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森と林業と動物の本

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2021/10/17

元新聞記者が書いたKindle林業本

こんな本を知っているだろうか。

中山間地域を維持するための処方箋: ~優秀な林業従事者を散りばめよう~ 坂巻陽平著

Photo_20211016100001

AmazonのKindleでしか売っていない?林業本。と言っても、40ページほどなんで小冊子というべきか。また価格は250円だけど、Kindle unlimited会員なら0円。つまり無料で読める。

タイトルからは地域論に見えて、本筋は林業本ではないかと思う。なぜなら、著者は現役の林業従事者だから。

とはいえ、ちょっと特殊なのは、その経歴だ。神奈川県横浜市出身ながら就職先に選んだのは高知新聞社。つまり新聞記者だった。そこで中山間地問題(具体的には閉校する小学校の取材を通して)に触れた。そして自伐型林業が行われていることを知って、自ら挑戦する決意をする。これは社内の自己研修制度を利用したそうだが、ようするに無給の休職制度だろう。そして中山間地集落に移り住んで「自伐型」を試すのだ。結果として限界を感じたり、事故を経験したり、コロナ禍などもあり、故郷に近い場所で行おうと、神奈川県山北町に移る。いよいよ退職しての転職となる。だから、もっとも多くの木を切り倒した経験を持つ(元)新聞記者だそうである。

林業経験は2019年からだから、まだ2年程度ではあるが、その中から感じたこと・考えたことをまとめたのが本書ということになる。

さて長い著者紹介になったが、実は私は彼に会ったことがある。高知新聞の記者として、取材に来たのだ。テーマは……なんだったか忘れた(^^;)が、肝心の取材テーマより恒続林だとか林業社会そのものについての話になってしまった記憶がある。

さて、目次を紹介しておこう。

はじめに
第1章 日本の国土利用と林業事情
 1,山、森の国、日本
 2,最も危険な仕事「林業」
 3,森づくりおける二つの思想「法正林」、「恒続林」
 4,いかに林業従事者の地位向上を図るか
第2章 元記者が木を切り始めた経緯
 1,過疎地域で出合った「自伐型林業」
 2,神奈川県にUターン
第3章 山への関心を高めるには
 1,林業ではなく、人の「成長山業化」
 2,「成長山業化」の先に
おわりに

最初は総論的であるが、よくある日本の森林率とか労働災害の千人率などの紹介に留まらず、政府の国土利用計画の変遷や、世界と日本の林業の理論的支柱である「法正林」、そして前世紀から生まれては消え、消えては再登場を繰り返す「恒続林」の流れから説き起こしている。これって、実は相当珍しい。なかなか、そんな俯瞰した視点を持って林業を語る例がないのだ。おそらく私ぐらい(笑)だが、私はしょせん、口舌の徒だからね……。

考えてみれば、林業現場を経験しながら林業論を書く人は、ほとんどいなかったのではないか。山主とか、林業会社・林業コンサルなどの経営者としてならいるだろうが、現場作業経験とはちょっと違う。それでいて新聞記者だっただけあって、俯瞰的立場を残している。また文章はこなれていて読みやすい。

このように林学理論と実体験を織り交ぜながら語る林業論の本……と思わせて、やはりタイトルに偽り無しというべきか、最後は「林業ではなく、人の「成長山業化」」とあるように地域論へと着地していく。森林を活かした利用全般が地域を支えるのだ。これは「林業従事者が自ら考える」ことが重要としている。そして著者がめざすのは、林業をに従事しながら中山間地域の現状や日本の山づくりに関する情報を発信していくことらしい。

さて、その意図や内容をどう評価するかは読んだ皆さんにお任せする。ただ「これからの林業」を考えると、私の感覚的には環境低負荷型の林業に向かわざるを得ないし、そうならないと破滅的だと感じている。

いまだ世界の主流は「法正林」的な単一樹種の一斉造林・一斉伐採だろう。しかも短伐期(日本の50年程度で皆伐というのも短伐期と認識している)。面積では圧倒的にこちらだ。しかし欧米を始めとして、それらの限界は見えてきて修正の動きが進んでいる。この点を無視して「世界の潮流は一斉型林業だ」というのは近視眼だ。

北米・南米、ニュージーランド、そして北欧などでも一斉型林業は盛んだが、私にはこれがあるべき林業像とはとても思えない。

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こうした写真を見ると、はっきり言えば気分が悪くなる。虫酸が走る。反吐が出る。森林生態系を無視した極端な木材栽培業だろう。

日本の「自伐型林業」のように小規模にやるべき、というのもそうした林業へのアンチテーゼの一つだと考える。私は自伐型林業そのものは徒花的(笑)なもので、この方法ですべてが解決するとは思わないが、条件の合う地域や人がいるなら行えばよいし、少なくても大規模・機械化・画一的な一斉型林業よりはよほどマシだ。
また、少しずつ恒続林思想を取り入れた混交林型森づくりも各地に芽生えている。それでは管理が大変・難しいという反対意見もあるのだが、それはていねいに管理するのが面倒くさいしコストをかけなくないという甘えか、人材がいない=林業家はアホです宣言みたいなものだ。時間はかかっても、そうした意識と人材を育てる目標を掲げるべきだろう。

そもそも一斉型林業は収益第一主義の色が濃すぎて、それではSDGsの時代に合致しない。収益を維持しつつも環境(生物多様性、景観、そして防災)重視、そして地域社会の担い手としての林業とは何か。それを考えるべきだ。果たして「人の成長山業化」がそれを可能にするのか。。。

なんだか本を紹介するつもりで、持論の展開になってしまったが、林業の本質についてより深く熟慮深慮しなければ、未来は危うい。本書も議論のとば口になるだろう。

 

なお、私はこんな記事も書いている。

過去の日本林業は多様性があった──混交林的な森づくりで環境と経済の両立を

 

 

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コメント

本当に良く勉強されてるんですね。
驚きました。

混合林型と聞いて良くある針葉樹と広葉樹を交互に植える奴かと思いましたが、(良くある失敗する奴ですね)杉と檜の林とは驚きました。

日本の悪い所は法正林って所でしょうか?
補助金が出るのは限られた苗しかない所でしょうね。

今はウッドショックだなんだと言いますがこの前までは値段の付かなかった杉を花粉が出ない杉を開発してまで植林する所なんか何だかなーって思う今日この頃です。

かと言って何を植えたら将来当たるかなんて誰にもわかりません。

信州で言うなら電柱にする為の唐松がコンクリート制になり嘆いた所に合板として優秀だったなんて当時の人の誰が分かったのでしょうか?

地主さんに将来は何が当たるかわかんないけど取り敢えず植えといてなんて言える訳もないし補助金も出ないですよね。

正に乗るか反るかの山師です。

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