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2021/08/07

「現場主義は麻薬」

朝ドラ『お帰りモネ』を見ているが、あんまり面白くない。気象予報の世界を多少かいま見られる点はよいとして、主人公が真面目すぎてつまんない(笑)。ま、朝の惰性でテレビをつけているが。

ただ昨日だったか、「『あなたのおかげで助かった』という言葉は麻薬」というフレーズが出てきて、思わずにんまりした。

いや、このドラマがどうだと言いたいのではない。全然関係ないフレーズを連想したのだ。それは「現場主義は麻薬」である。

マスコミの、それも報道的な仕事をしていると、現場を訪ねること、見ること、話を聞くことの重要性を繰り返し訴えられる。私も若い頃から自身に言い聞かせてきた。そして「現場を知らないと、わからない」という論調を信奉する。

が、今の私は鼻先で笑っている。そして思うのは「アホは現場を見てもわからない」。

念のためだが、現場を取材することが無駄なんではない。いや現場は大切だ。現場を踏まずして取材にはならないのは言うまでもない。ただ現場は必要条件であって十分条件ではない。現場でわかった気になることが危険なのである。

現場を訪ねると、何だか他人の知らないことを知った気になる。情報より体感が重要になる。そして現場で知ったことは正しいと思い込みがちだ。ドラマ内のセリフ的に言えば、「単純に(現場を知らない人より優位に立った気がして)気持ちいいでしょう」となる。

それが局所的な事件だけを追いかけているのならそれでよい場合もあるが、社会現象的なものを読み取ろうと思ったら、自分の訪ねた「現場」の圧倒的なリアリティに飲み込まれてはダメだ。自分が見たから、自分が聞いたから、正しいと思い込む落とし穴に落ちる。

それはオレは幽霊を見た、だから霊魂は存在する。オレはUFOを見た、だから宇宙人は地球を訪れている、というのと変わらない。だいたいフェイクニュースが蔓延している世の中で、「自分が見た」ことの信憑性はどんどん下がっている。
それに現場に行っても、あらかじめ想定した結論に誘導することも無意識に行いがちだ。いわゆる認知バイアス(都合のよい情報だけを集める・都合の悪い情報は聞かなかったことにする)に囚われる。本来は事前の情報と違うものを見つけなくてはならないのに、意外とそれが難しい。

現場取材で話を聞けるのは、せいぜい数人。それで世界を語るなよ、ということだ。数百人ぐらい取材したら、統計的な意味も出るだろうが。
それに、見た(聞いた)内容から真意を読み取る力も重要なんだが、実は視覚や聴覚・触覚などのインパクトが強いと中身の吟味が難しくて表面しか見えなくしてしまう。これも無意識のバイアスなのだろうか。

たまに、たった一回の取材で裏に隠された本質を見抜く目の持ち主もいる。そういう人は莫大な背景の知識を持っているのだろう。そして自分を突き放した視点がある。だから正反対の情報・意見も網羅し、現場でも世間の常識と違う情報を積極的に探す。自分の意見さえ信じず、あっさり引っくり返す。

……だんだん話が大きくなってしまったが、ここで報道論や取材技法を語ろうというのではない。ハマる、ということの危険性を感じるのだ。いかに客観的視点を維持しつつ論理的思考を行えるか。最近、そのことを模索している。そして。

往々にして、真面目な人間ほど麻薬にハマるよなあ、と永浦モネちゃんを見て思ったの(笑)。

 

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