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2021/09/24

肉厚マダイと木づかい運動

一部で話題になっている「肉厚マダイ」。

ゲノム編集~ようするに遺伝子改変技術~で、通常のマダイの1・5倍肉厚、つまり太ったマダイが京都大学や近畿大学によって作られている。もうすぐ量産化が可能になって市場にも出てくると言うのだが……。

京大発、「肉厚マダイ」参上

Madai002

実はこのニュースをよく読むと、マダイだけではない。トラフグを短期間で育てる技術も完成しているらしい。

この手のニュースが流れると、即「気持ち悪い」とか「遺伝子改変なんて危険」という感想が飛び交うのだが……。まあ、食べ物が豊富な国の住人の我が儘みたいなものか。余っているから選べる。美味しい、美味しそうに見えるとか(気分の)安全・安心とか、ようは感覚的な面で選べる立場とだから言えることだろう。

昔から食料危機への対処は永遠の課題だが、実は今や「食あまり」の時代になっているようだ。

世界人口の伸びは鈍化しつつあるが、まだ当分は伸び続けるだろう。現在は70億人とか言われているが、100億ぐらいまでは行きそうだ。私が小学生の頃は30数億人ぐらいだったと記憶するので、もはや2倍になっている。当時から、盛んに食料危機が言われていた。マルサスの「人口論」を持ち出すまでもなく、食料生産は人口増に追いつかない……というのが定説だったから。

だが、実はその定説は崩れた。今は食料の伸びの方が人口増より大きいと言われている。

世界の穀物生産量は約22億トン。だが、およそ半分は飼料用とエネルギー用だ。穀物が余るからバイオ燃料に転換している。
同じく牛肉や豚肉、鶏肉などは、50年前の3倍も生産されている。それは養殖水産物にも言える。

別に農地が増えたわけではない。それどころか耕作放棄地が世界的に増えているのだ。耕地の5分の1が耕されていない。貧困国でも農民は農地を捨てて都会に出ていく現象が続く。実は、食料は生産過剰だから価格が下がり、農民たちは「やってられん」わけなのだ。
食肉も、家畜の飼育頭数が増えたのではなく、大きく早く育てる技術が生まれたからである。1個体から採れる肉の量が増え、しかも成長が早いから回転も速くなる。肉なんて切り身しか目にしないから気がつかないが、ウシもブタもニワトリも、ひと昔前より確実に大型化している。魚介類も天然ものよりずっと大きく早く育てているのだ。

もちろん品種改良や肥料、さらに病害虫を抑え込める農薬・除草剤、家畜用医薬品の発達も、寄与している。その流れの一つが、「肉厚マダイ」なのだろう。

今、世界では8億人が飢餓線上にいると言われるが、それは食料が足りないのではなく、届けないからだ。必要な人のところに食べ物が届かないことが引き起こすのだ。それは流通と政治の問題だろう。

そして木材も生産量が増えている。早生樹のような早く太く育つ樹種・品種づくりが進むだけでなく、これまで使えなかった細い木材も集成技術の進歩で太い建材にすることができるようになった。柔らかくて使えないと思えた樹種も、改質することができるようになった。木材が余っているから「木づかい運動」とかいう、奇天烈な木材もっと使え運動が展開されている。木づかいではなく、木あまりなのだ。

木材も、森林蓄積は世界的に増しているのに、需給バランスを崩した経営ミス、流通御簾、そして政治システムの問題だろう。ウッドショックは、木が余っているのに供給できずに価格が高騰するというおバカな事件であった。

さて、肉厚のマダイや、早生樹の建材は、世間に受け入れられるだろうか。

 

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コメント

檜の木で他の木の数倍の太さに育っている木があった。調べたところそれは病気であるようだ。しかし、もし強度などに問題がなければこの病気にかからせれば短期間に太い木が育つのにと思ったことがある。

それ、面白いですね! 病気であっても木質さえよければ使える。アヒルの肝臓を無理やり肥大化させてつくる高級食材フォアグラみたいなものだ(笑)。

建材が難しくても、合板や集成材、あるいはバイオマス燃料にはなるかもしれない。早生樹を植えるより確実かもしれませんよ。

鶏肉に関しては完全にブロイラー以降のやわらかい味になれてしまっています。

鯛もそうなっていくのかなあ。

そのうち「身が締まったタイ」は美味しくないという表現になるかもしれませんぞ(^^;)。

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