建築物の木材の炭素貯蔵量と住宅寿命
木材利用促進法が改正されたのに合わせて、林野庁は建築物に利用した木材の炭素貯蔵量の表示に関するガイドラインを公表している。
「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」について
木材の炭素貯蔵量を求める計算式とは、
Cs=W×D×Cf×44/12
Cs:建築物に利用した木材(製材のほか、集成材や合板、木質ボード等の木質資材を含む。)に係る炭素貯蔵量
(t-CO2)
W:建築物に利用した木材の量(m3)(気乾状態の材積の値とする。)
D:木材の密度(t/m3)(気乾状態の材積に対する全乾状態の質量の比とする。)
Cf:木材の炭素含有率(木材の全乾状態の質量における炭素含有率とする。)
うーむ。難しすぎる。まあ、木材の樹種や乾燥とか建材の種類などの根拠などはリンク先に載っているから、興味のある方は参考に。
建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン(PDF : 432KB)
なんか、以前にもよく似たモノがあったなあ、と考えて思い出した。ウッドマイルズだ。いや今もあるかもしれないが、すっかり陰が薄くなった。こちらは木材の移動手段や距離を二酸化炭素排出量で示すというものだ。こちらも細かな計算式があったが、今回の方はより難解。
ただ炭素貯蔵を示すなら、木材以外でも炭素を含むものは少なくないように思うが。プラスチックだって炭素を含むなあ。
ウッドマイルズは、ようは外材より国産材、そして近くの山の木の木材を使いましょう、という意図から作られた。もちろん二酸化炭素に置き換えるのだから、地球温暖化対策も名目としてある。
今回は、文字通り建築物そのものの炭素貯蔵量なんだから、気候変動対策である。建築物ごとに貯蔵量を掲示するなどして「建物を建てた企業や施主が、カーボンニュートラルへの貢献を対外的に示せる」ことを目的とするんだそうだ。外材いっぱいの家の場合はどうかな。。。
ウッドマイルズと今回の建材の炭素量を掛け合わせたら、より正確になるかもしれない。しれないが……。
日本の住宅の寿命は、平均29年である。ま、30年としても、それが炭素貯蔵期間だとするなら、その木材の成長期間の半分以下ということになる。60年生だとしてだが、外材の中にはもっと長いものもあるだろう。ということは、大気中の炭素削減のために貯蔵するという意図からすると、住宅寿命を2倍ぐらいに伸ばす必要があるだろう。さもないと、木の成長量より早く破棄して炭素を貯蔵どころか排出してしまう。非住宅の木造建築の場合は、寿命は伸びるのか、あるいは短めなのか。
しかし、仮に60年もたせても、カーボンニュートラルにはなるが削減にはならない。
国土交通省の木造住宅期待耐用年数によると「フラット35基準程度で50年~60年、劣化対策等級3で75年~90年、長期優良住宅認定であれば100年超」だそう。しかし日本では、世帯や世代交代をすると、リフォームや建て替えが多い。その度に木材は入れ代わっていく。これは時代による機能性の要求が変わる(断熱性能とかIT仕様とか)ことのほか、精神性の問題かもしれない。洋風がいい、新モダンがいい、エスニックがいい……ほか、禊ぎ意識もある。おニューを求める心だ。
ちなみに、このガイドライン作成の意図の裏に「2030年の国産材の供給量を現在より35%拡大」方針があるそうだ。国産材生産量を大雑把に2000万立方メートル強として、700万立方メートル以上増やすことになる。これは丸太だから、その3分の2以上がチップになって紙か、あるいは燃料になる。残りが製材か合板になる。その分外材を減らすのか? 建築物になる分は何棟分だろうか。人口減少時代だからなあ。
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