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森と林業の本

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2021/03/04

若草山の山焼きと山火事

我が家のベランダから若草山が見える。わりと最近気づいた(^o^)。そこそこ距離はあるが、わりとしっかり見えるのだ。

210303

上方に写っている線は、電線だ。この写真から我が家の位置を割り出さないでね(^^;)。

ちなみに今年の山焼きは、コロナ禍で縮小した上に大雨の直後で、ほとんど燃えなかった。それでも焼き直しはしないというから、今春以降は新しい草がどの程度生えるだろうか。

若草山が山焼きを始めた理由は諸説あるのだが、少なくても焼いた後にススキなど草の新芽がよく出て、それが奈良のシカの餌になっている。そして数を増やしたナラシカが若草山の草をせっせと食べて草山状態を保つ……という循環がある。今ではそれがナラシカの姿と草原、そして奈良盆地を一望できるという観光名所づくりの役割が大きくなった。

というわけで、山を焼けなかったことは心配なのだが、一方で先日の栃木・足利市の山火事は100ヘクタール以上を焼いて問題となった。鎮火まで約9日間かかり、周辺の住宅305世帯に避難勧告が出されたほどなので、被害も大きいだろう。ただ丸焼けになったわけではないらしい。報道を見ている限り、足利の山火事は、樹木が燃えた部分は少なく、林床の草や落葉などが焼けたようだ。ただ煙を浴びた樹木もそれなりに傷んでいるだろう。

焼けずに心配な山と、焼けて心配な山。どを違うのか。もちろん管理された山焼きと、野放図に燃える山火事という違いはある。コントロールド・ファイヤーという言葉もあるとおり、人為的に山焼きすることは、大規模な山火事を起こさないためにも大切だ。さらにシカのような草食動物が林床の植生を食べることは、炎の延焼を防ぐ役割も果たす。短くなって燃え広がりにくいのだ。

若草山は、単に人が火入れの管理をしているだけでなく、日常的にシカが若草山の植生を管理している。草をついばんでは丈を短くして、炎が大きくならないようにしているのだ。つまりシカがいることで、山火事の規模を小さくできるのではないか? 
しかも焼けた跡には新芽が出やすくなる。日当たりもよくなるし、灰のミネラルが栄養にもなる。そう考えれば、山火事も大きな生態系の循環の一部を担っているのだろう。

 

 

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