アイデア勝負か、4パーミル認証制度?
以前、4パーミルイニシアティブと「地中の森」づくり という記事をアップした。
ここで山梨県の研修会の取組を紹介したのだが、なんと、その後山梨県は認証制度を作り上げたようだ。単に「研修」で済まさず、施策に綱崖のだから、立派。
まず「4パーミルイニシアチブ」を改めて説明しておくと、世界の土壌中に含まれる炭素量を年0.4%増やしていけば、経済活動などで排出される大気中のCO2を実質ゼロにできるという考えで、2015年にフランスが提唱した。山梨県は、この運動に参加していたが、果樹園で発生する剪定枝を炭にして土壌に埋めて炭素の量を増やす取り組みを考え出した。そして認証制度を創設したというのだ。もちろん全国で初めてだし、世界的にも認証制度まで広げたのは珍しいんじゃないかなあ。
もちろん山梨県が脱炭素社会に貢献しているという宣伝効果があるが、同時に果実のブランド化にもつなげる魂胆だろう。
認証の対象は、4パーミルに従って作られたモモやブドウなどの県産果実で、生産の開始時と開始後の2段階で発行する。そして
①申請から3年後に土壌炭素量の増加が見込まれる計画の提出
②1ヘクタール当たり1トン以上の年間炭素貯留量を確認
を条件とする。認証を取得した農家は、県が発行する認証ロゴマークをつけて果実を販売できる……という仕組みだそうだ。また農家に、無煙炭化器など専用機材の購入費用を補助するようにもする。
問題は、どのようにCO2削減量を計算するかだろうか。農家が木炭をどれだけ土中に埋める(散布?)したかの計測も裏付けが必要かも。
もちろん、現実にどの程度のCO2削減効果があるか怪しいし、前回も記したが、炭にするなら埋めずに熱利用を考えてもらいたい。むしろ効果としては、土壌改良効果の方ではなかろうか。炭によって土壌バクテリアがよく発達するから。
ユニークであることは間違いない。だいたい4パーミルイニシアテチブを日本で注目している人・組織は数少ないだろう。
本来は木材関係でもこの手の発想を取り上げてもらいたいものだ。森林内の土壌に枝葉とか落葉を溜め込むとかするだけなら簡単だ。農業以上に意味がある。
もはやCO2削減手段と、その実行を自身のアドバンテージとするアイデア勝負の時代なのかもしれないなあ。
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ミネラル分である灰ならともかく、分解されない炭を土中に埋めるとは…もちろん一定の効果はあるとは思うのですが、限度を超えないようにする制作も同時にとってほしいというのが正直な感想です。果樹からすれば畑の中に石が混ぜ込まれたような状態のはずなので。
投稿: 0 | 2021/05/28 19:48
木炭は、純粋な炭素の塊といってよく、分解しようがありません。しかも多孔質なので、そこにバクテリアなどが生息する巣になります。
木炭を農地にすきこむのは、わりと昔からの農法ですよ。
投稿: 田中淳夫 | 2021/05/28 23:35