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森と林業の本

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2021/09/01

熱帯では苗の根が土に届かない!

インドネシアの巨大製紙企業の日本子会社・エイピーピー・ジャパン株式会社(APPジャパン)から、時折ニュースレターが届く。

今回は、インドネシアの森を再生する「森の再生プロジェクト~いっしょにSDGsに取り組もう!~」の話だった。そこでは昨年末から今年始めにかけて、5ヘクタールに2500本の苗を植え、さらに10 ヘクタールへと広げているという。

そこで植えた苗は、絶滅危惧種に指定されているラミンを含む4種類とのこと。ラミン(ジンチョウゲ科)は、熱帯材として有名なラワン(フタバガキ科)と並んで人気の樹木だ。あまり大木にはならないらしいが、色が黄白色で美しく家具材などに使われるため一時期多く伐採輸出されていた。日本でもホームセンターによくあった、らしい。それが、今や絶滅危惧種になる有様である。

まあ、こんなに環境に貢献していますよ、という案内である。ご存じかどうかAPPと言えば、一時期は熱帯雨林の破壊者として名を上げ?、原生林を丸裸にしていると騒がれた。今もその名残の攻撃は続いている。

果たしてAPPは、心を入れ替えて地球環境に貢献するようになったのか、あるいは陰でまだまだ森林破壊を続けているのか、それは私にはよくわからない。

ただ、今回のニュースの中で私が「ほお!」と思ったのは、植えた苗の20%が枯れてしまったと報告があった、と伝えている点だ。植林をしているのは、ベランターラ環境保護基金であるが、そこの報告では、枯れた原因の一つに「根が土に到達できなかった」ためだということ。

え、苗は土に植えるのではないのか、と日本的な感覚では考えるのだが、インドネシアではどうも違うらしい。

まず植林前に下草を刈り取るが、インドネシアの泥炭地帯では、下草を刈ってもその下に土があるわけではないというのだ。
すぐ下には枯れた枝葉が堆積している層があり、その下に土がある。成長の早い雑草なら、種子でもあっという間に堆積層を突き抜けて根が土に到達するのだが、植えた苗木、特に成長の遅いラミンは、根が土に到達する前に養分を取り込めずに枯れてしまうのだという。

枯れた枝葉と言えば、なんとなく腐葉土を頭に浮かべるが、植林はそこで穴を掘らずに苗を「置いた」のか?

そうした細かな点はわからないが、植える作法もいろいろあるのだろう。ちなみに私はラワンの一種(メランティ)の植林を見学したことはあるが、ちゃんと土に植えていたけどなあ。

ともあれ、このラミンの植え方についてはこれまでわからなかったらしい。日本でも、スギやヒノキ、マツなどの植え方は確立しているが、広葉樹には謎が多い。種子からして、なかなか手に入らないし、それを発芽させるのも大変。苗になってからもどの木はどんな植え方をするのか、知らないものも多いのではないか。

今、早生樹として人気のセンダンも、実は種子をそのまま蒔いても発芽しない。自然界では鳥に一度食べられて消化管を抜けないと発芽しないのだ。それを植林するとなると、果肉を取り除くなど苗づくりから一工夫いる。

ちなみにインドネシアの現地では、その後、枯れた苗はすべて植え替えて、現地では植えた後のメンテナンスを注意するようになったという。おかげで、今はどの苗も元気に成長している……とのことである。

 

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