「マンガ人類学講義」を読んだ
『マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか』(日本実業出版社)という本を読んだ。タイトルにもあるように、一応、マンガ。原作は奥野克巳、描いたのはMOSAという漫画家である。
実は著者の奥野克巳氏は、立教大学の教授なのだが、以前に『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』という本を出している。これは、ボルネオの狩猟民族プナンをフィールドワークした本である。
私は、プナン族とは多少とも縁があるので、興味があった。何よりタイトルがすごい(笑)。ただ、実際には買わなかった、というか読まなかった。字ばかりだもん(^^;)。なんか読みづらそうだったのだね。ほかにも読まねばならない資料本が溜まっていたうえに、ボルネオとは少し距離を置いていたせいもある。
ちなみに私は、このブログ内で、かなりの回数プナン族について触れている。加えて著書にも登場してもらっている。せっかくだから、こんなインタビュー記事を紹介しておこう。
【インタビュー】森林ジャーナリストが追う、ボルネオ島で出会った“幻の民”やソロモン諸島の伝説
が、書店で、『マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか』を見かけて、おお、マンガなら読みやすい♪ と判断して購入したのだ。タイトルが少し違うけど、マンガ版だと思って。
いやあ、全然違ったよ。いや、本質は同じなのかもしれないが、『ありがとうも……』をマンガにしたのではなく、まったく別の意図で書き下ろしたらしい。それは、マンガでなくては示せない人類学の内容があるのではないか、という発想から「マンガ人類学」という分野を作ろうという試みだというのだ。
実はマンガ本と言いつつ、後半40頁ほどは文字のページがあるのだが、そこに人類学の歴史から「文字に囚われた不自由から自由になるために」という論が述べられているのだ。
う~ん。深い。マンガだからさっと読めるかという目論見はすぐに崩壊して、読み出すと眠くなる(笑)。寝る前に読んだら、途中で寝ている。いや、それほど内容が深いということだ。1章読むたびにいろいろ考えてしまって、全然進まない。
ああ、すでに、この本の内容を紹介する自信がなくなった。一つ一つは実に深いのだ。森の民の思想というか哲学というか世界観というか人生観というか。そうしたものが森の世界全体を描いているかのようだ。生と死、性、また「アホ犬会議」という章では、プナンにとっての犬の分類なのだが、そこから家畜としての犬とペットとしての犬の分化が語られる。
ともかく「森の民プナン」から、人類、そして人生を考えてしまう本なのであった。
※奥野氏の経歴が特異すぎる。。。
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