林業産出額から見るバイオマス発電依存
2019年の林業産出額の統計が出た。
それによると、国産材の生産量は増加したものの、キノコ類の生産量が減少して、前年比44億円減少で、4976億円(対前年増減率0.9%減少)である。なんだか下がった原因をキノコにしているが……。
木材生産額の内訳を見ると、
製材は、さして増えていない(約15億円増 0・7%)し、輸出は減っている(約2・4億円減 -2・2%)。増えているのは燃料用チップなのである(約39億円増 15・8%)。ようはバイオマス発電に支えられているわけだ。
生産量で見たら、もっと顕著。燃料材の伸びが圧倒的だ。製材などはほぼ横ばいなのである。(量の伸びほど額の伸びは小さいのは、やはり価格が安いからか。)
これを言い換えると、日本の林業は、せっせと燃やすために数十年前に植えて、数十年間育ててきたことになる。なんだか情けない。
ちなみに昨年の状況は森林・林業白書にまとめられている最中だが、「コロナ禍の影響も軽微で堅調」という結論を出す模様(笑)。そりゃ、バイオマス発電は止められないから減らないよ。
ただ今年に入って材価の値上がりが続いている。これは、先日に「予言」したとおり、アメリカで起きているコロナ・バブルによる外材輸入が厳しくなったことがある。製材や集成材、合板などの原料を軒並み国産材へシフトし始めたからだろう。
もう一つ「予言」をしておこう。バイオマス発電燃料として大きなシェアを占めるPKS(ヤシ殻)。これが値上がり、もしくは輸入量がタイトになりそうだ。なぜならコロナ禍でマレーシアのパームオイル生産量が激減しているからだ。意外と知られていないが、マレーシアはすでに労働力を外国人に依存している。とくにアブラヤシのプランテーションで働いているのは、7割がインドネシア人かバングラディッシュ人。
彼らが入国できなくなり、オイル生産が止まっているのだ。
年間で1714万トンのパーム果実を収穫できず、昨年は343万トンの粗パーム油と85万7000トンのパーム油の生産が失われたと発表している。当然、ヤシ油も品薄になり価格が上がるだろうが、搾りかすであるPKSも出てこないから値が上がる。
となると、輸入燃料をあてにしていた日本のバイオマス発電は困ってしまう。こちらも国産材にシフトするかもしれない。すると国産バイオマス燃料は値上がりするだろう。と山の現場も、燃やすための木材生産を増やすだろう。
かくして日本の林業は、よりバイオマス発電依存を強めると読んだ。そして林野庁は「林業産出額も木材生産量も増えて、林業は成長産業となった」と自慢するに違いない(笑)。クソつまらない林業だな。
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