ニュージーランド産りんごについて考える
このところ果物売り場で目立つのが、ニュージーランド産りんご。
よくよく観察すれば、ものすごい勢いで増えている。売れているのだろう。
しかし、日本はりんご王国だ。その品質で輸出農産物としても注目株。それなのに外国産りんごがこんなに輸入されるなんて。
というわけで、ニュージーランド産りんごについて考察してみた。
実は、私はニュージーランド産りんごをわりと古くから食べたことがある。最初はソロモン諸島かパプア・ニューギニアだったか、市場で見かけて、つい購入してみた。輸入物であり、冷蔵されたものである。
日本に輸入されるようになったのはほんの数年前らしい。それが急速に伸びている。味は……以前(日本で)食べたが、あまり覚えていない。不味くはなかったが、印象に残るほど美味くもなかったと思う。やはり日本産りんごの方が美味しい。
値段は、5個入りで600円前後ということは1個100円以上。少し安めだが、小ぶりなりんごだから、そんなに低価格が売り物でもなさそうだ。なぜ売れるのか? JAZZとある。日本にはないが、もしかしてアップルパイとかに向いた懐かしい味?
小ぶりなのがいいのかもしれない。昔は、日本のりんごも小ぶりで、そのままかぶりつくのが好きだった。しかし最近の日本のりんご品種はいずれも大型化が進んでいる。かぶりつけないし、量的にも一つ食べられるかどうか。甘いのは美味しく感じるが、甘い果肉はあまり大量には食べにくい。それに色づきを気にしすぎて、袋掛けをするなど手間をかけてコストを上げている。
ニュージーランドのりんごを見ていると、日本の農業が袋小路に入っているのかと考えさせられる。真の消費者の需要をつかむべきだ。
そうした日本産にはない需要をつかんだのか。そもそも日本のりんごは高品質に走りすぎかもしれない。気軽なフルーツでなくなりつつある。
そして、大きな違いがあった。日本のりんごは秋から冬だった。春から夏は稔らない。今出回っているのは、冷蔵ものだ。が、ニュージーランド産は今が盛りである。もちろん生。かつて冷蔵りんごを食べたときの味気なさを引っくり返してニュージーランド産の強みになる。南半球の強みを最大限に活かしたか。
ニュージーランドと言えば、キウイフルーツの国だが、そのほかワイン、そしてニュージーランド松ことラジアータパインも国の政策として売り出し中だ。いずれもニュージーランド原産ではない。
キウイフルーツは、中国原産の果実を品種改良して、ニュージーランドのシンボルである鳥キーウィにちなんでという名付けたものだ。アメリカ経由で日本に入ってきたと聞く。ちなみに日本にも原種に近いサルナシが山に生える。
ラジアータパインも、原種はアメリカ大陸東海岸だったよう。モントレーパインと呼ばれることもあるのは、その地名からだ。樹の成長の早さは魅力だが、それだけで成功したのではない。徹底的なコスト管理と工業的な栽培方法を取り入れ、システマチックな出荷によって世界の木材市場に食い込んだ。
ニュージーランド政府は、地元の種ではない農林産物を上手く育て上げて、輸出産品にすることに長けている。逆に日本は、品質ばかりに気を回しすぎて、販売戦略があるのかどうか。あげくに農家が減少の一途だ。そのうち日本でも、りんごと言えばニュージーランド産になる時代が来るかもしれない。
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