完全な生態系は地球上で3%?
こんな記事があった。
ようするに、地球上で完全無欠な生態系は、陸地ではアマゾン、コンゴ熱帯雨林、東シベリアとカナダ北部のツンドラ地域、サハラの一部地域だけであり、その面積は地球上の3%にも満たないというのだが……。
なんか釈然としない。元記事は韓国で、それの翻訳がこなれていないのか……そもそものネタもとである「フロンティアーズ・イン・フォレスト・アンド・グローバル・チェンジ(frontiers in Forests and Global Change)」誌の研究論文の書き方がおかしいのかわからんが……。
で、元ネタ論文の「Where Might We Find Ecologically Intact Communities?」にも一応目に通す。
もっとも、英語で読み出したら頭が痛くなったので、機械翻訳に頼った(笑)。結局、こなれていない文で釈然としないのは同じ。
何を持って、「完全な生態系」としているのかわかりにくいのだが、人間の活動のない地域という意味らしい。それでは照葉樹林こそ潜在自然植生、潜在自然植生こそ本物と唱えるあのセンセイのあの理論と同じ発想ではないか。
人為がない状態を勝手に想定して、それと比べて現在は……と言われても困る。その人為の幅もわからない。1万年前の人類だって、地球の環境には影響を与えていただろう。マンモスを滅ぼしたかもしれないし、野焼きをしたかもしれない。そもそも人がいない状態って完全な地球上の生態系か?
そんな「完全無欠」な状態を想定して、その状態が保たれている地域となると、3%どころかゼロではないか。そもそもツンドラやサハラ砂漠を「完全な自然」とするんなら南極も加えるべきでは? あるいは人為的に破壊された部分で成長した動植物の生態系はどう判断する?とか、外来種問題だって、自然に起きた分布拡大と、人為的に種を移動させた場合の違いを区別するのも大変。外来種がつくる自然という見方も必要だろうし。
……等々、疑問が出るのだが、実はこの記事の後半で力を入れているのは、生態系の危機ではない。自然が人間によって破壊されてきたことは自明の理として、自然が棄損された地域に「ゾウやオオカミなど重要な種を再導入すれば、20%まで回復する」としつこく力を込めていることだ。この「重要な種」という概念もイマイチ怪しい。それを選ぶ時点で人為になりかねないじゃないか。
なんだ、これって日本でも一部でシカ害を防ぐためとして声高に唱えている「オオカミ再導入論」と同じではないか。
なんだか、「潜在自然植生」と「オオカミ導入論」という、どちらもカルトチックな理論の下支えをするような論文らしい。ま、原文を読むのを投げ出したからエラそうなことをいうのは本ブログ内だけにしておくけど(笑)。
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