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森と林業の本

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2021/09/09

草原ジャーナリストになる!はずだった……

東京農工大学大学院農学府農学専攻の沖 和人氏らの研究チームが、高圧電線の沿線下の環境には、多種多様なチョウが多数生息していることを確認したそうである。

高圧線に樹木が引っかからないよう伐採を続けた結果、送電線下がチョウの楽園になっていた

なぜなら、送電線の下は、草木が伸びて電線に触れたら危険なので、定期的に刈り取りをしているからである。つまり人工的な草原を作り出していたから。

もう少し具体的に紹介すると、
a:送電線下
b:幼齢の人工林(植栽直後)
c:林道(人工林内の道路)
d:壮齢の人工林(植栽から時間が経過している)

の環境における昆虫(チョウ)を調べたところ、合計62種2123個体のチョウを確認したそうだ。そして送電線下がもっとも多かったというわけである。

森林より草原の方が、ミクロの単位で見ると生物多様性は高いと思っていたから驚かないが、そこで思い出したのは、私がかつて「草原ジャーナリスト」に肩書を変えようと思っていたこと(笑)。
別に大げさな話ではなくて、森林の本ばかり書いていたら面白くないから、次は草原の話を書こう!と思い立ったというわけだ。そして自然草原だけでなく、放牧地や火入れによる人工草原などを訪ねて調べていたのだよ。

 Photo_20210909162601

わりと多くの取材をしたのに、結局はものにできなかったから、幻の「草原ジャーナリスト」に終わってしまった。

ただ、草原と森林と分けることの困難さというか、意味のなさも感じたんだよね。むしろ草原と森林が入り交じったモザイク環境こそが、自然界にはよい(生物多様性も高い)ということだ。それに草から樹木の群集へと遷移する・自然は変わり続けるということに気づいたことに意義を感じた。

そして日本では:草原は草を刈り取り続けることで維持される。刈った草は家畜の餌や堆肥に利用できる。これは、人為が入ることで自然を豊かにするという可能性にもつながるのだ。これ、2010年の愛知目標だとか名古屋ターゲットなどで唱えられたSATOYAMAイニシアティブの思想にもつながるのだが、私の方が10年ぐらい速いよ(⌒ー⌒)。

 

 

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コメント

送電線の下が、チョウの楽園!
いいこと、知りました(^o^)。

草原ジャーナリスト、いいじゃないですか。
草原の方が森林より生物多様性が高いというのも驚きです。

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