誤解呼ぶ熱帯丸太の取引量
ITTO(国際熱帯木材機関、横浜市)の熱帯木材貿易(隔年発表)の最新版(2019-2020年版)報告書が出た。
そこでは、
2020年における世界の熱帯丸太生産量は3.3億m3。最大の輸入国は中国の858万m3で、世界シェアの70%を握っている。日本は、1998年まで世界最大の熱帯丸太輸入国だったが、現在のシェアは0.6%にまで低下している。
とある。
が、これ、かなり誤解を呼ぶというか、恣意的に誤解させようとしているんじゃ? と思わせる統計数字の扱い方だ。
熱帯丸太の貿易では、中国が全体の70%を握って世界最大……。そして日本はたった0.6%……。
数字そのものを疑うつもりはないが、これでは中国が独占していて、日本は熱帯材をほとんど使っていないみたいではないか。
鍵となるのは「丸太」という点だ。熱帯材の丸太の生産量のうち中国の輸入量を見ると、約3.85%にすぎない。それが7割ということは、貿易量そのもが生産量の5.5%程度ということだ。輸入しているのは、ほとんどが中国なのかもしれないが、そもそも貿易量が少ない。
実は熱帯諸国は、丸太輸出を止めて、製材や合板に加工して輸出する方向にシフトしている。
今年の白書によると、日本の木材需要の内訳はこんなん。熱帯木材は、インドネシアとマレーシアがほとんどで6.9%。加えてベトナムはパルプやチップにして輸出しているようで、それが9.0%もある。合わせると16%近い。これを総需要から導くと、1140万立方メートルになる。中国の丸太輸入量より多くなる(-_-;)。ま、中国も製材や合板でたくさん輸入しているんだろうけど。
だいたい日本の南洋材輸入は、ほとんど終わった、と今年初めに紹介したばかり。丸太で輸入することはなくなったのだ。これまでも、これからも製品輸入が主流だろう。いや、資源量の減少から考えると、熱帯木材の製品そのものが減っていくかもしれない。そのうち熱帯産木材といいながら、樹種はアカシアやユーカリなどになっていくかもなあ。
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