日本農業新聞『獣害列島』書評
日本農業新聞の書評欄に『獣害列島』(イースト・プレス発行)が紹介された。2月21日である
面白いのは『けものが街にやってくる』(羽澄俊裕著 地人書館発行)と抱き合わせであること。こちらの本は、私も先に紹介している(リンク先参照)が、拙著と同日に発行された獣害の本なのである。さすが農業新聞、獣害問題を扱う本には敏感だ。
幸か不幸か、獣害として真っ先に来るのは農業被害であり、それだけ敏感ということだろう。実際に拙著の紹介の中に、「被害に遇っている農山村の住民を除いては、ほとんどの人が野生動物による「獣害」の実態を知ることはない」と記されている。
両書とも、前提として今後は街に野生動物が出てくるようになり獣害が広がると予測しているのだけど、その原因の指摘の仕方は違う。羽澄氏は人口減少が動物を呼び込む点を強調している。そして私は野生動物の生息数が増えて、新天地を求めて都会に出てくるとした。この考え方は表裏一体だから、どっちが正しい・間違っているとする問題ではないけれど、そろそろ行政も本気で向き合った方がよい。街・都会への動物の進出は、一面で農業被害よりはるかに恐ろしい事態になりかねない。
ちなみに農林水産被害総額が年間1000億円を超えている、とあるが、私は識者の声に「実態は被害額として上がっている金額の5倍に達するだろう」とあったのを援用して、ざっと200億円の被害額を5倍にしたものだから、確定したものじゃない。ここには届け出のない被害額や、生態系被害・人身被害といった金額に変えられないものも含めている。1000億円という数字は大雑把に被害の大きさを伝えるための数字と思っていただきたい。
日本の農林業は縮小を続けているから、農林業被害だけをクローズアップしたら、今後減っていくだろう。むしろ増えるのは、生態系の劣化のほか、見えにくい人身被害、感染症の媒介などではないか。心した方がよい。
両書とも、ご講読あれ。
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