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森と林業と田舎の本

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2021/08/06

森林は二酸化炭素を吸収する?排出する?

こんな記事が出ている。

アマゾンの熱帯雨林は現在、吸収量より多くの二酸化炭素を排出している。ブラジル研究チームが発表

ブラジル国立宇宙研究所が率いる研究チームは2010年から2018年に掛けて、アマゾンの熱帯雨林の上空4.5キロの高さで、約600回にわたり二酸化炭素濃度と一酸化炭素濃度を測定する調査を行った。その結果、熱帯雨林は吸収量より多くの二酸化炭素を排出していることが判明した。その量は年間10億トンにも上るという。また、アマゾンの熱帯雨林の東部は西部より二酸化炭素排出量が多く、特に南東部は大幅に増加していることが分かった。

問題は、その理由だ。実は以前にもおなじような記事を紹介した記憶があるのだが……そちらとは理由が違う。
前回は、気温上昇によって、植物の光合成能力が落ちる一方で呼吸量が増えて、二酸化炭素の排出の方が吸収より増える、というものだった。

今回の元ネタは「ネイチャー」であるが、ようするに森林伐採と野焼きを原因としている。そして森林の減少が雨の減少につながり、気温が高くなることで森林の劣化が進む……という指摘もしている。

実は、もう一つの「森林は二酸化炭素を排出」論がある。その研究は複数あって、どこに論文があるかすぐには見つけられないのだが、理屈は簡単。気温が上がると、土壌中の有機物の分解が早くなる、ということだ。これは熱帯より温帯、亜寒帯の森林に言える。なぜなら腐葉土として多くの有機物(炭素)を土壌に溜め込んでいるからだ。それをどんどん分解されたら、植物の吸収する二酸化炭素よりずっと排出の方が多くなる。つまり地上は吸収源の森林が、地中で排出源になるという、そして排出量の方が多いという状態。

結局、3つの理屈より、森林が排出源になることはあるわけだ。アマゾンのような熱帯雨林では、そもそも土壌内の有機物はすぐに分解されているので、改めて増えるほどではないかもしれないが。

そして、それぞれの効果の有意性に関しての科学的評価は私の手に余るのだが……少なくても「アマゾンは地球の肺」なんて言葉は使わない方がよさそうだ。

本当は日本の森林のケースはどうなのか。とくに人工林は、二酸化炭素の吸収と排出のどちらが多いのか。どこかに計測した研究はないだろうか。私は日本だって怪しいと思っているのだが……。

1_20210806160101

写真は、腐葉土をひっぺがしてみたら、白い菌糸がいっぱい広がっていて、落葉を分解していたもの。菌類は森の分解者としての役割を果たしているんだが、この過程で二酸化炭素を排出しているんだろうなあ。

 

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コメント

森林炭素交換におけるタワー観測を高精度で長期間継続しているのは、京大農学研究科森林水文学研究室の小杉緑子教授のグループだと思います。
滋賀県の桐生試験地のヒノキ林では、平方メートルあたりの年間の炭素輸送量の単位で7年間平均を表示すると、光合成総生産量が2100g、生態系呼吸量が1500g、その差で表される正味固定量で600g程度になります。
四手井綱秀先生や吉良竜夫先生の始められたマレーシアPasoh試験地の熱帯雨林でも、小杉先生が長期観測されていて、7年間平均での総生産量も呼吸量も3100g程度で、わずかに数十グラム程度固定しているという結果のようです。Pasohは熱帯雨林としては比較的雨が少ないですが、樹木の光合成と呼吸は安定している一方(木はしぶといのです)、微生物は雨季で活発乾季に不活発なので(好景気のときに数が増えてCO2を放出するのです)、炭素固定量が乾季に多いような傾向が生じます。
桐生:https://link.springer.com/article/10.1007/s11284-012-1019-4
Pasoh:
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1007/s10310-010-0235-4

専門的な点をありがとうございます。
私は森林を吸収源とする考え方を否定するほどではないのですが、イマイチあやふやなまま使われていますね。そして、二酸化炭素削減方法にも森林をフル活用しようとしている。

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