シュールな大極殿南門
平城宮跡に大極殿南門の復原工事が進んでいる。
大極殿は、天皇が儀式・執務をする巨大建築物だが、その周辺の復原として南門をつくっているのだ。この度、素屋根を横にずらしたというので見に行ってきた。
なんか、シュールというか、古代建築物の復原なのに、近未来的な鉄の屋根がある。いわば建築用の足場と囲いだが、いよいよ中の建築が完成したので、それを横に引っ張ってずらしたというのだ。私が頭に浮かんだのは、サンダーバードの基地(笑)。
ずらす前は、こんな感じ。
さて、これも復原・復元であって、文化財の修復建築でないのは言うまでもない。設計図が残っているはずもないから、想像で描いた部分も多分にある。
沖縄の首里城の再建工事と似た立場である。時代の差が1000年以上あるので、より想像部分が多いだろう。ここでは、どんな木が使われているか。
木材としては8000の部材があるそうだ。使われたのは、主に紀伊半島のヒノキ。なかには樹齢200年近くの吉野ヒノキもあるそうだ。大木である。もっとも太い柱となる原木の直径は80センチくらいか。人工林からであって天然木ではないはずだ。でも、Yahoo!ニュースにも書いた通り、文化財でもないのに貴重な大木を使うことの是非を考えると、悩ましい。
使われた木のサンプル。
南門の完成は、来年3月を予定。でも次は、両隣に東楼、西楼を建てる。なかなか終わらんのである。
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古来より伝わる木造建築物を、その都度修復して未来に繋ぐ行為は大切な事だと思います。
しかし本来の形が分からないままに、都合良い解釈で貴重な古木を無駄に使う事には違和感があります。観光目的なら尚更です(笑)
平城宮跡地に限らず、史跡で風を感じながら当時を想像する事が私は好きなんですがね。
投稿: 山のオヤジ | 2021/10/12 22:05
そこが悩みドコロです。復元施設も200年ぐらい建てば文化財的価値が出るんじゃない? という意見もあるでしょうが、それはそうなったときの話。
大木資源が潤沢にあるのなら、それでもいいのですが。ちなみに文化庁は「観光資源」とは口が裂けても言わないだろうなあ(笑)。
こうした復元建築物は、現代の建築基準法に適さないので、基盤はコンクリートにゴムの免震構造、内部も見えないところに合板や鉄骨を使っています。
投稿: 田中淳夫 | 2021/10/13 09:55
ひどい話ですね。格好だけの木造じゃないですか。耐震を言うなら、現代の技術を活かしたSRC造で内装に生地の木材を張りまくった方が潔い良いかと思われます。10年に一度張り替えれば新品同様になるし、木材の需要拡大に繋がります。
投稿: 山のオヤジ | 2021/10/13 21:58
んや、免震構造にするのも建築基準法に適して頑丈にするのもいいと思いますよ。ただ、それを復元と呼ぶのか、ということですね。
あくまでパビリオンなのではないかと。観光か、文化の伝道か、と理由づけはどちらでもいいけど。
投稿: 田中淳夫 | 2021/10/14 21:45