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森と林業の本

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2021/06/13

ほとんど知られていない国際的な「自然への誓約」

おそらく、この国際的な「誓約」を知っている人は数少ないだろう。私も最近知ったばかりだ。

リーダーによる自然への誓約(Leaders Pledge for Nature)」に対して、日本は賛同を表明したのだ。

この誓約は、昨年9月の国連生物多様性サミットの際にすでに提案されていた。すぐに70カ国のトップが賛同し、これまでに84カ国が参加。それなのに日本は、すぐに応えなかったのだ。G7の中では日本とアメリカだけが参加していなかったのである。

だが、現在開催中のサミットに先立って、菅首相がイギリスのジョンソン首相との電話会議した際に、参加を表明したという。5月28日のことである。

この誓約の内容は、2030年までの10年間で「生物多様性の喪失を反転させるための10の行動」を取ることを約束するものだ。抄訳は以下の通り。

1. 生物多様性、気候変動、環境問題全般を、コロナ禍からの復興(グリーン・リカバリー)戦略の中心に据える
2. 生物多様性条約締結国第15回会議(COP15)で採択される2020グローバル生物多様性枠組が野心的に進展させる
3. 生物多様性、陸域・淡水・海洋の劣化、森林破壊、汚染、気候変動への取り組みの縦割り思考を終わらせ、統合的に取り組むよう努力する
4. 持続可能な生産と消費、持続可能な食料システムへの変革にコミットする
5. パリ協定を野心的なものにするよう気候の国内目標を引き上げる
6. 生物多様性の喪失や気候変動への取り組みを台無しにするような環境犯罪を撲滅する
7. 食品、農林水産業、エネルギー、採掘、観光などの業界を横断的に、あらゆるレベルにおいて生物多様性を主流化する
8. 健康と環境の持続可能性に統合的に取り組む、あらゆる政策や意思決定においてワンヘルス・アプローチとする
9. 人々の福祉を地球の保護のために経済と金融を変革すべく、あらゆる資金的・非資金的な手段を強化する
10. 政策の決定と実施を科学に基づいたものにすることにコミットし、同時に科学と同様に伝統的な知識の重要な意義についても認識する

 

今、気候変動(少し前の言葉なら「地球温暖化」)は、随分と知られるようになって、それなりに行動原則も紹介されてきた。しかし、元を辿るとリオの地球サミットで提起された問題だ。そしてこの会議で取り上げられた議題は、実は「地球温暖化」だけでなく「生物多様性」もあった。どちらも森林が密接に絡むうえに、2つのテーマで毎年もしくは隔年の条約締結国会議が開かれている。SDGsなども、両方が含まれている。

ところが、日本では、あるいは世界どこでも同じなのか、生物多様性に関しては関心がイマイチ薄いようである。気候変動は、直接、気象災害など身近な話題に結びつくうえ二酸化炭素削減といった対応は産業経済や生活に響くのに対して、生物多様性は見えにくいからだろうか。

しかし今後は、生物多様性も気候変動と並ぶ二大テーマとしてクローズアップされていくだろう。

果たして菅首相はそのことに気づいているのだろうか。どうも本当に問題を理解しているのか疑念が湧く。気候変動さえ、本音では興味の埒外にあるように感じるが……(それでも世界が騒ぐので、しょうがなしに温室効果ガスの46%削減を宣言してしまった。)。
今回も、官僚の後押しで、ジョンソン首相を喜ばせようと「誓約」に賛同してしまっただけのように感じる。

とはいえ、今後は両2つの環境問題のテーマに沿って経済・金融の変革など本気で行わなくてはならない。国際社会の行動原理に加えられたのだから。そして行動そのものも加速していく(日本的には、加速させられる)だろう。気をつけないと、また日本だけが置いてきぼりになりかねない。

 

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