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森と林業の本

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2021/08/31

林業界は福祉業界と一緒?

先日、某大学の建築学系の教授と会った。実は20年ぐらい前にまったく別の縁で知り合っていたのだが、久しぶりの再会。

なんでも、今や建築学の世界は木造が何かとテーマになっているのだそうだが、イマイチ木材業界、林業界の世界がわからない、というのだ。そこで私にお尋ねにきたわけ(^o^)。

まあ、雑談的に日本の林業-木材業界がどんな構造になっていて、それがこんな展開をしているのであんなヘンなことも起きる……と、私も語ったわけだ。ちょうどウッドショックも起きているから、その裏側の事情を解説したりもする。

そこで言われたのが、「福祉業界と同じだな……」。

これをどう解釈する? 社会的意義は高くて高邁な理念に貫かれているけど、実態経営は補助金で成り立っていて、経営者はウハウハだけど現場で働く人の待遇はガタガタで、それでいて「オレたち、立派なことをしているんだから、みんな応援しろよ」「なんで理解しないんだ。オレたちかいないと困るだろ? もっと金出せよ」って思っているところ?

林業も、最近は環境産業ぽく見せかけている。森林を守るために必要なんだ、地球温暖化を防ぐために必要なんだ、といいつつ、皆伐して森をなくしている(笑)。補助金をもらうのが当たり前で、補助金出なけりゃ仕事しないぞ、と逆脅しをかける。

いえ、私はそんなこと言っていませんよ(⌒ー⌒)。ただ紹介した現場の事例を聞いて、そう読み取ったんでしょう。私は、福祉業界と同じと言われたら、福祉の現場が怒りそうな気がする。少なくても福祉業界は絶対に必要だが、林業はなければないで何とかなる。

ただ似ているところはあるだろう。補助金や雇用実態もさることながら、どちらも受け身だ。福祉を必要とする人がいて、それに対応するための業界と、森林があってこその林業。自分から打って出る気概が弱い。しかし決定的に違うのは、福祉を必要とする人がいなくなれば、それは本来バンザイなのだ。しかし森林がなくなったら林業がなくなることで地域社会は崩壊しかねない。逆に言えば、林業がなくても森林は存在する。

「人が手入れしないと荒れる森林」なんて、嘘っぱちだ。森は森で人がいなくても存在できる。人の目からは荒れているように見えても、その環境に適した動植物がいて、しっかり生態系を形成しているものだ。また建築も、木材がなくてもなんとかなる。

建築業界は無から有をつくるような仕事だ。受け身ではおられない。着工件数が減ったら自分たちで仕事をつくろうとしている。だから受け身で流されっぱなしの林業界が不思議に見えるのかもしれない。

それでも建築側から木材に目を向けてくれているうちはいい。……林業側はどう受けて立つ? 建築と林業が本気で切り結ぶことはできるだろうか。

 

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

「何がエッセンシャルワーカーだ」ワクチンを打ちたくても打てないトラックドライバーたちの嘆き…の記事も読みましたが…
「君たちの仕事は生活において必要不可欠なもの。君たちの仕事は尊い。素晴らしい!」と持ち上げられて薄給で過酷な作業を行う介護職やドライバー職の方々は林業従事者に似ている様な…
人々に快適な生活を与える役目を持つ者が1番多く対価を受けるべきなのですが、やり方が下手なんでしょうかね。
建築の側から木材…国産材に目を向けてくれるのであれば、喜んで応えたいと思いますよ。有り難い話です。
ウッドショックとやらは、国産材木材業界の仕組みをコロッ!と変えるチャンスだと思っています。
まずは、話してみたいですね。

言い方は悪いですが、どちらも手に負えなくなったものを専門業者に任せきっているのは一緒かもしれません。もちろん同じ土俵で評価はできませんが、福祉業界だって家族だけで介護ができるなら必須では無いですし(現代ではほぼ無理ですが)、林業業界だって自伐林家が増えてきて補助金使わずに成り立てば(林業だけは無理でしょうけど)いまのような林業のスタイルは不要です

エッセンシャルワーカーも声を大にして訴えるべきですね。よく災害現場で被災者が「私は大丈夫です」と答えるシーンがあるのだけど、そう言われちゃうと、支援できなくなる面もある。

林業も自伐でできるならそれがいい。基本、副業で成り立っていると思えば、農林複合でも林福複合でも、なんでもいいから本業と、ときどき林業の形態で行える。ヨーロッパにはそんなところが多いんじゃないかな。

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