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森と林業と田舎の本

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2021/07/11

「安いニッポン」~日本が売るべき「林業」

『安いニッポン~「価格」が示す停滞』(中藤玲著 日経プレミアシリーズ)を読んだ。

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タイトルで、ほぼ中身がわかる。とにかく日本の物価が異常なほど安いことを示している。そして、それこそが経済低迷の主要因なのだ。
帯文にあるとおり、アメリカでは、年収1400万円の人材は「低所得」に分類されてしまう。そして世界中のディズニーランドでも日本は破格に安い(でも、日本人には高く感じる)入場料とか、給与の実態が示される。

ダイソーショップに関しては、100円均一なのは日本だけで,台湾が180円、中国本土160円、マカオ200円、アメリカ160円、フィリピン180円、タイ210円、イスラエルにいたっては320円……。中国製品も多いのに、中国の方が高い(-_-;)。

ようするに世界中で物価は上がり続けているのに、日本だけは横ばいから下降気味だから。この物価安こそ日本経済の停滞の象徴なんだろうが、なぜ安いかと言えば、安くないと買わない消費者の存在があり、安くするために社員の賃金を安く抑え、社員の収入が低いということは消費者の収入が低いことになる。だから安くないと買えないわけだ。

私が目を見張ったのは、『崩れる日本のお家芸「アニメ」』の章である。

今、日本のアニメーターがどんどん中国企業に引き抜かれているらしい。中国ではアニメ市場が爆発的に広がっているが、まだ人材も技術も足りない。そこで日本にアニメ製作会社を設立して日本のアニメーターを雇うのだが、給与は3倍以上、休暇など待遇もよいところが多いらしい。これなら、こぞって転職するわな。日本のアニメ製作現場の劣悪さはことに有名だもの。やりがい搾取の最たるものだ。
そして中国企業傘下でアニメをつくれば、日本だけでなく中国全土、世界の中華世界全域にまで通用する。市場規模が全然違ってくる。

これは、喜ぶべきことだ。ひどい雇用環境を打ち破る契機になる。日本のアニメーターは全部、外資に転職すればよいのではないか。そして中国アニメ制作会社の下請けとして作品をつくり、それを日本が買えば(買えたら)いい。日本語で、舞台も日本のアニメでよいと思う。

同じ理屈でネットフリックスでは、ドラマ制作費が日本の何倍も出る、しかも制約が少ない。日本では自主規制とかスポンサーの意向でつくれないテーマの番組もつくれるというのだ。

そして、ここからが肝心なのだが、私は林業も同じになったらよいのではないか。外資が日本の森を奪う、なんてデタラメ並べて騒いでいる場合じゃない、外資に売るべきなのだ。ただし、山や森を売る必要はない。というか売れないだろう。売るべきは素材生産業界である。

中国だけでなく欧米の外国資本と経営陣で素材生産会社を設立してもらう。日本人の林業技術者を給与は3倍ぐらい出すと言えば優秀な人を引き抜けるだろう。働く舞台は地域に縛られる必要はない。日本全国を機動的に動くのだ。経営トップは、山主に対しても立木価格を2倍にすると宣言して営業すれば、十分に施業地を確保できるだろう。

肝心の木材の売り先は、従来の木材流通なんぞすっ飛ばして建築業界、あるいは施主などエンドユーザーと契約を進める。製材、プレカットなどは賃挽きにする。使い道を先に決めるのだから、木材に無駄が出ないし、各施業や工場稼働も計画的にでき閑散期がなくなる。在庫も消える。営業コストも浮く。これなら流通マージン(というより流通ロス)をカットできて、賃金や立木買取に高値を出す資金も調達できるだろう。また高級材は海外へ送ってもよい。販路開拓は、国際的に行うのだ。ファイナンスは、たとえば施主の住宅ローンを担保にして調達するという手もある。赤字になりそうになっても、日本は補助金があるから心配いらない(笑)。

ちなみに過剰伐採の禁止や再造林の実施なども事前計画に組み入れて、第3者が監査する制度をつくればよい。日本の業者より真面目にやってくれるだろう。いや、その前に日本の企業の大半が失格するだろう。再造林を真面目にやっている業者なんて、日本では3割ぐらいだから。外資の方がよい森づくりをしてくれるはずだ。
日本の資金が海外流出する? なに、日本人を雇用し、賃金を高くするんだから、税金もたくさん払ってくれる。今より税収は増えるだろう。

山主も従事者も製材業者も喜ぶはずだ。誰も困らない……素材生産業の経営者以外は。いや、真面目な経営者なら外資に負けないよ。真面目な経営者なら。

林業界は、やりがい搾取が甚だしい。だいたい現在の林業に不満を持って愚痴ばかり言っている人ほど、この業界から離れない。賃金が低くても、理不尽な仕事が多くても、林業をやりたい、と言う人が少なくない。それに付け込まれていることに気づかないから、経営者がやりたい放題になるのだ。

「安い林業」から脱出するには、もはや外資に期待するしかない。巨大資本で業界をぶっ壊さないと変わらない。

 

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コメント

なるほど。先に年金を林業につぎ込むことを笑われましたが、本当は笑われる以上の悪手なのかもしれませんね。生き方を根本から立て直す時間が残っているだろうか。

これからは、趣味の林業とプロの林業を分けて考える必要がありそうです。

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