保安林解除を推進?再生可能エネルギーのため……
林野庁が、保安林指定の解除をやりやすくするマニュアルづくりに乗り出した。
ようするに地熱発電や風力発電、それにメガソーラーなど再生可能エネルギーを進めようとすると保安林指定された森林に引っかかることが多いが、そのため保安林の解除が必要になる。
現状ではちゃんと手続きを進めていくと1年ぐらいかかるが、もっと迅速化するための手引だという。必要な点を明確して書類づくりや事前相談をやりやすくするわけなのだろう。
保安林とは水源涵養だとか土砂災害防止ほかさまざまな用途に合わせて指定して、その用途以外への転換ができない。当然、地熱開発や風車建設やメガソーラー設置ができない。だから解除を申請するのだが、なかなか進まない理由として業者が不慣れというか手続き方法を知らないこともある。そこでマニュアルをつくって、手取り足取り早く「森林破壊」できるようにしてあげましょう、ということか。
これって、マニュアルづくりと言いつつも、指定解除に手を貸すことである。しかし林野庁なら、本来は抵抗すべき筋のものではないか。目的をもって指定したものを、業者の希望に沿って解除する手助けとは。しかも、解除された森林は、実質破壊される運命だ。木を伐らずに地熱開発も風車やソーパーパネルも設置できないのだから。
この調子だったら、バイオマス発電の燃料調達のための保安林伐採も進みそう。
これは、菅総理が進める二酸化炭素排出削減46%(2030年)達成のためになりなりふり構わぬ動きに出たとしか思えない。しかし、考えてほしい。こうして再生可能エネルギーが増えたとしても、結果的に森林を破壊すれば大気中の二酸化炭素は減らない。増えるかもしれないのだ。
先に生駒山の奈良県がメガソーラー計画の工事を差し止めた件を紹介したが、やはり国は推進したいのだ。
これは平群町のメガソーラー計画地。48ヘクタールがすでに切り開かれた(3分の1は残置森林だそう)。遠目に撮影したものだが、わりとはっきり切り開かれた部分が目に入る。ここにソーラーパネルを並べられたら、見事に反射して目立つだろう。
業者は一時的に差し止められても、すでに土地を購入しているし、かなりの資金を投入しているはず。簡単には引かないかもしれない。あの手この手で林地開発申請書の不備を直して再提出を目論むだろう。そこに国の省庁が手を貸す可能性は……あるな。ある。保安林ではないし、すでに伐採済だが、国定公園内だけに、さまざまな規制がある。加えて今回の差し止め理由となった排水処理や高圧電気の送電線など許認可がいっぱいだ。
アメリカのファンドは、政府内に人脈も築いているだろうから、奈良県に圧力かけるかもしれないなあ。
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保安林解除問題。
実は、指定される段階での地主の利益があり、固定資産税免除など。ただ、そこに、保安林として、適切な管理がなされているか?あるいは、管理が出来る状態にあるか?も問題です。保安林としての機能を維持するための管理です。メガソーラーは、私もさんせいでは、ありませんが、
投稿: 福田国弘 | 2021/06/30 09:36
保安林自体は、抜け道がいっぱいあって、伐採もできるし、そんなに規制は強くないはず。
それでも解除して行いたい開発とは、文字通り森林破壊でしょう。
投稿: 田中淳夫 | 2021/06/30 23:52