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森と林業と動物の本

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2021年10月

2021/10/31

研究員募集。「森のようちえん」はキテるか?

「森のようちえん全国交流フォーラム」から帰って来た。

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初日は青空の下で、ススキも気持ちのよい曽爾高原だった。そこで何を見聞きしてきたのかは、今後咀嚼していきたいと考えるが、せっかくだから、こんな話題を。

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森林総合研究所の求人(^o^)。正確には、

令和4年4月 研究職員募集のお知らせ (パーマネント研究職員)

パーマネントって……ようするに任期の定めのない、いわゆる正社員(職員)のことか。それはいい。そこの一覧には、いろいろな研究課題・テーマが載っているのだが、その三番目が、上記の写真。

森林における教育とそれに適した森林空間についての研究

環境教育の場としての森林の特徴を示すとともに、安全かつ効果的な環境教育に適した森林空間および周辺環境の要件と整備・管理方法を明
らかにする。そして、それらの成果に基づき、森林空間の特徴を活かした環境教育の先進的な方法を提案する。

森林における教育……なんとなく、いやそのものズバリ、「森のようちえん」を連想する(笑)。

こうした研究員を募集するようになったのかという感慨。もしかして、森林空間利用とか環境教育の分野で、「森のようちえん」はキテるのか?

2021/10/30

曽爾高原のススキ

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曽爾高原のススキは、今が盛りでした。人出もなかなか(^_^;)。

森のようちえん全国フォーラムの初日は、ほぼ終了。これから焚き火ナイトがあるとか。

予想していたが、関係者はみんな教育分野から入っていて、森林関係は今のところ出会っていない。なかなか新鮮である(^-^)。

2021/10/29

四校まで行った出版と「森のようちえん」

すでに発行を告知した拙著虚構の森

実は、あの時は再校を終えたので「我が手を離れた~!」とちょっと気分はハイになっていたのだ。後は出版されるのを待つだけ。だいたい、ここまで行くと、私の頭の中から本の内容は消えていく(^^;)。

が、実はその後に三校があった(゚д゚)。軽く目を通すだけのつもりが、つい全面読み直して手を入れる。これで、本当に終わった~。ところが、その後に俗に白焼きと呼ぶ印刷前のゲラでも直しが出たので実質四校に。

だいたい当初は、記事に登場する論文はタイトルだけ紹介してごまかすつもりが、全参考文献を列記しなさいというむごい?指摘を(編集者に)されたので、たまらん。専門書じゃないんだから。書籍文献はいいんだが、インターネット上で見られるものを再び探し出してURLを調べるのは大変なんです(泣)。だいたい、何という言葉で検索したのか忘れている。

結果的に、完全に私の手を離れたのが昨日という……。難産でした、いやまだ生まれていないか。

ようするにテーマが「異論」なので、それに関わる各種論文や私の理解力が試されたわけで。こんな本書くんじゃなかった、と(心の中では)ぶつぶつと。。。雑誌記事なら、間違いが見つかっても放置する(しかない)のだが、書籍となると後を引くからなあ。

ま、発行後「ここがオカシイ」と抗議?ツッコミがきても、「いやあ、それは異論だから」「そりゃ異説には間違いもあるわ」「だって、オレ研究者じゃないもん」という決めゼリフ?で逃げるだよ( ̄^ ̄)。

さて、頭の中はようやく明日からの「森のようちえん全国フォーラムin奈良」に切り換えよう。コロナ禍を乗り越えての開催なのだ。全然準備をしていないから焦る。

私は取材としての参加だが、もしかしたら今後「(森の)教育ジャーナリスト」を名乗るかもしれないし(⌒ー⌒)。

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写真は、会場になる曽爾村の曽爾高原。これは初夏の高原だが、今はススキの草原になっているはずだ。そうそう、私は草原ジャーナリストでもあるのだよ。

 

2021/10/28

Y!ニュース「オオカミより柴犬を放て…」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに『オオカミより柴犬を放て。獣害対策に有効なのは「放し飼い」』を書きました。

これ、最初は「ニホンオオカミはハイイロオオカミ(タイリクオオカミ)とは遺伝子的に離れていて柴犬に近い」というゲノム解析結果が面白くて、それを書こうかと思っていたのだが、どうもマニアックで一般ウケしないと感じて止まっていた。私は好きなんだけどねえ、この手のネタ。ヨーロッパのオオカミやイヌとも遺伝的にはかけ離れているとか。そもそもイヌの発生はアジアだったらしいとか。

せめて「獣害対策にオオカミ導入を」という意見にチクリと指すか……と思っていたところ思い出したのが、「忠犬事業は柴犬でやっている」という話。これって、今年の春に南木曽を訪れて「忠犬事業」に興味を持って調べたらわかったこと。考えたら、そのことはブログに書いたのだった。小さくてかわいいが、柴犬は狩猟犬だった。

やっぱり獣害につなげなければ。『獣害列島』書いたんだから(^o^)。

というわけで、こんな記事になりましたとさ。

2021/10/27

労働組合の機関誌に寄稿

東京土建一般労働組合が発行する「建設労働のひろば」という機関誌(季刊)に寄稿を求められた。

テーマは「ウッドショックから見える日本の林業」。

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労働組合が、こんな雑誌を出しているのか、とちょっと驚きつつ、これはチャンスだ、林業労働の現場の話を書くぜ、と発奮。

ウッドショックに関する記事は、すでにいくつも書いているから、同じものじゃつまらないし、そもそも視点が違う。林業や木材産業ではなく、建築現場からの視点で、日本の林業を紹介するのは面白いかもしれない。私は、かねがね日本の林業問題の根幹は雇用にあると思っている。成長産業化なんて言う前に、ごく普通の会社並の雇用と待遇にするだけで、日本の林業は立ち直るんじゃないか。

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わりと量も多い(6ページ)だし、どうせなら赤裸々に……。

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労働組合の読者だもんね。やはり雇用形態の特異さから入り、危険性、そして教育まで……。『絶望の林業』ウッドショック編だ!
私の知る建設労働者のイメージからすると、「自分たちは危険な仕事をしている」意識が高い。たしかに建設現場も危険だが、林業は全然違う危険性が満ちている。しかも、それをなくす安全教育が極めて脆弱。必死で取り組んできた建設現場とは雲泥の差だろう。

とはいえ、要望に合わせてウッドショックの裏側や解決方法などにも触れましたがね。経営者が読むことはないだろうが……。とにかく結論的には、双方の現場労働者は相手の現場事情を知れよ、ということになるだろうか。林業従事者は建設現場を、建設労働者は林業現場を。

その点からすると、ウッドショックは相手の現場に興味を持つきっかけにはなったのかもしれない。

2021/10/26

建築物の木材の炭素貯蔵量と住宅寿命

木材利用促進法が改正されたのに合わせて、林野庁は建築物に利用した木材の炭素貯蔵量の表示に関するガイドラインを公表している。

「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」について

木材の炭素貯蔵量を求める計算式とは、

Cs=W×D×Cf×44/12

Cs:建築物に利用した木材(製材のほか、集成材や合板、木質ボード等の木質資材を含む。)に係る炭素貯蔵量
(t-CO2)
W:建築物に利用した木材の量(m3)(気乾状態の材積の値とする。)
D:木材の密度(t/m3)(気乾状態の材積に対する全乾状態の質量の比とする。)
Cf:木材の炭素含有率(木材の全乾状態の質量における炭素含有率とする。)

うーむ。難しすぎる。まあ、木材の樹種や乾燥とか建材の種類などの根拠などはリンク先に載っているから、興味のある方は参考に。

Appeal_img01こんな図表もある。

建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン(PDF : 432KB)

なんか、以前にもよく似たモノがあったなあ、と考えて思い出した。ウッドマイルズだ。いや今もあるかもしれないが、すっかり陰が薄くなった。こちらは木材の移動手段や距離を二酸化炭素排出量で示すというものだ。こちらも細かな計算式があったが、今回の方はより難解。
ただ炭素貯蔵を示すなら、木材以外でも炭素を含むものは少なくないように思うが。プラスチックだって炭素を含むなあ。

ウッドマイルズは、ようは外材より国産材、そして近くの山の木の木材を使いましょう、という意図から作られた。もちろん二酸化炭素に置き換えるのだから、地球温暖化対策も名目としてある。
今回は、文字通り建築物そのものの炭素貯蔵量なんだから、気候変動対策である。建築物ごとに貯蔵量を掲示するなどして「建物を建てた企業や施主が、カーボンニュートラルへの貢献を対外的に示せる」ことを目的とするんだそうだ。外材いっぱいの家の場合はどうかな。。。

ウッドマイルズと今回の建材の炭素量を掛け合わせたら、より正確になるかもしれない。しれないが……。

日本の住宅の寿命は、平均29年である。ま、30年としても、それが炭素貯蔵期間だとするなら、その木材の成長期間の半分以下ということになる。60年生だとしてだが、外材の中にはもっと長いものもあるだろう。ということは、大気中の炭素削減のために貯蔵するという意図からすると、住宅寿命を2倍ぐらいに伸ばす必要があるだろう。さもないと、木の成長量より早く破棄して炭素を貯蔵どころか排出してしまう。非住宅の木造建築の場合は、寿命は伸びるのか、あるいは短めなのか。
しかし、仮に60年もたせても、カーボンニュートラルにはなるが削減にはならない。

国土交通省の木造住宅期待耐用年数によると「フラット35基準程度で50年~60年、劣化対策等級3で75年~90年、長期優良住宅認定であれば100年超」だそう。しかし日本では、世帯や世代交代をすると、リフォームや建て替えが多い。その度に木材は入れ代わっていく。これは時代による機能性の要求が変わる(断熱性能とかIT仕様とか)ことのほか、精神性の問題かもしれない。洋風がいい、新モダンがいい、エスニックがいい……ほか、禊ぎ意識もある。おニューを求める心だ。

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古民家リフォームでネパール喫茶

ちなみに、このガイドライン作成の意図の裏に「2030年の国産材の供給量を現在より35%拡大」方針があるそうだ。国産材生産量を大雑把に2000万立方メートル強として、700万立方メートル以上増やすことになる。これは丸太だから、その3分の2以上がチップになって紙か、あるいは燃料になる。残りが製材か合板になる。その分外材を減らすのか? 建築物になる分は何棟分だろうか。人口減少時代だからなあ。

 

 

2021/10/25

誰が「おかえり」と言うのか

朝ドラ「おかえりモネ」が最終盤である。私は、さしてハマることもなく、淡々と、ただその時間に起きて朝飯を食っていることが多いという理由から見続けていた(^^;)。このドラマの終わり方の理想として「地元に帰っても上手く仕事ができず、また東京にもどり、そこで東京の同僚らに『おかえり』と迎えられる」状況を期待していたのだが、どうも違うようだ。そりゃそうだろうなあ。

今はすっかり離れているが、かつて私は田舎暮らし評論家であり(笑)、実際に田舎取材ばかりしていた時期があるのだが、その頃に「住みやすい田舎」とは何かとわりと真剣に考えていたことがあった。

ちょうど、こんな記事が。

若者が地方から逃げ出す本当の理由 流入のカギは「適度な無関心」

居住満足度に与える影響は、「親しみやすさ」が最も大きい。この親しみやすさとは、「気取らない親しみやすさ」「地元出身でない人とのなじみやすさ」「地域の繋がり」「近所付き合いなどが煩わしくないこと」「地域のイベントやお祭りなど」といった要素を含んでいる、とのことだ。
これをまとめて「適度な無関心と距離感によって形成された緩い人間関係」としている。

つまり「親しみ」という言葉から連想する田舎の人間関係のイメージとは違って、都市圏の方が親しみやすいわけだ。もちろん生活サービスや交通などの点からも圧倒的に都市の方が有利だろう。

Photo_20211025123901日経ビジネスより

ちなみに、こんな記事もある。日本で最も自殺の少ない町の調査から気づかされたこと

生き心地のよい町~この自殺率の低さには理由がある』(岡檀著、講談社) という本の著者の執筆だが、具体的には日本で最も自殺の少ない町(徳島県海部町~現海陽町の一部)の秘密を研究者が調査によって解きあかしたものだ。

そこでも語られるのは町民の「異質な要素を受け入れ多様性を認める」姿勢や、「緊密すぎない、ゆるやかなつながりを維持する」人間関係だ。人間関係が緊密でない方が自殺は少ないのだ。ほかにもいろいろあるが、それは本書を読んでいただきたい。

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人は他人との関係を求めるけど、それはあくまで緩やかなものであって、緊急時以外は生活に介入しない・されない姿勢が幸福度に響いてくる。それは田舎と都市と二元化できないな、と感じる。

行政の政策で、流出を防ごうとか、移住者を迎えようという動きはたくさんあるが、単に仕事場をつくるとか、住居を与える、地域住民と仲良くさせようとする世話焼きは、かえって逆効果かもしれないよ。どうやって人を迎え入れるか、ではなく、元からの住民の対応を教育することが必要になってくるかも。(無理だけど。)

私なりの結論としては、歴史的に人の出入りが多いかどうか、ということが住民性に大きく影響するように感じた。都市だけでなく農山漁村であっても、わりと人々の往来(移出入)が多いところは、「ほどよい親しみやすさ」の感覚が保てている。昔から交通の要路で商工業の取引があったり、好景気時期に出稼ぎを多く受け入れ、彼らが定着していたりしているからだ。山奥の住民と話をしていると、ときに「実は〇〇の出身でよお。〇十年前に仕事を求めてやってきたんだわ」なんて聞かされることがある。今は田舎でも、よそ者をわりと受け入れている地域はある。

逆に見た目はそこそこの中核都市であっても、人の移入が少ないと、よそ者排除意識がじわりとにじみ出る(^^;)。一方で完全な大都市圏でビジネス中心地だと流入・流出が多すぎて「おだやかな親しみやすさ」が形成されにくいかもしれない。


……なんで、こんなことを考え出したのかと言えば、私も、自身に関わる人間関係の対応を考察していたからかもしれない。

ただ昔とった杵柄?からすると、地方創生とか、田舎暮らしなんて、行政が入れ込みすぎない方がいい(笑)。

2021/10/24

薪ショック?

 薪の価格が上がっているそうだ。ウッドショックが薪にも到来か? なんてニュースになっている。

実際、近くのホームセンターで見かけた薪の山。

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売り切れだそうです。これも一括して全部買った人がいるようで。

まあ、説明ではコロナ禍とかソロキャンプブームなどで薪ストーブや焚火需要が増えて、それが薪不足につながり価格も上がっている……建材高騰のウッドショックにも引っかけた話題としているよう。

否定はしない。しないが、どうも出来レースぽい(笑)。急に寒くなって薪ストーブに点火する家庭も増えたのかもしれないが、ちょっと牽強付会ではないか。たまたまの薪不足とウッドショックを(言葉だけ)結びつけたらニュースになるぞ、という……。

ただ構造はウッドショックと同じだ。経営判断や流通問題で需給バランスが崩れて品不足・値上げになっただけだろう。薪製造の人手不足もあるし、コロナ禍もあるし。そもそも薪は半年~1年間乾燥させないとよくないから、薪の供給は以前から細っていたことになる。しょうがいないので人工乾燥機を使って乾燥薪を生産しているところもあるそうだ。
しかし資源としての薪が足りないことはない。山には、たっぷり木がある。広葉樹も針葉樹も。

ちなみに写真の薪には「アカシア」とあった。ニセアカシア(ハリエンジュ)のことなのか、それとも本物のアカシア(ネムノキ属)材を輸入したのだろうか。

 

2021/10/23

木彫りがフィギアにガチャに

毎度、ガチャ見学(笑)。ガチャガチャを見ていると世相がわかる……かも。

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とうとう、木彫りをフィギアにするまで進化した。(もちろん、木彫りそのものではないよ。それは原型士の「作品」だ)
この作品は、川崎誠二という木彫り作家。沼津の人らしいが、詳しいことはわからない。インスタはやっている。

ちょうど、こんな記事も出ていた。

ガチャ史上「最高難度」木彫り再現 「500円じゃないと作れません」はしもとみおさん作品で伝えたいこと

こちらは多少お高くなっているが、これは、はしもとみおのネームバリューに加えて、その作品がよりリアルでそれをフィギア化するのには高い技術が必要になるからだろう。色の再現性も難しい。
ただ彼女は、アーティストというより木彫りの動物づくり職人的な人。だから自分の思う造形ばかりではなく、依頼によって亡くなったペットの再現などを請け負っている。

私も展覧会に行ったことがある。

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こちらの作品は、よりミニマムでフィギアぽい。

木彫りの世界まで行くと、木材は化ける。

 

2021/10/22

『虚構の森』ネットに登場

来月、出版予定の拙著『虚構の森』がネットサイトで紹介され始めた。

新泉社

版元ドットコム

新刊ネット

 Amazon

楽天ブックス

いずれもネタ元は同じだ時、目次もあるから、ご覧あれ。

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本書の表紙カバーを目にして、森林ジャーナリストが初めて書いた恋愛小説で、ノルウェイの小さな町で偶然に出会った二人は、いつしか幻想的な森に迷い込んでいく……とか紹介できないかと考えたのたが、無理だな(^-^)/ 。

しかし帯を外したら、なかなか小説ぽいですがな。間違って購入する人も出ることを(少し)期待。『ノルウェイの森』と対抗できないか(^^;)\(-_-メ;)。

実際には、帯文に「SDGsの落とし穴」とあるとおり、環境問題を取り扱っている。とくに森林と縁の深い気候変動と生物多様性を大きなテーマだ。林業に関する記述は少ない。。。。と記すとあっさり興味を失う人もいるだろうが、それこそが大問題だと思っている。環境問題、森林問題に興味のない林業関係者って何? それが日本の林業をダメにしたんじゃないの? お互いに関心がない恋愛、議論が嫌いな政治家、美味しそうではないグルメ番組みたいなものじゃないのか。

ま、ここで喧嘩を売っても仕方ないのだが、本書は「考えてみよう」というのが最大のテーマで、そのために異論・異説をいっぱい紹介している。それが正しいというのではなく、どちらが正しいのか、どちらも正しいのなら整合性はつくのか、を考えてみるために執筆した。(どちらも間違っている、という選択肢もあるわ。)

発売予定日は11月20日になっているから、まだ1カ月もある。どうせなら3日早めて17日にできないか、なんて考えてしまう。なぜなら17日は谷山浩子の新アルバム発売日だから( ̄∇ ̄) 。

2021/10/21

総選挙に向けて各党の森林政策

あまり時事的な問題は扱わない方(枕ぐらいにはしてきましたがね)なのだが、久しぶりに総選挙も近いので、各党の森林政策を比べてみた。

せっかくだから、まずは総務省のポスターを。「投票に生きましょう」(^o^)。

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森林政策を比べるのに、ちょうどよいサイトがある。「持続可能な森林経営のための勉強室」の中だ。
総選挙2021各党の政策の中の森林林業政策 ネット上に公表されている各党の政策の中で、森林・林業・木材という文言が入っている文章を拾い出したものとのこと。ここの記述に基づいて読んで比べてみる。

ちょっと驚いたのが、自民党の政策内容が薄っぺらい……というか、物理的に分量が少ないこと。これまで、何といっても政権与党であり、もっとも詳しく書いてあるのが自民党だった。その内容に賛同するか反対するかはともかく、実績と行政を握っている与党の強みであろう。

ところが今回は、わずか3項目を数行で済ませている。グリーン成長、エリートツリー、スマート林業、ウッドショック……これまで繰り返された言葉の羅列。なんだかテキトー感がにじみ出る。力抜いているなあ。少しだけ新しい文言は「5か年加速化対策」かもしれないが、これも中身は治山、森林整備などで違うことをするわけじゃない。

逆にもっとも長いのが立憲民主党か。これも内容はおいといて、だが。多少とも新しさを感じるのは、木材ペレットによる熱エネルギー(発電ではなく)とか、農林地の相続を取り上げていること。また懐かしい?森林・林業再生プランという言葉、適切な森林管理を実施する者に対する直接払い制度……なども登場している。民主党政権時代の名残。

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公明党は、自民党よりは長い。ただ新しい言葉が見つからない。グリーンインフラ、エリートツリーなんかも自民党と共通。焼き直し感が漂う。あえて言えばバイオマス発電などによるカーボンゼロ、カーボンマイナス、という記述は面白い(笑)。ニュートラルを飛び越えてマイナスにするんだって。有り得る?

共産党は、長い。立憲民主党とどちらが長いのか競っている。ただ切れ目のない文章なので読みづらい(-_-;)よ。中見出しを入れ、箇条書きにすることをお勧めする。
内容は、日欧EPAやTPP撤廃を謳っていて、関税で国内産業を守るという時代遅れな発想である。林業女子会、(森林)ボランティア団体にも触れているが、これもなあ。今更感が漂う。ちょっと遅れてません? それと森林環境税(国)は与党が決めたことだけど、どうも賛成しているみたい。増税なのに。

※共産党のこの政策は、4年前のものだったようです。今年のものは、こちらでした。
政府の「林業成長産業化」政策を見直し持続可能な林業をめざします

おそらく党のサイトの書き換えが時間差でずれたのだろう。新しい版にはウッドショック広葉樹利用などが登場する。「林業の成長産業化」も見直すという。これが森林破壊の元凶だから。ただ4年前と大きく変わるところはない印象だ。

 日本維新の会は、見事に1行! 農山村地域、農林水産業なんか知らん! という姿勢は結党以来、一貫している(笑)。

国民民主党は4行。その中でトップは地球環境でも林業振興でもなく花粉症対策で、木製サッシを取り上げるところは斬新かも(^o^)。ドイツのような林業大国をめざすんだって。

以上、私の個人的な見解です\(^o^)/。ほかの党(社民党、れいわ新撰組など)は記述ゼロなんだろう。

さて、参考になりましたでしょうか。なりませんね……。

2021/10/20

土砂流出を止めるのは樹ではなく草

ネイチャー系の学術誌「サイエンティフィック・レポート」誌に出た論文、「花崗岩地域山林における下層植生率による土砂生産率のリスク低減効果」によると、土砂の流出防止に効果のあるのは下草だそうだ。

執筆は、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの水野敏明さん、専門員の小島永裕さん、京大大学院地球環境学堂助教の浅野悟史さん。森林の地面が下草に覆われている割合が、60%以上、30~60%、30%未満の場所で比べてみると、60%以上ある場所は、30%未満のところより土砂流出量が97%少なかったそうだ。その間では63%少なかった。72時間雨量が400ミリを超える豪雨でも、同じだったという。

これ、言い換えると樹木より下草の方が大切ということか。

実は、これと同じことを来月出版する本に書いたのだ。「虚構の森」では、土壌を守るのは樹木ではなく草であり、樹木だけなら逆に表土を抉りかねない……と。ああ、今回の論文の話を書き足したかったな。かなり具体的な研究成果ではないか。でも、再校が終わったばかりだから、もう手が出せないのだよ。。。

ところで、森林はあるけど、つまり樹木は繁っているけど下草の被覆度が違うとは、どういうことだろうか。

一つには、樹冠が鬱閉した森林だ。スギやヒノキ林でも間伐をしなければそうなるのはよく知られるが、実は天然林、とくに広葉樹が繁っている場合もそうなりがち。

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写真は生駒山の照葉樹林内。下草がほとんどない状態。もっとも、落葉は結構積もっていたが。

そしてもう一つ。それはシカが下草を全部食ってしまった場合

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こちらは奈良・春日大社の境内。お見事というほど林床には何もない。残された樹木の皮まで食べないように金網で防御しなくてはならないほど。下草がここまでなくなると危険だねえ。ただし、平坦なので流出しづらいと思うが。

逆に考えれば、樹木がなくても草が繁っていたら、少なくても土砂流出を心配する必要はあまりないことになる。たとえばゴルフ場とか。

 

 

 



2021/10/19

Y!ニュース「木材自給率爆上がり……」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「木材自給率爆上がり!その理由は途上国的木材需要にあり」を執筆しました。

先に木材自給率についてはブログにも書いたが、改めて数字を精査しつつ一般向きに書き直した。あんまり世間には木材自給率なんて知らないだろうから、知らせる価値はあるかと思ったのだ。
とはいえ、一般人は興味を持つかなあ~という迷いも。こうしたときは、タイトルを刺激的にする(笑)。逆に冒頭写真は、えぐいのを止めてさわやかな木組みにする。それなりにバランス取っているのだよ。

発展途上国的、後進国的、江戸時代的……まあ、字数もあまり膨らませたくなかったので「途上国的」木材需要に落ち着いた。日本を途上国と言われると、いまだにカチンと来る人もいるだろう。引きつけられて読む……するとアクセスも増えるかも(笑)。実際は、さまざまな分野でずるずると先進国の座から滑り落ちているのだから、これぐらい小さなことなんだが。

ただ、読めばわかる通り、記事の中ではオマケのようなもので、そんなに強調しているわけではない。いまだにバイオマス発電で燃やすのは間伐材だからいいじゃん、という人が今も多いので残念だ。だから、若干修正して、間伐材だけでなく、山の木を全部伐って燃やしているんだよ~と付け足した。

なお燃料材の需要は1280万立方メートルぐらいだから、総需要の17%ぐらいを占めていることになる。どんどん膨らんでいく。

2021/10/18

無断伐採監視システムは機能するか

林野庁のモクレポに目を通していたら、「衛星画像を活用した無断伐採対策」という記事があった。

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ようするに、ある期間ごとに衛星画像を照らし合わせてリモートセンシング技術などを使って伐採(皆伐)された地域を見つけ出し、そこに伐採届が出ているか、届け出範囲を越えていないかとチェックすることで無断伐採を見つけ出すというもの。

農林水産省が、山林だけでなく農地での違法案件も早期発見するシステムづくりとして昨年より進めていたことは知っていた。具体的にはグーグル社の衛星画像のクラウドサービスを使って、市町村ごとに一定期間に伐採された箇所を抽出し確認できるプログラム「FAMOST」を開発したのだ。今は試行中らしい。

ま、たしかに無断伐採(盗伐とは言わないのね)絞り込むのには役立つだろう。市町村職員がやる気になれば。しかし伐採届の有無とか範囲を細かくチェックするには仕事を増やす相当な覚悟がいる。

それに、九州で行われている盗伐など違法案件のほとんどは、発見しても警察が被害届を受理しない・立件しないことが問題の根幹だ。発見されても罪にならないから業者は平気でやるのだ。その理由はいろいろ言われている。裏で業者と警察がつながっている噂が根強くあるし、森林窃盗の立件は手間ばかりかかるから仕事を増やしたくない警察が嫌がるという話も聞く。その点をどうするのか。

私が何より憤るのは、これまで林野庁はまったくと言ってよいほど、盗伐に関して声を上げなかったことだ。少なくても憂慮する声明を出すとか、県や市町村など自治体を行政指導することはできただろうに、やらない。だから県も本腰を入れない。市町村も見て見ぬふり。
それどころか国会でこの問題が取り上げられたとき、当の長官が「盗伐か誤伐か区別がつきません」と、逃げ腰……というよりは無断伐採した業者を擁護する答弁をしているのだ。誰が見ても意図的な盗伐とわかる案件が山ほどなるのに。それに誤伐であっても違法なの。誤伐だったら仕方ないということはない(刑事罰はなくても罰金はあるし、現況回復を求められるだろう)。それこそ、裏で業者とつながっている?と勘繰られる。

まずは「無断伐採」(盗伐とは言わないのね)は絶対に許さない、という強い意思を示さないと。今回の「FAMOST」も開発するのはよいが、それを使って取り締まるのは現場なのだから。

2021/10/17

元新聞記者が書いたKindle林業本

こんな本を知っているだろうか。

中山間地域を維持するための処方箋: ~優秀な林業従事者を散りばめよう~ 坂巻陽平著

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AmazonのKindleでしか売っていない?林業本。と言っても、40ページほどなんで小冊子というべきか。また価格は250円だけど、Kindle unlimited会員なら0円。つまり無料で読める。

タイトルからは地域論に見えて、本筋は林業本ではないかと思う。なぜなら、著者は現役の林業従事者だから。

とはいえ、ちょっと特殊なのは、その経歴だ。神奈川県横浜市出身ながら就職先に選んだのは高知新聞社。つまり新聞記者だった。そこで中山間地問題(具体的には閉校する小学校の取材を通して)に触れた。そして自伐型林業が行われていることを知って、自ら挑戦する決意をする。これは社内の自己研修制度を利用したそうだが、ようするに無給の休職制度だろう。そして中山間地集落に移り住んで「自伐型」を試すのだ。結果として限界を感じたり、事故を経験したり、コロナ禍などもあり、故郷に近い場所で行おうと、神奈川県山北町に移る。いよいよ退職しての転職となる。だから、もっとも多くの木を切り倒した経験を持つ(元)新聞記者だそうである。

林業経験は2019年からだから、まだ2年程度ではあるが、その中から感じたこと・考えたことをまとめたのが本書ということになる。

さて長い著者紹介になったが、実は私は彼に会ったことがある。高知新聞の記者として、取材に来たのだ。テーマは……なんだったか忘れた(^^;)が、肝心の取材テーマより恒続林だとか林業社会そのものについての話になってしまった記憶がある。

さて、目次を紹介しておこう。

はじめに
第1章 日本の国土利用と林業事情
 1,山、森の国、日本
 2,最も危険な仕事「林業」
 3,森づくりおける二つの思想「法正林」、「恒続林」
 4,いかに林業従事者の地位向上を図るか
第2章 元記者が木を切り始めた経緯
 1,過疎地域で出合った「自伐型林業」
 2,神奈川県にUターン
第3章 山への関心を高めるには
 1,林業ではなく、人の「成長山業化」
 2,「成長山業化」の先に
おわりに

最初は総論的であるが、よくある日本の森林率とか労働災害の千人率などの紹介に留まらず、政府の国土利用計画の変遷や、世界と日本の林業の理論的支柱である「法正林」、そして前世紀から生まれては消え、消えては再登場を繰り返す「恒続林」の流れから説き起こしている。これって、実は相当珍しい。なかなか、そんな俯瞰した視点を持って林業を語る例がないのだ。おそらく私ぐらい(笑)だが、私はしょせん、口舌の徒だからね……。

考えてみれば、林業現場を経験しながら林業論を書く人は、ほとんどいなかったのではないか。山主とか、林業会社・林業コンサルなどの経営者としてならいるだろうが、現場作業経験とはちょっと違う。それでいて新聞記者だっただけあって、俯瞰的立場を残している。また文章はこなれていて読みやすい。

このように林学理論と実体験を織り交ぜながら語る林業論の本……と思わせて、やはりタイトルに偽り無しというべきか、最後は「林業ではなく、人の「成長山業化」」とあるように地域論へと着地していく。森林を活かした利用全般が地域を支えるのだ。これは「林業従事者が自ら考える」ことが重要としている。そして著者がめざすのは、林業をに従事しながら中山間地域の現状や日本の山づくりに関する情報を発信していくことらしい。

さて、その意図や内容をどう評価するかは読んだ皆さんにお任せする。ただ「これからの林業」を考えると、私の感覚的には環境低負荷型の林業に向かわざるを得ないし、そうならないと破滅的だと感じている。

いまだ世界の主流は「法正林」的な単一樹種の一斉造林・一斉伐採だろう。しかも短伐期(日本の50年程度で皆伐というのも短伐期と認識している)。面積では圧倒的にこちらだ。しかし欧米を始めとして、それらの限界は見えてきて修正の動きが進んでいる。この点を無視して「世界の潮流は一斉型林業だ」というのは近視眼だ。

北米・南米、ニュージーランド、そして北欧などでも一斉型林業は盛んだが、私にはこれがあるべき林業像とはとても思えない。

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こうした写真を見ると、はっきり言えば気分が悪くなる。虫酸が走る。反吐が出る。森林生態系を無視した極端な木材栽培業だろう。

日本の「自伐型林業」のように小規模にやるべき、というのもそうした林業へのアンチテーゼの一つだと考える。私は自伐型林業そのものは徒花的(笑)なもので、この方法ですべてが解決するとは思わないが、条件の合う地域や人がいるなら行えばよいし、少なくても大規模・機械化・画一的な一斉型林業よりはよほどマシだ。
また、少しずつ恒続林思想を取り入れた混交林型森づくりも各地に芽生えている。それでは管理が大変・難しいという反対意見もあるのだが、それはていねいに管理するのが面倒くさいしコストをかけなくないという甘えか、人材がいない=林業家はアホです宣言みたいなものだ。時間はかかっても、そうした意識と人材を育てる目標を掲げるべきだろう。

そもそも一斉型林業は収益第一主義の色が濃すぎて、それではSDGsの時代に合致しない。収益を維持しつつも環境(生物多様性、景観、そして防災)重視、そして地域社会の担い手としての林業とは何か。それを考えるべきだ。果たして「人の成長山業化」がそれを可能にするのか。。。

なんだか本を紹介するつもりで、持論の展開になってしまったが、林業の本質についてより深く熟慮深慮しなければ、未来は危うい。本書も議論のとば口になるだろう。

 

なお、私はこんな記事も書いている。

過去の日本林業は多様性があった──混交林的な森づくりで環境と経済の両立を

 

 

2021/10/16

誤解呼ぶ熱帯丸太の取引量

ITTO(国際熱帯木材機関、横浜市)の熱帯木材貿易(隔年発表)の最新版(2019-2020年版)報告書が出た。

そこでは、
2020年における世界の熱帯丸太生産量は3.3億m3。最大の輸入国は中国の858万m3で、世界シェアの70%を握っている。日本は、1998年まで世界最大の熱帯丸太輸入国だったが、現在のシェアは0.6%にまで低下している。
とある。

が、これ、かなり誤解を呼ぶというか、恣意的に誤解させようとしているんじゃ? と思わせる統計数字の扱い方だ。

熱帯丸太の貿易では、中国が全体の70%を握って世界最大……。そして日本はたった0.6%……。

数字そのものを疑うつもりはないが、これでは中国が独占していて、日本は熱帯材をほとんど使っていないみたいではないか。

鍵となるのは「丸太」という点だ。熱帯材の丸太の生産量のうち中国の輸入量を見ると、約3.85%にすぎない。それが7割ということは、貿易量そのもが生産量の5.5%程度ということだ。輸入しているのは、ほとんどが中国なのかもしれないが、そもそも貿易量が少ない。

実は熱帯諸国は、丸太輸出を止めて、製材や合板に加工して輸出する方向にシフトしている。

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今年の白書によると、日本の木材需要の内訳はこんなん。熱帯木材は、インドネシアとマレーシアがほとんどで6.9%。加えてベトナムはパルプやチップにして輸出しているようで、それが9.0%もある。合わせると16%近い。これを総需要から導くと、1140万立方メートルになる。中国の丸太輸入量より多くなる(-_-;)。ま、中国も製材や合板でたくさん輸入しているんだろうけど。

だいたい日本の南洋材輸入は、ほとんど終わった、と今年初めに紹介したばかり。丸太で輸入することはなくなったのだ。これまでも、これからも製品輸入が主流だろう。いや、資源量の減少から考えると、熱帯木材の製品そのものが減っていくかもしれない。そのうち熱帯産木材といいながら、樹種はアカシアやユーカリなどになっていくかもなあ。

2021年「南洋材時代」は終焉を迎えるか

 

2021/10/15

ススキvsセイタカアワダチソウ

子どもの頃、空き地があるかと思えば、そこに繁っているのはセイタカアワダチソウだった。どぎつい黄色の花穂は好きになれなかったが、身近な植物ではあった。その茎も、秋になると茶色で硬くなり、チャンバラごっこに向いている。

だが、最近はセイタカアワダチソウが減っている気がする。もちろん、まだまだ見かけるのだが、以前ほどではなくなった。

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もともと、こんな具合だった。これは耕作放棄されり棚田だが。

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徐々にススキが浸入している。レコンキスタ(失地回復)か。

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なかにはススキの方が優占しつつある場所もある。

セイタカアワダチソウと言えばアメリカ原産の外来種で、アレロパシーも出すし繁殖力が強いので在来のススキなどを押し退けて繁茂するイメージだったが……。実は、地表を攪乱するなどされた荒れ地には強いが、土壌が落ち着いてくると弱ってくる。どうも酸性土壌に合わないらしい。しかも日当たりを求めるから冬の間に他の草木に覆われると負ける。

かくして在来種の反攻が始まったのである( ̄∇ ̄) 。

ちなみに景色としてもススキの方が絵になる。私はよく平城宮跡にススキを見に行くが、なかなかの景観だ。現代的な建築物を写らないように写真を撮ると、古の都の気分に浸れるよv(^0^)。

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2021/10/14

吉野杉の輸出に見る木材の「価値」

米の価格が下がっているようだ。このままでは米農家は立ち行かなくなる……という声が上がっている。たとえば東北6県の主要銘柄米(1等米60キロ)が、前年比2000~4000円程度下落した。これはゆゆしき事態だろう。直接の原因は、コロナ禍で外食産業が不振になったことだとされているが……。

ただ、ちょっと妙だ。今年3月には、2020年度全体で米の消費が2.2%増となったというニュースが流れていたからだ。中・外食消費量は3.7%減少したが、家庭内消費量は5.1%増だった。米は食べられているのに、取引価格は下がるとは……。

 

全然関係ないようで、思い出したのはYahoo!ニュースにあったこの記事。

パリ】フランス人の心に響いた「吉野材」に日本ブランドの未来を見る。

吉野からパリに輸出した吉野杉[YOSHINO WOOD]が評判を呼んでいるのだ。それをパリ在住の日本人がレポートしてくれている。こういうのは有り難い。フランス側の動きや感覚がよくわかる。

ともあれ、吉野杉の素晴らしい材質が理解されたか……というと、全然そうではない(笑)。

そもそも吉野材のヨーロッパ輸出は、2017年から取り組んでいた。最初はオーストリアに。だが、まったく成果は上がらず。ドイツのケルンで行われていた木材メッセにも吉野材を持ち込んだが、まったく相手にされず。

そこでどうしたか。……ぜひリンク先の記事をよく読んでほしい。読まずに、このブログだけで知ろうと横着してはダメよ。
ようはワインでいうテロワール、良質の木材が育てられる背景、環境、あるいはどういう人がかかわって、どういう木材の文化があるのかという、地理的、環境的、歴史的な部分、そういうストーリーと一緒に見せてゆくということなのだ。そして最終商品を見せる。

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実は、この吉野材の輸出に関しては、私も以前から聞いていた。肝心の人物にも会っている。ただ、聞くだけじゃダメだね。こうしてフランスの様子を紹介されているのを読んで、ようやく合点がいった。

私は20年以上前から「木材は情報素材だ」「木材の個別の機能はほかの素材より劣る」「価値は情操・感覚で伝えるべき」と言い続けてきたと自負しているが、それをキッチリ示している。

吉野杉の原木を見せても見向きもしなかったヨーロッパ人が、見事に反応したではないか。また原木ではダメなわけで、見せる形にしなければならない。

お米も一緒なんだな。もはや栄養をとって腹を満たす素材ではなくなっている。米を売るのではなく、テロワールで売る。料理で売る。たとえば玄米ではなく、おにぎりで売る。売る人の人柄で売る。そんな覚悟がいるのだろう。

2021/10/13

週刊東洋経済へ寄稿

週刊東洋経済10月16日号に寄稿した。

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特集は「実家のしまい方」。う~む。なかなか身につまされる特集である。これ、大問題になっていることを感じている人は、日本人の何分の1だろうか、と考えてしまう。親の家や土地の問題から始まり、自分の亡くなり方にまで考えてしまう。残された遺産をどうするか、どうされるかを考えねばならない時代だ。最近、週刊誌、この手の特集増えているし。

人口減時代、もはや財産は相続するもんじゃないのかもしれない。

さて、私がこんな記事を書いたのか、と言えば、ちと違う。書いたのは……山林購入!

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思えば昨年は、この手の記事が大ヒットして、私もいろいろ書きまくってテレビやラジオにまで引っ張り出されたのだが、1年後になって蘇るとは(笑)。まあ、山林の相続もあるし、それを売る・買う問題も起こるだろう。

私としては、売る側、つまり持て余す山林を持つ人向きの記事(いかに山林を都会人に売るか)を書きたかったのだが、編集部としては読者層はやはり都会の購入側だから、というので視点としてはそちらになった。ちなみに右下の焚火をする写真は、私の山だ(^^;)。

でも、webではなく、紙の週刊誌に記事を書くのは、なんだか楽しい。東洋経済オンラインなどには私も記事を書いたことがあるんだが、週刊誌の方がなんとなく愛着湧くなあ。でも紙は、発売日を過ぎると買えなくなる。週刊誌は1週間だけ。もう数日過ぎてしまった。

興味のある方は早めに書店へ。「実家のしまい方」には山林も含まれると思うよ。

2021/10/12

シュールな大極殿南門

平城宮跡に大極殿南門の復原工事が進んでいる。

大極殿は、天皇が儀式・執務をする巨大建築物だが、その周辺の復原として南門をつくっているのだ。この度、素屋根を横にずらしたというので見に行ってきた。

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なんか、シュールというか、古代建築物の復原なのに、近未来的な鉄の屋根がある。いわば建築用の足場と囲いだが、いよいよ中の建築が完成したので、それを横に引っ張ってずらしたというのだ。私が頭に浮かんだのは、サンダーバードの基地(笑)。

ずらす前は、こんな感じ。

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さて、これも復原・復元であって、文化財の修復建築でないのは言うまでもない。設計図が残っているはずもないから、想像で描いた部分も多分にある。

沖縄の首里城の再建工事と似た立場である。時代の差が1000年以上あるので、より想像部分が多いだろう。ここでは、どんな木が使われているか。

木材としては8000の部材があるそうだ。使われたのは、主に紀伊半島のヒノキ。なかには樹齢200年近くの吉野ヒノキもあるそうだ。大木である。もっとも太い柱となる原木の直径は80センチくらいか。人工林からであって天然木ではないはずだ。でも、Yahoo!ニュースにも書いた通り、文化財でもないのに貴重な大木を使うことの是非を考えると、悩ましい。

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使われた木のサンプル。

南門の完成は、来年3月を予定。でも次は、両隣に東楼、西楼を建てる。なかなか終わらんのである。

 

 

2021/10/11

不眠症に『荒くれ漁師をたばねる力』

このところ、不眠症である。寝付きがやたら悪くなった。七転八倒して、最後は酒飲んでも寝ようとするが、それでは翌朝の体調が悪くなる。

で、寝つけない夜は読書するが、そこで手にとったのが『荒くれ漁師をたばねる力』(坪内知佳著 朝日新聞出版)

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これ、著者がテレビなどにも出ているし、政府の町おこし系のイベントにも引っ張りだこらしいので知っている人も多いのではないか。
内容は表紙カバーや帯文にもあるように、24歳の女性が漁師の船団を束ねる会社の社長に就任して、漁業の建て直しを図る実話である。大学中退のシングルマザーだから社長といってもお飾りで、事務仕事させよう……ぐらいの感覚で就任させたら、既存の漁業の慣習というかシステムをガラガラポンしてしまった。

ただ方法は、わりとシンプルで、サバやイワシなど量の獲れる漁獲は漁協に任せて、混獲してしまう雑魚(実は高級魚)を自前の産直でレストランなどに送る(鮮魚BOX)というシステムだ。当然、産直の方が圧倒的に高くて利益率がよい。いわゆる6次産業化という農水省の大好きな仕組み。これで、建て直しをする計画だったが、外からも内からも既成の勢力の猛反対と妨害、分裂が続き……と、この辺はだいたい読めるパターン(^o^)。だが彼女は、その度に恐るべき胆力と努力で乗り切るのだ。

漁労長の言葉が面白い。「最初はきれいな人だな、私たちを救いにきた天使に見えた。でも悪魔に変わった。

これ、そのままテレビドラマにもなりそうな話なのだが、そうしたオモロイ具体的なエピソードは本書を読んで知っていただきたい。

私がウッとうなったのは、最後の方にサラリとあった実情。それはスタートが2011年で、本の出版したのが2017年だから6年経っているのだが、そこで「魚の水揚げは自家出荷を始めた頃の半分まで落ち込んでいる。」という1行なのだ。6年で半減!

日本の水産業、半端ない危機である。山口県の玄界灘に面した萩大島の漁業の場合だが、おそらく全国で起きているのだろう。これは、とにかく魚が獲れないうえに、魚価がどんどん落ち込んでいるからだ。

だが、著者は言うのである。鮮魚BOXの売上が10倍に伸びている、と。だから漁師の収入は以前と同じ額を保てているのだと。そして漁獲が10分の1になったとしても、鮮魚BOXを10倍の値段で私は売る、と断言する。営業の仕方も含めてド迫力である。

だが、その意味するところは何か。出荷時の価格は落ちているが、最終価格が10倍になっても買ってくれる消費者はいるのだ。

ちょうど読んだ水産業のレポートでも、興味深い発言があった。

今は流通と生産が分断されている。漁獲して市場に出荷する段階と、市場で魚を買って流通させる段階に大別される。結果、情報も断たれる。誰がどの魚をどれくらい欲しがっているかという情報を基に、オーダーを受けて取りに行く漁業に変えたい。漁獲できる魚の情報を事前に提供して、消費ニーズに沿った水揚げを行う仕組みだ。(和田雅昭・公立はこだて未来大学教授)

ようは林業で嘆いていることと同じだ。材価が落ちて手取り収入が減る、山元と流通が分断されていて情報が断たれている。だが両者を結び、消費者ニーズに沿った木材商品にすれば、価格は上げられる。それこそ10倍にでも。

でも、決定的に違うのは、林業界に坪内知佳さんに相当する人がいないことだなあ。。。

ちなみに本書の欠点は、タイトルだ。ハウツウ本じゃないんだから。「荒くれ漁師」というのもバイアスがかかっているし、「たばねる力」というのも違う。彼女の実力の根源と彼女がしたかったことは何か……というようなことを寝床で考えていると、朝を迎えていたりするのだよ。。。

2021/10/10

オンライントークショーを聞きながら

 「たたら製鉄 再興と挑戦」いうオンライントークショーにお誘いがあり、参加することにした。

これは東京で開かれている『現代に蘇る刀剣。玉鋼包丁』展を記念して開催したもので、島根県雲南市で「たたら製鉄」を田部家が再興され、その玉鋼による日本刀や包丁が作られたもの。

私自身は、とくに刀剣に興味があるわけではないが、田部家に興味があったのだ。なにしろ最盛期で2万5000ヘクタールの山林地主であり(現在は4000ヘクタールぐらいらしい)、日本の製鉄の7割がたを占めていた(江戸時代だよ)旧家である。明治期にたたら製鉄は終了したのだが、残された山で行う林業も今は振るわず、さてどうする?という中でたたら製鉄の再興だったのだ。

ちょうど、出版物の初校と再校の間だし……と思っていたら、なんと再校ゲラが届いた。

そこでオンラインでたたら再興の話を見聞きしながら、再校ゲラに目を通すという……最高のシチュエーション?となったのであった。ちゃんちゃん。

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2021/10/09

頑迷な「林業の常識」と新しい施業法

フォレストジャーナルwebに「病害虫対策や経営的リスクの分散、SDGs貢献も!? 世界で進む新たな森林施業法とは」を書きました。
と言っても、全然新しくなく、本ブログでは繰り返し紹介・論じてきたこと。

ようするに、現在の林業施業法の否定だ。今やってる一斉伐採-一斉造林は時代遅れの「法正林」理論ではないか。世界の潮流は変わっているのに。

それなのに、日本の林業関係者は、頑迷というか後生大事に、この“原則”を守るのが大切だと思っている。一斉に同じ樹種の苗を植えて、伐期を決めて、(間伐も交えるものの)最後は全部伐るのが林業の王道だ、と思い込んでいる。だから多少とも皆伐批判が(マスコミなどで)されると、それこそ一斉に批判する。なんでも一斉にするのが好きなんだなあ(笑)。

お山の大将で、自分の知る林業、自分のやってる施業が世界でもっとも正しいと思い込んでいるのかもしれない。いや、単に新しいことに取り組むのが怖いだけなのかもしれない。択伐だ、混交林だ、と言われても技術が確立していないし……と。そう言うのを、井の中の蛙、臆病風に吹かれる……というのかな。

しかし、世界中の知見は進んでいる。こんな論文があった。

Silvicultural prescriptions for mixed-species forest stands. A European review and perspective

英語読むの辛いので、機械翻訳した(笑)。すると、

混合種の林分のための造林処方。ヨーロッパのレビューと展望

単一種の林分については、これまでに開発された対策や方法と比較して、混合種の林分に対する造林処方は初期段階にあります。しかし、それらは、現在世界中の多くの国で推進されている混合種スタンドのよく考えられた確立、設計、および管理に不可欠です。ここでは、最新技術を確認し、実験のステアリング、スタンドモデリング、および造林用の混合種スタンドの造林処方をさらに開発します。

……この翻訳では、余計わからんようになった(泣)。誰か、訳してくれ。

ま、ヨーロッパの混交林施業に関する論文である。ただ混交林における間伐の方法論などを図解しながら説明しているようだ。

もちろん完全な施業法なんてまだ確立されていないし、ヨーロッパと日本は違う。でも、こんな図もある。十分参考にならないか。

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なんだか、よく似た図を見たことがあるなあ、と考えたら、『吉野林業全書』だった。明治時代の吉野林業は、スギとヒノキを混交させて植え、間伐の仕方などを説明している。また先輩が新人に教えるのに、碁盤を使って、白と黒の石でどゃに何を植えて、間伐はこの順序でやる……と教えたと聞く。

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ともあれ、混交林は日本にもあったのだ。いや、粗放林業による混交化も含めれば、日本の戦前の林業は多くが針広混交林だったのでないか。決してヨーロッパの新しい林業施業法ではない。硬い頭をほぐして、広く世界を眺めて、真面目に日本の林業、いや自分の山の将来を考えてほしい。このことは、フォレストジャーナルweb版の次号(13日公開予定)にも記している。

 

 

2021/10/08

新内閣の中で興味の湧く大臣は

岸田新内閣が始動した。さして期待するものがあるわけではないが、ちと興味を引く大臣と言えば、後藤茂之厚生労働大臣である。というのも会ったことがあるのだ。ただし、20年ぐらい前の話。その時、彼は(旧)民主党の代議士だった(^^;)。

現在の姿をテレビを見ると、わりとスマート?だが、当時は腹が出ていて、恰幅のよい姿のイメージがあった。今なら私も負けていないけど(^^;)。せっかくだから、顔写真を。オフィシャルHPから拝借。

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おそらく今の彼にとって最大のテーマはコロナ対策だろうが、私はてっきり、後藤氏を農林族かと思っていた(笑)。

一応、経歴を追うと、東京出身で東京大学法学部を卒業後、大蔵省に入局、そして米国ブラウン大学経済学部大学院に留学し修士号を取得。選挙で初当選したのは2000年(新進党⇒民主党)だが、2003年に自民党へ鞍替え。以後、国土交通大臣政務官、法務副大臣、衆議院厚生労働委員長、そして厚生労働大臣と歩んでいる。つまり法務や経済、国交省、最近になって福祉医療……が専門だが、全然農林関係ではない。
多少とも森林に関係する肩書は、所有者不明土地等に関する特命委員会幹事長と、地球温暖化防止のための森林吸収源対策PT事務局長だろうか。

それなのに勘違いしていたのは、民主党主催の林業勉強会の講師として呼ばれたから。その時の主催者が後藤代議士だったと記憶する。また選挙区は長野4区と木曽林業の本場ではないか。地盤が林業地だから林業政策にも熱心なのだろうと思っていた。もっとも、当時は新人だったから、なんでも首を突っこんでいたのかもしれない。私を講師にしたのは、林野庁内の人の推薦とか言っていた。へえ~。

著作で言えば、『「森を守れ」は森を殺す』、『伐って燃やせば「森は守れる」』、『日本の森はなぜ危機なのか』当たりを執筆出版していた頃だ。

で、そこで私は何を話したのか。当時はまだ林業に絶望しておらず(笑)、いかに林業を建て直すか、というのが主題であった。ただ、切り口は今と同じで、補助金がいかに林業を腐らせたか、また日本の森は十分に育っているのだから「伐採規制で守る」のではなく、ちゃんと経済ベースで木材を伐って、高く売れる商品開発をすることが林業再生に肝心だ……という話をしたと記憶する。

これ、当時は意外な意見だったようで、その場でも妙な反響?を呼んだ。会場がシ~ンとしてしまったのである(笑)。
「てっきり森を守るために、もっと税金投入を」と言うと思ったのに……という感想が、列席している国会議員から出たほどだ。実際、当時は切り捨て間伐が主流で、森林保全のための間伐だからと、伐った木を売ることさえ忌避されていたのである。とくに野党としては自然保護推進の方が売り文句になったのだろう。

ただ後藤氏は終わってから「これならやれるな!」とやたら喜んでいたのだった。正直、税金で森を守れと言われても将来が見えないし、効果も出にくい。しっかりビジネスしなさい、と言われた方が政策に結びつきやすいし、効果も短期間に出ると思ったのだろう。

ま、その後、この勉強会に出ていたメンバーの多くが自民党に移るか、知事に転出、あるいは落選して(´Д`)消えて行ったから、何か政策にまとめたようには思えない。ただ、その後菅直人代議士を中心として、まったく別の方向から「林業の産業化」政策が提案されていく。それが森林再生プランへとなって政権を取ってから推進されていくのだが……。まっ、私の影響は微塵もないと思う。

その後、自民党政権にもどってからも、「林業の産業化」という部分は強まる一方だ。自然を破壊しても金になればいい、補助金額より純益が少なくても売上を大きく見せたら成長産業ということにする、というのが現在の林業ではあるまいか。

しかし、結局は搬出間伐にも補助金をつけるなど、金のバラマキは強化されこそすれ、全然ビジネスにはなっていない。高付加価値商品どころか、燃やすのも燃料という商品だと促進する有様。私の主張とは似て非なる、いや正反対とも言える、まったくベクトルの違う方向に進んでしまった。

まっ、今の後藤大臣にはコロナ対策に頑張ってほしいが、たまには森林・林業政策も考えてくれたまえ(なぜか、上から目線)。

 

 

2021/10/07

Y!ニュース「首里城のためならカシの大木の伐採OK?…」書いた裏の感情

Yahoo!ニュースに「首里城のためならカシの大木の伐採OK? いや反対?」を書きました。

お読みになればわかるが、石垣島のオキナワウラジロガシの伐採問題、その反対運動の背後には琉球王国の八重山諸島征服がある。つまり石垣島も琉球支配に苦しんだ地だったのだ。それなのに、征服した王朝の城を復元再建のために、自分たちが大切にしてきた木が伐られるというから、心のざわめきが強まるのだ。

さて、この構図、もう少し身近にないかと考えたのだが……。

思いついたのは、生駒~奈良の歴史話。

西から来襲した強大な征服軍。よ大阪湾から上陸した軍勢は、奈良盆地に入ろうと生駒山を駆け登る……それに対して迎え撃ったのは、生駒の豪族・登美彦。見事、侵略軍を返り討ちにし、軍の副官を倒したのだが……侵略軍は撤退して海沿いに南下する。各地でも地元の軍勢に追われて、とうとう熊野から川を遡るルートを取った。

十津川から北山側を遡行し、山を越えて吉野に入ると、なかには彼らにすり寄る地方豪族もいて、とうとう奈良盆地の国中を蹂躙する。最後に残った生駒勢も、登美彦の国に潜入していた侵略軍の手先に暗殺されてしまったことで征服されてしまう……。

かくして侵略軍は大和征服を宣言し、将軍は自ら王位につく。それが神武天皇である。

そう、奈良は西の夷に征服されて現在の大和王権が誕生したのだ。それなのに、奈良の人々は天皇をいただいて喜ぶのはなんなん?

神武天皇の顕彰碑を建てて喜んでいるんじゃねえよ( ̄∇ ̄;) 。という気分なのであった。

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話が脱線したが、石垣島が沖縄本島に向ける目は、私が天皇家に向ける視線と同じかなあ、と思った次第(笑)。。。。。え?違う?

 

2021/10/06

林野庁がマンスリーレポートを発刊

林野庁が、webで「林産物に関するマンスリーレポート」を今月から発行することになった、らしい。マンスリーなんだから月刊なんだよね。

なんでも意図は、「木材需給、木材価格、木材産業の動向などに関するデータを集約・整理し、毎月定期的に公表しようとするもの」

すでに9月号が創刊準備号で発行されている。

令和3年9月創刊準備号 

(仮)というているから、簡単なイメージ的なものかと思いきや、なんと43ページにもなる大部なもの。目次だけ引用すると、

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しかもカラーで派手(笑)。内容は、ちょっと古い数字も混ざるが、もっと直近の動向を分析抜きで出してほしい。こうしたスピード感と一次情報を出してくれるのは有り難い。EUや中国の動向もグラフで示されているし、為替レートまで掲載している。まだ本号が発行されていないのにべた褒めするのはどうかと思うが、こういうのを待っていたんだよ\(^o^)/。本号は毎月何日に出すのだろうか。

願わくば、割り箸統計も載せてほしい。ここ10年ほど、姿を消しているから。。。

白書は1年遅れだし、しかも中身は何か意図的な取捨選択を感じるからなあ。妙な解説で色付けしないで、すばり現場の数字を出してくれるのが一番使い手がある……て、私は、分析しようと思わないけどね。それは直接利害関係のある林業関係者がやるべきだろう。

私は、つまみ食いするだけ(笑)。林業に閉じこもらずに、もっと大きな世界を俯瞰したい。そして俯瞰した視線から細部を見ると、また別の世界が広がっていることに気づくよ。

 

 

2021/10/05

ソーラー予定地の磨崖仏

幾度か取り上げた、奈良県平群町のメガソーラー建設予定地。そこにあった裏の谷磨崖仏が削られたことも伝えた。その後、削った石仏部分は保管されていると聞いていたが、実物をどこにも公開していないのだから、怪しげだった。

奈良県が止めたメガソーラー計画の現場から見えてきたもの

ところが久しぶりに建設予定地を訪ねると、その入り口とも言えるどんづまりの藪に、妙な石仏を発見。どうやらこれが……。

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なんだか目新しいが、削った石仏を宝塔のようにした板碑らしい……。

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岩にあった磨崖仏と比べると痛々しさが伝わる。周りの石が新しいからだけでなく、作られた祈念ではなく、破壊された過去を想像させるからだろうか。なんか貧弱に見える。せめて庵でもあればよいのだが。

現地は、今後どうなるのか。建設は県の中止命令以降、工事は行われていない。伐採-造成地の崩落を防止する措置を細々と行われているだけだが、目に見える変化はない。

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これが現地の様子。伐採しただけの斜面には草が繁っているが、作業道を入れたり表土を剥いだところは無残に崩れて、もはや道としての機能しないだろう。今後削った頂部と埋めた谷をどうするのか、どうなるのか注視だ。

 

2021/10/04

「昔話法廷」で知る異論の力

私が好きなNHK番組に「昔話法廷」がある。以前はEテレでイレギュラーな放映だったのだが、今晩は総合テレビで。だから急いで告知。

日本やヨーロッパの昔話を法廷という裁きの場に上げることで、別の視点からの世界を浮かび上がらせるドラマである。と言ってもたいてい15分の短編であるが。
そこでは有名な昔話の裏に隠された仰天の真実が暴かれる。

たとえば「浦島太郎」は、乙姫を妊娠させて逃げていた? 「赤ずきん」は、オオカミにおばあさんを売り渡していた? 「白雪姫」は義理の王妃を罪に陥れるための陰謀を企んでいた? 

そこで何が真実か、何が罪か、を考えさせるという番組で、判決は示されない。視聴者にゆだねられている。

これまで昔話と言えば勧善懲悪的なストーリーが目立ったが、そこに異論をつきつけ、どっちが正しいのか。どっちの意見もくみ取ったらどうなるか、を改めて考えさせるものだ。ネットでも見られるので是非。

 

そして今夜、なんと最高傑作「桃太郎」が総合テレビ(午後11時半より)で拡大版33分が再放送。脚本もすごいが演じる俳優もすごい。脚本は森下佳子、検察官に天海祐希、弁護人に佐藤浩市、桃太郎に仲野太賀。演技力にも魅了されたが、話はどんでん返しが続き、何かまったく別の真実が示され、何が、誰が悪いのかわからなくなる。また重要な視点としてSNSまで登場する。

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私は3月の放送で見て、度肝を抜かれ衝撃を受けたよ。

事件は一方的に見ても真実はわからない、とよく言われる。とくに報道される刑事事件はそうだ。しかし、もっと日常的、あるいは科学的と思われている世の中の常識にも通じる。私はとくに森林、林業、そして地球環境問題で強く感じる。

森林がいかに環境に関わっているか。それ自体は否定しないまでも、もしかしたらトンデモな勘違いをしていませんか?と問いたい。みんなが信じていることは、実はバイアスだらけだ。それも信じたいことだけを信じ、都合の悪いことは意識から外し、これまで信じてきたことを否定されるのがイヤだから新事実に目をつぶり、必死で否定する……その繰り返しではないか。

では、私が提示する「森林の本当の姿」が正しいかと言えば、そう思う人は田中淳夫バイアスにかかっているのである(笑)。

ようは自分で考えなくてはならない。それも幅広く異論・異説を含めて咀嚼し、自分の思い込みを取っ払うことだ。他人の意見にただ乗りするな、と言いたい。乗りたかったら、十分に咀嚼して味わってからだ。自分の意見を信じるな、とも言えるだろうか。

その材料にならないか、という思いで、現在出版を準備中。この「昔話法廷」に着想を得て執筆した、わけではない(^o^)。

タイトルは「虚構の森」。森が地球環境に大切、なんて誰が言った? SDGsの罠に気をつけろ!

 

2021/10/03

奈良の古墳バナナ

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写真は、ボルネオのジャングルの一角で、10年ほど前に撮ったものだ……。

なんて書いたら、わりと信じられるかもしれない。実は奈良の一角だ。それも古墳のそば。仁徳天皇皇后の御陵ということになっているヒシアゲ古墳の濠の周辺。仁徳天皇陵は大坂の堺市にあるのに、なぜか皇后は奈良なんだね。でも全長219m、後円部径124m、後円部高さ16.2m、前方部幅145m、前方部高さ13.6mという堂々たる前方後円墳だ。

ま、そんなことはどうでもいいのだが、そこにバナナが繁っていた。誰が植えたのか、もはや野生化している。なかなかの景色ではないか。

バナナそのものは観葉植物としての栽培も盛んで、わりと寒気に強い品種があるらしい。もっとも日本でも古くからバショウと呼ばれてあったのいるか。松尾芭蕉なんてペンネームもあるのだから(^o^)。生駒山にもあって、ちゃんと房が実っていた。意外とたくましい植物のよう。

ちなみに高さは数メートルに育つが、基本的に草である。毎年冬は枯れる。切り倒すと、断面は葉ばかりだ。それでもバナナが生えていると、いきなり熱帯雨林気分になるから、庭にも植えてみたいと思う。生長早いし、庭で探検ごっこができる、かも。

 

2021/10/02

2020年の木材自給率は41.8%に!

ひっそりと発表されていたから目につかなかったが、2020年の木材需給表が発表されていた。

それによると、木材自給率は41.8%。前年比で4.0ポイントも上昇している。いきなり4割台に立ったのである。これは自給率10年連続上昇でもある。

もっとも、さほど自慢できる状況でもないことはわかる。

2020年の木材の総需要量は7443万9000立方メートル、前年から746万6000立方メートル(9.1%)減少しているのだから。
とくに用材が、前年に比べて987万7000立方メートル(13.9%)減少、しいたけ原木も9000立方メートル(3.6%)減少、燃料材だけが241万9000立方メートル(23.3%)増加している。

国内生産量は、3114万9000立方メートルと前年比16万1000立方メートル(0.5%)増加した。もっとも用材は182万5000立方メートル(7.7%)減少している。しいたけ原木が9000立方メートル(3.6%)減少、燃料材が199万5000立方メートル(28.8%)増加……つまり全体の消費は減ったのに、燃やすための木材生産が増えたから自給率も上がった、というちょっと詐欺的(笑)な増え方。
もはや木材の主な使い道は燃料……という前々世紀の社会にもどってしまったかのよう。

ちなみに2020年の輸入量は、4329万立方メートル。前年と比較すると762万7000立方メートル(15.0%)減少した。用材が805万2000方メートル(17.0%)減少し、燃料材が42万4000立方メートル(12.3%)増加している。

昨年はウッドショックがあって用材(建材)輸入が減ったことも影響を受けているだろうが、結果として(見かけは)4%も自給率が上がって林野庁的には嬉しいのではなかろうか。

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2021/10/01

都市樹木地図と動物侵入経路

グーグルが、AIによる都市の樹木密度を分析した地図づくりを、2022年には東京や横浜を含む世界の100以上の都市に拡大すると発表した。

グーグルのAI緑化地図、世界100都市以上に

AIで木を1本1本まで正確に把握し、都市のなかで樹木の密度が低い部分を示せるのだという。それで植樹が必要な場所を効果的に割り出せるとか。ロサンゼルス市などでは、昨年から樹木マップを提供しており、植樹計画に役立てている。

これも気候変動対策の一つという位置づけだ。都市のヒートアイランド現象が広がっていることから、自治体に樹木マップを無償提供して、植樹を進めてもらおうという提案だそうだ。気候変動とヒートアイランド現象は微妙に違う気がするのだが、それは置いておこう。

おそらく公園などの緑地と街路樹を想定しているのだろう。日本の場合は、神社なども緑地に入るかもしれない。奈良市の樹木地図をつくったら、ただでさえ都心部に世界遺産の森があるのに、神社の鎮守の森もあって緑地の方が多いかも……。木を一本ずつ判別できるのなら、シカも写ってAIがシカ!と割り出してくれると楽しいのだが(^^;)。昼間の街に何頭シカが歩いているのか知りたい。

ただし、都会だからといって今以上に緑を増やすことがよいのかどうかは慎重に考える必要があると思う。たとえば街路樹は、すでに日本には675万本の街路樹があるが、維持経費が馬鹿にならないから困っている。公園もそうだ。だんだん荒れている都市公園、児童遊園が増えているように感じている。

それに今の日本は、こうした緑地や街路樹が、野生動物を都心に引き込む役割をしている。ちょうど先日の「クローズアップ現代+」で、「史上最多ヒグマ被害“都市出没”の謎を追う」という番組をしていた。札幌都心部にヒグマが浸入する問題なのだが、結局、浸入路は河川や街路樹などの緑地だった。安易に都会に樹木を植えたら痛い目に合うかもしれない。こうした問題は、アメリカにはないのだろうか。

ちなみに、これって、私が今年1月に書いたネタなんだよね。

大都会に出没する野生動物の侵入ルートと隠れ家はどこだ

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『獣害列島』でも取り上げたのだけど、もう少し野生動物の動向に気をつかうべきだろう。でも都市樹木マップを使えば、動物が入らない街づくりに使えるかもしれない……。

 

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