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森と林業の本

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2021/03/11

水に浸かった洋館

田畑の広がる田舎の風景の中に、洋館。

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ここは三重県の伊賀地方某所だが、まるですり鉢状になった地形の中に、ポツンと洋館の一軒家が建っていた。聞くところによると戦前の建築らしいのだが、木造の今見てもなかなかオシャレな造りである。

だが、この洋館が、一度水に浸かったと聞くと、見る目が変わってくる。

それは昭和28年、1953年9月25日。台風13号が紀伊半島東方を進み、志摩半島に上陸して本州中部を横断していった。この際、近畿各地に1時間100ミリ以上の雨が数時間続き、各地に大災害をもたらした。主な被害は、死者・行方不明者478人、全壊家屋8604棟、床上浸水家屋14万4300棟、流失家屋2615戸と記録されている。

この洋館のある地域では、川の流下口に流木が詰まって水位が上昇、洋館の1階部分が完全に水没するほど水がたまって湖のようになったという。洋館の住民は2階に避難していたが、家具や冷蔵庫など全部流されたそうだ。当時中学生だった現住人は、なんだか楽しそうに当時の様子を話す。ただ驚いたのは、水が引いた後、この洋館はびくともしていなかったということ。

だから、そのまま住み続けたのだそうだ。それから70年近く経っているのだが、古びてても特に住むのに困ることはないようだ。

近くで見ると、壁もみんな木材。基礎はしっかりしているが、とくに太い材を使っている様子もなく、よくぞ持ち堪えたと感嘆する。腐りも入っていない。今なら水没した家屋のほとんどは壁が落ちたり、構造材が緩んだり、建材が汚水を吸い込んだりして使い物にならないことが多いだろうに。

意外や洋館は強かった。大工の腕がよかったのか。木材は実は水に強いのか。そんなことを考えながら見学した3月11日であった。

 

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