし低く剪定したつもりだったのだが、今度は側芽も伸びすぎた。我が手より逃れるように。

とはいえ、毎年芽を全部収穫してしまったらタラも衰弱するだろう。葉がなくなるのだから。育たず枯れてしまうように思うのだが、どうだろう?高く伸びた枝の先にあるタラの芽は、諦めるべきなのかねえ。

タラに効率よく、低く芽を出させる方法はないものか。

 

 

2021/03/05

数を減らして分布を広げたシカとイノシシ

環境省が、シカとイノシシの生息数と分布の推定結果を出している。

全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定及び生息分布調査の結果について(令和2年度)

結果を簡単に紹介すると、2019年度末における本州以南のニホンジカの個体数は、中央値で約189万頭(90%信用区間:約142万~260万頭)、イノシシの個体数は、中央値で約80万頭(90%信用区間約58万~111万頭)。この数字だけを見ると、2014年度をピークに、ニホンジカ、イノシシともに、減少傾向が続いていることになる。

ちなみにニホンジカは、本州以南に限る。北海道のニホンジカ(エゾジカ)の個体数は、北海道が独自に調査を実施している(2019年度末で約67万頭と推定)が、計算結果のデータ形式が異なるため、別で取り扱うのだが、一般人的には気にしない(^^;)ので、日本列島にニホンジカはざっと250万~260万頭と思っておけばいい。
イノシシは全国とあるが、もともと北海道には生息しない。リュウキュウイノシシは数字に入っているようだ。そうそうヤクシカも入っている。

なお、推定方法は、19年度までの捕獲数等の情報をもとに、ハーベストベースドモデルを基本とした階層ベイズモデルと呼ばれる統計手法を用いる方法……とか。

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(図表は、いずれも環境省HPより。)

ところが面白いのは分布だ。広がっている。1978年度から2018年年度までの40年間で、ニホンジカの分布域は約2.7倍に拡大、イノシシの分布域は約1.9倍に拡大しているのだ。また2014年度調査からもニホンジカ及びイノシシの分布域は、5年でそれぞれ約1.1倍に拡大しているという。どんどん生息域を増やしているのだ。
ニホンジカは、東北、北陸、中国の各地方で、イノシシについては、東北、関東、北陸の各地方で分布の拡大が見られた。

数が減っているのに分布は広げた……これをどのように説明するのだろうか。捕獲数を元に導き出す推定数というのも、捕獲数が増えたら数が増え、不猟だったら減るということになるから、信用度はどこまであるのか。

捕獲(環境省的な言い回しだが、ようするに駆除だ)を熱心すれはするほど、警戒したシカやイノシシは周辺に散っていくとも考えられるし、餌が減って新天地(この場合は人里)に進出しているのかもしれない。あるいは広がったため見落としが増えて数が減ったように見えるだけかもしれない。ただ確実なのは、分布域が広がれば頭数によらず獣害は増えるだろうということ。

ちなみに駆除で獣害(主に農作物被害)は抑えられないことは、さまざまな研究や実体験からも言われていることだ。生息数を半減させても、被害は半減しない。なお被害額は毎年漸減傾向にあるが、届け出があるものだけのカウントなので、農業を止めたら被害も受けないことになるから、イマイチ本当かどうか疑問だ。

それでも環境省と農林水産省2013年に「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(令和5年度)までに半減」することを当面の目標と決めているのだが、これは獣害抑制手段を目的化してしまっていないか。

数を減らしたのに分布が増えた、という調査結果も、十分に内容を吟味しないと実態をつかめないだろう。

2021/03/04

若草山の山焼きと山火事

我が家のベランダから若草山が見える。わりと最近気づいた(^o^)。そこそこ距離はあるが、わりとしっかり見えるのだ。

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上方に写っている線は、電線だ。この写真から我が家の位置を割り出さないでね(^^;)。

ちなみに今年の山焼きは、コロナ禍で縮小した上に大雨の直後で、ほとんど燃えなかった。それでも焼き直しはしないというから、今春以降は新しい草がどの程度生えるだろうか。

若草山が山焼きを始めた理由は諸説あるのだが、少なくても焼いた後にススキなど草の新芽がよく出て、それが奈良のシカの餌になっている。そして数を増やしたナラシカが若草山の草をせっせと食べて草山状態を保つ……という循環がある。今ではそれがナラシカの姿と草原、そして奈良盆地を一望できるという観光名所づくりの役割が大きくなった。

というわけで、山を焼けなかったことは心配なのだが、一方で先日の栃木・足利市の山火事は100ヘクタール以上を焼いて問題となった。鎮火まで約9日間かかり、周辺の住宅305世帯に避難勧告が出されたほどなので、被害も大きいだろう。ただ丸焼けになったわけではないらしい。報道を見ている限り、足利の山火事は、樹木が燃えた部分は少なく、林床の草や落葉などが焼けたようだ。ただ煙を浴びた樹木もそれなりに傷んでいるだろう。

焼けずに心配な山と、焼けて心配な山。どを違うのか。もちろん管理された山焼きと、野放図に燃える山火事という違いはある。コントロールド・ファイヤーという言葉もあるとおり、人為的に山焼きすることは、大規模な山火事を起こさないためにも大切だ。さらにシカのような草食動物が林床の植生を食べることは、炎の延焼を防ぐ役割も果たす。短くなって燃え広がりにくいのだ。

若草山は、単に人が火入れの管理をしているだけでなく、日常的にシカが若草山の植生を管理している。草をついばんでは丈を短くして、炎が大きくならないようにしているのだ。つまりシカがいることで、山火事の規模を小さくできるのではないか? 
しかも焼けた跡には新芽が出やすくなる。日当たりもよくなるし、灰のミネラルが栄養にもなる。そう考えれば、山火事も大きな生態系の循環の一部を担っているのだろう。

 

 

2021/03/03

Y!ニュース「黄砂が飛来するのは中国の里山が……」を執筆した裏事情

Yahoo!ニュースに「黄砂が飛来するのは中国の里山が破壊されたから。植林も砂漠化の一因だった!」を執筆しました。

これ、アップしたのが午後2時ごろ。通常、Yahoo!ニュース記事のアップはお昼までを狙う。なぜなら読まれるのはお昼休みが多いから。正確に言えば通勤時間帯や帰宅時間帯も多いが、朝早くアップするのは面倒(早起きはイヤ)なんで昼を狙う。

それが遅くなったのは、単に書き切れなかったから(^^;)。なぜか、執筆に時間がかかったのだ。わりと複雑な事象だけに、それをわかりやすくかみ砕くのに難儀したというか。

ついでに言えば、植林が砂漠化を推進することは、別記事として書きたかったテーマなんだが、こちらにも盛り込んでしまった。そのうち「植林は自然破壊」という記事もまとめたいのだが……。

中国の砂漠に植林を進めてきたといえば、故・遠山正瑛鳥取大学教授である。内モンゴルのクブチ砂漠への植林で有名で何万ヘクタールも緑化したとして英雄扱いになった人だ。実は、会ったことがある。それも向こうから会いたいという連絡があったのだ。ビッグネームからの電話だったかでびっくりした。これから中国に行くところというので、私も関西空港に出向いてお会いした。

その頃で、すでに80歳ぐらいだったと思うのだが、すごい熱量を感じた。なるほど、こういう人だから周りを巻き込んで植林が進められたのか。

ただ、私が協力することばなく日は過ぎて行くのだが……やがて植林に関する悪評が耳に入ってくる。植林の仕方も問題だが、そもそも植林することがよいことなのか? そんな疑問を持って取材をしたのである。すると鳥取大学の教授が言下に否定したね(^^;)。砂漠に木を植えるな、と。

ま、そんな思い出話もあるのだが、また別の機会に。

 

2021/03/02

日本農業新聞『獣害列島』書評

日本農業新聞の書評欄に『獣害列島』(イースト・プレス発行)が紹介された。2月21日である

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面白いのは『けものが街にやってくる』(羽澄俊裕著 地人書館発行)と抱き合わせであること。こちらの本は、私も先に紹介している(リンク先参照)が、拙著と同日に発行された獣害の本なのである。さすが農業新聞、獣害問題を扱う本には敏感だ。

幸か不幸か、獣害として真っ先に来るのは農業被害であり、それだけ敏感ということだろう。実際に拙著の紹介の中に、「被害に遇っている農山村の住民を除いては、ほとんどの人が野生動物による「獣害」の実態を知ることはない」と記されている。

両書とも、前提として今後は街に野生動物が出てくるようになり獣害が広がると予測しているのだけど、その原因の指摘の仕方は違う。羽澄氏は人口減少が動物を呼び込む点を強調している。そして私は野生動物の生息数が増えて、新天地を求めて都会に出てくるとした。この考え方は表裏一体だから、どっちが正しい・間違っているとする問題ではないけれど、そろそろ行政も本気で向き合った方がよい。街・都会への動物の進出は、一面で農業被害よりはるかに恐ろしい事態になりかねない。

ちなみに農林水産被害総額が年間1000億円を超えている、とあるが、私は識者の声に「実態は被害額として上がっている金額の5倍に達するだろう」とあったのを援用して、ざっと200億円の被害額を5倍にしたものだから、確定したものじゃない。ここには届け出のない被害額や、生態系被害・人身被害といった金額に変えられないものも含めている。1000億円という数字は大雑把に被害の大きさを伝えるための数字と思っていただきたい。

日本の農林業は縮小を続けているから、農林業被害だけをクローズアップしたら、今後減っていくだろう。むしろ増えるのは、生態系の劣化のほか、見えにくい人身被害、感染症の媒介などではないか。心した方がよい。

両書とも、ご講読あれ。

 

2021/03/01

トルコの植林面積

さすがに驚いた。いきなり、こんなニュースを目にしたからである。

「トルコは植樹ヨーロッパ1位、世界4位」 トルコ大統領府が発表

ピンとこない。トルコと言えば、中近東の国だから、なんとなく乾燥地帯のイメージがある。実際、内陸部には砂漠もある。せいぜいブドウやイチジクなどの農作物が盛んだから、乾燥地農業はよくやっているのかな、と思い浮かべる程度だ。

具体的には、極めて短く、こんな記事になっている。

トルコ共和国大統領府通信局のファフレッティン・アルトゥン局長が、自身のソーシャルメディアで、トルコは「植樹において、ヨーロッパ1位、世界4位」であり、「森林を増やしている国の中で世界6位」であると表明し、「この18年間で 173万9944ヘクタールの新たな森林が我が国にもたらされた。木について言えば、ヨーロッパ1位である」と述べた。

これだけ。さすがに納得できないので、少し調べてみる。

すると、こんなグラフが見つかった。

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森林面積は右肩上がりではないか。ただし森林率は15%。やはり、たいして森林はないのだ。また人工林比率は、30%。

全森林面積のおよそ 30%にあたる 342 万ヘクタールが人工造林地となっている。最近 5 年間では年平均 16 万 ha の造林実績がある。主な植栽樹種はマツ類(Pinus nigra、Pinus brucia)である。トルコの造林事業は「造林・土壌保全総局」のもとで実施されている。

2016年の森林面積は、11万8174平方キロメートル。最も低い1990年の9万6220平方キロメートルと比べると、1.23倍にもなっていて、増加率は高い。日本と比べた表もあった。

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こういうのを見ると、まだまだ森林面積自体は大きくないが、植林そのものには力を入れている様子が浮かび上がる。日本は多い多いと自慢している(いや、多すぎるから伐ろうとのたまわる)が、面積は横ばいで全然増やしてない。蓄積が増えたというが、質的には劣化していると言えるだろう。

もしかしたら、今後の国際的な炭素の排出権取引「カーボンプライシング」を睨んでいるのかもしれない。ヨーロッパでは大きな市場となるだろうから、森林を増やすことは国際社会での発言力は有利になる。

ちょっと頭の片隅に記憶をとどめておこう。

 

 

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