総務省がバイオマス発電の影響を調査
総務省が、30日に木質バイオマス発電に関して、製紙業などの木材需給への影響を検証するよう経済産業省と農林水産省に要請したというニュースが流れた。製紙原料の国産チップがバイオマス燃料に回ることで、調達費用が上昇するなどの影響を懸念しているらしい。
これ、各省庁などの政策評価の調査の一環だというのだが、ちと面白い。
このところ再生可能エネルギーに対する風当たりが大きい。メガソーラーしかり、風力しかり。しかし私は、最大の問題はバイオマス発電だと思っている。メガソーラー設置や風車建設では、山林を切り開くことが問題だが、それは開発する最初だけだ。バイオマス発電では、その面積分の山林を毎年切り開いているようなものだからだ。それほど莫大な木材を燃料としている。山林を破壊して、何が脱炭素か、と問いかけたい。
それも最近では近くに木がなくなって遠方からの移送が頻繁になり、輸送のための温室効果ガス排出量をかえって増やしている。もちろん輸入燃料の使用も脱炭素にほど遠いし、海外の山を破壊しているだけだろう。
もちろん、風力では低周波とかバードストライクもあるし、メガソーラーもほかにさまざまな害を及ぼすことが指摘されるが、それらは設置場所や方法の問題である。
私は小規模分散で、たとえばソーラーも建物の屋根や遊休地などへの設置なら歓迎したい。何より気候変動防止のための脱炭素の問題は焦眉の急なのだから。なんとしても二酸化炭素排出を減らさないと、どこぞのメンバーは再び原子力発電に頼るべしと言い出すだろう。(もう言っているか。再生可能エネルギー批判を喜んでいるのは、実はそうした原発推進勢力である。)
だが、菅総理が脱炭素化に向けて舵を切る発言をしたことから、再生可能エネルギーの増強、なかでもバイオマス発電の拡大が見込まれる。
経産省のエネルギー基本計画の改定案では、2030年度の電源構成に占める再生可能エネルギーの比率は36~38%(現行計画は22~24%)だが、バイオマス発電もなりふり構わず増やさないと達成不可能だろう。
ただ、「製紙業への影響」という点に調査を絞っているのは、総務省の遠慮が透けて見える。たしかに製紙用チップ(C材)が、バイオマス燃料に持っていかれてしまう現状は問題なのだが、根本の脱炭素に当てはまるのかどうかを検証しようとは思わないのだろう。それをやると、すべての再生可能エネルギーのパンドラの箱を開けるかのような騒ぎになるから。
それに、調査を「両省への要請」だから、自分で行うわけではない。果たしてどんな結果を示されるか。両省が問題あり、と指摘すれば、自ら推進してきたバイオマス発電の足を引っ張ることにもなる。
昨日も見てしまった、大規模皆伐地。これで何ヘクタールあるかねえ。こんな山が増えていく。
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木質バイオマス発電については、未利用材を燃料とする事により高い売電価格を目指しているのですが、建築用材の原木価格が高騰している影響でなかなか針葉樹だけでは予定量の集荷が厳しい状態と聞きます。そこで、森林経営計画地内の広葉樹に狙いが変わって来ています。。しかし、大型重機を用い化石燃料を焚いて行う作業はエコには程遠い作業…カーボンニュートラルと言う訳にはいかないでしょうね。しかも広葉樹の伐採費用は針葉樹伐採費用の数倍はかかると思います。
私は家の屋根の上にソーラーパネルを設置し、売電は行わずに独立した電源として使用する事には賛成です。しかし、わざわざ災害のリスクを背負い、山林を切り開く事には賛成できません!
今年になってから、ウッドショックによる原木価格の高騰により、私の地域でも皆伐施業が多くなってきています。降雨の度に泥水が流れ出る事に下流の地区の人々は恐怖を感じています。30年以上ぶりの高価格の続くうちに出せ!チャンスだ!とばかりに集水域を考えない施業地が増えています。次は災害列島になるかも知れません。
投稿: 山のオヤジ | 2021/08/01 18:27
ウッドショックを理由に皆伐しているんですか?
あまり関係ないように思いますが。みんな便乗じゃないかなあ。皆伐に文句言われないように。
いずれにしろ、本気で二酸化炭素排出削減を考えているのなら、バイオマス発電は怪しすぎますね。
投稿: 田中淳夫 | 2021/08/02 15:21