イノシシは北へ向う。探さないでください……
東北地方でイノシシが激増しているという記事があった。
「環境省の資料によると、イノシシによる農業被害額は19年度に東北全体で約2億7800万円。12年度の1億1400万円から2倍以上に増えた。イノシシが生存していないとされていた秋田では17年度に、青森では19年度に初めて農業被害が確認された。」「12年度に比べ、19年度のイノシシによる農業被害額が10倍以上に増えた山形県。」
イノシシが北上しているという話は、結構前から言われていたが、被害額も順調に?増えているようである。むしろ西日本では、イノシシ害は減少気味で、その代わりにシカ害が増えている。イノシシが減ったというより、シカが増えすぎたように感じる。イノシシはシカに追われているようにも思う。
さて東北にイノシシがいなかった理由としてよく上げられるのは、イノシシは足が短く、雪深い場所は移動できない説。あるいは雪に覆われて餌を見つけられない説。
しかし、GPSを使って調査してみると、雪の積もった土地も動き回っていることが確認されたそう。しかも温暖化で雪が減って、より動きやすくなったから北上してきたのだ……というわけだ。
しかし私は、そもそも「東北にはイノシシがいなかった」という前提そのものを疑っている。シカもそうだが、もともと生息していたのに、大規模な狩りをして追い払った可能性がある。また江戸時代には山は荒れて、棲めなくなったのかもしれない。
その証拠は、すでに多くの研究者が指摘している。たとえば青森の古墳からはイノシシ形の土偶が出土しているし、東北各地に「猪」「亥」の付く地名もある。八戸では、飢饉を「猪飢渇(けがち)」と呼んだが、これにはイノシシ害も含まれているようだ。つまり昔は東北にもイノシシがいたのではないか。雪も、東北より北陸の方がよく積もるが、イノシシはいる。福井、石川、新潟にイノシシがいるのはなぜだ?
決定的なのは、岩手県一関市の弥生時代の遺跡からイノシシの骨が出土していること。
つまり、昔から東北にもイノシシがいたのだよ。それが、近年(明治から100年ぐらい?)見かけなくなったから、「東北にはイノシシはいない」と思い込んでいたのだろう。
ちなみに生駒山は、50年ぐらい前に編纂された生駒市史には「イノシシはいない」とある。ただイノシシ垣はたくさんあったので、大規模な駆除でいなくなったとする。しかし、今やイノシシは普通にいる。いや、激増している。わずかな間に生息情報はひっくり返ったのだ。
外から持ち込まれた説もあるが、私は、どこかに生き延びた個体がいたのではないか説を取っている。それが、近年の餌の条件がよくなったので、増えたのだと睨んでいるのだ。
今年のタケノコ期待薄だな。。。
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面白いマンガを見つけました。田舎から東京に出て暮らしていたマンガ家がUターンで田舎に戻って、お金と食料として食べる肉のために猟師で稼いでいく話です。網にかかった鹿をバットで何度も殴って弱らせてから血抜きしたり、獲った鹿を解体するシーンが淡々と書かれていて、都会人にはちょっと怖いところもあったりします。
ご存じなければ、是非ご一読ください。
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投稿: 名無しさん | 2021/04/26 14:15
無料公開中の分をちょっと読んでみました。
なるほど、淡々と、ですね。狩猟マンガは最近増えてきたけど、初めて経験したドタバタなどのストーリーが多い中、わりと異色?
でも、イノシシやシカをあまり暴れさせてから殺したら、肉に血が回りおいしくないようなあ……とか考えてしまった(笑)。
投稿: 田中淳夫 | 2021/04/26 16:32
ふと思ったのですが、銃で頭を打ちぬくより、生きたまま動脈を切った方が血が抜けるのかも?と思ってしまいました。
考えてみると、いずれにしても残酷な話ですね。
投稿: 名無しさん | 2021/05/11 12:53
牙を剥くイノシシの首を掻き切る勇気があるならしてください(^o^)。
ただ暴れると肉質が悪くなるから、一瞬で殺す方がいいらしい。一発で仕留めて、すぐに動脈を切って逆さにつるす方がいいんじゃないですか。
投稿: 田中淳夫 | 2021/05/12 10:07