世界最古の木造建築……えっ?
奈良の佐保路にあるのは、古墳と自衛隊基地だけでなく古寺も多いのだが、海龍王寺はご存じだろうか。奈良時代以前からあると言われるのだが、光明皇后(聖武天皇の妻)の居住した寺だ。
わりと小振りなのだが、国宝がある。
五重小塔。西金堂内に安置されている塔で、どちらも天平時代の建築様式と技術がわかるという。奈良時代に作られて唯一残されている塔だから、木造建築に興味ある人には結構価値ある。2mぐらいまで近づけて肉眼で見られるし。西金堂なんぞは、触れるよ(^^;)。
しかし、五重塔でもっとも古いのは法隆寺では? と思って調べてみると、法隆寺は火事で焼けた(670年頃)あとに再建されたから、おそらく600年代の最後に建てられたはず。これは平城宮ができる直前だ。こちらは飛鳥時代の建立とするべきか。小塔はその少し後の天平時代ということになる。
が、その年代を確認していたら、とんでもないことがわかった。
世界最古の木造建築は、法隆寺ではなかったのだ!
なんと、それより1300年以上古い木造建築が発見されていた…… (゚o゚;) 。
それはトルコで発見された、ミダス王の墓だという。墓は地中にあったのだが、その中に木製の墓室が埋められていたのだ。埋葬品から、紀元前 8世紀の王族の墓であることが確認されている。墓室とはいえ、地中に埋もれていたとはいえ、木材を積み上げてつくった部屋であり、建築物扱いになる。玄室の中にあるのだから、棺桶みたいなもの? それって、建築物扱い? しかし、それを言えば海龍王寺の五重小塔も堂内にあるわけで、いきなりブーメランのように建築物の定義が襲いかかってくる。
発掘されたのは1957年とか。写真を見ると、丸太を横に積み上げた構造で、いわばログハウス。今から2700年以上前にログハウスがあったのか。ちなみに材質は、マツとビャクシンだったそう。
ミダス王は、ギリシャ神話にも登場する、触るものをなんでも黄金に変えた王。ほかにも「王様の耳はロバの耳」の逸話もある。それは伝説にしても、墓はその時代の王族のものなのだろう。
法隆寺、負けました……。軽々しく、「世界最古」なんて使わない方がよいですね。
ちなみに平城宮跡は、今も発掘調査が続けられております。そのうち、大発見! が起きますように。
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