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森と林業の本

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2021/05/17

「流域治水関連法」を知っているか

なんと5月中旬で梅雨入りしたそうだ。あまり大きく報道されていないが、流域治水関連法が先月28日に成立している。今年11月までに順次施行するそうだ。正式名称は「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」、かな?

また林野庁の「豪雨災害に関する今後の治山対策の在り方検討会」も、治山対策に関する報告書をまとめた。

どちらも昨今の激甚化する気候災害を意識したようだ。それだけに、ざっと目を通しただけだが内容はよく似ている。

まず前者は、河川法など関係する法律9本を一括で改正している。調べてみると、9本とは特定都市河川浸水被害対策法、河川法、下水道法、水防法、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律都市計画法、防災のための集団移転促進事業に係る国の財政上の特別措置等に関する法律、都市緑地法、建築基準法だった。
かなり大規模な改正だろう。ただ全部、国交省関係だけど(^^;)。

具体的には、自治体や企業、住民が協働して河川の流域全体で治水の実効性を高めることを謳い、浸水被害の危険がある地区の住宅や福祉施設の建築や盛り土を許可制・届け出制とするなど規制も伴う。そして避難対策が柱だ。これまでのような、ひたすら堤防だとか建造物で自然の力を押し込めようとするのは諦めたようだ。

またリスクの高い河川流域に農地など河川沿いの低地を「貯留機能保全区域」に指定して貯水機能を持つ場所を整備する。河川の氾濫をなんとしても防ぐというより、あふれても遊水池に受け止めることで、被害を最小限に抑える発想を取ったのだろう。

江戸時代の水害への対処法は、基本的に低水管理(あふれる水は流して貯水、人は避難する)だった。それが明治になって高水管理(堤防やダムで増えた水を抑え込む)へ転換した。被害は一切出さないゾ、という発想だ。ところが昨今の激化した水害は、もはやコンクリートを使っても抑え込めなくなっている。そこで、再び低水管理を取り入れるようにした……ように感じる。

これは治水に関して法律というより方針そのものの大転換ではないか? 役人に聞いたら「そんなことない、昔から両輪でやってきた」というに違いないが(笑)。

 

後者の林野庁の検討会では、「流域治水」に加えて山の保水力向上が、流域全体の洪水被害抑制につながると指摘している。これは提言だが、今後法律改正に結びつくことはあるのかどうか。

面白いのは、「木の本数や高さ、密度などを調べ、対策の必要性が高い地域を把握する」という発想か。
また森林整備と組み合わせて、土壌を流れにくくする「筋工」や「柵工」などを行うというのは、まだ崩れていない山に、この手の工事を行うことになる。ほかに小規模な治山ダムを階段状に設けるとか、砂をためる治山ダムを設置するべしとか……治山ダムとあるが、これは国交省からすると砂防ダムのことだろうなあ。山の景観としては喜ばしくないが……。

さらに流木になる危険性の高い木を事前に伐採することを提唱している。森林経営管理法にあって災害等防止措置命令の適用のことかもしれない。

とまあ、いろいろ想像してしまう。もはや気候変動に伴う豪雨災害には、従来の力の対策では間に合わないと方針転換をしたのか。それは結構なことだが、砂防だ治水治山だと言葉の違いを乗り越えて取り組んでほしい。

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生駒山にある、コンクリート部分を木材で覆った砂防ダム。

 

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