誰が「おかえり」と言うのか
朝ドラ「おかえりモネ」が最終盤である。私は、さしてハマることもなく、淡々と、ただその時間に起きて朝飯を食っていることが多いという理由から見続けていた(^^;)。このドラマの終わり方の理想として「地元に帰っても上手く仕事ができず、また東京にもどり、そこで東京の同僚らに『おかえり』と迎えられる」状況を期待していたのだが、どうも違うようだ。そりゃそうだろうなあ。
今はすっかり離れているが、かつて私は田舎暮らし評論家であり(笑)、実際に田舎取材ばかりしていた時期があるのだが、その頃に「住みやすい田舎」とは何かとわりと真剣に考えていたことがあった。
ちょうど、こんな記事が。
若者が地方から逃げ出す本当の理由 流入のカギは「適度な無関心」
居住満足度に与える影響は、「親しみやすさ」が最も大きい。この親しみやすさとは、「気取らない親しみやすさ」「地元出身でない人とのなじみやすさ」「地域の繋がり」「近所付き合いなどが煩わしくないこと」「地域のイベントやお祭りなど」といった要素を含んでいる、とのことだ。
これをまとめて「適度な無関心と距離感によって形成された緩い人間関係」としている。
つまり「親しみ」という言葉から連想する田舎の人間関係のイメージとは違って、都市圏の方が親しみやすいわけだ。もちろん生活サービスや交通などの点からも圧倒的に都市の方が有利だろう。
ちなみに、こんな記事もある。日本で最も自殺の少ない町の調査から気づかされたこと
『生き心地のよい町~この自殺率の低さには理由がある』(岡檀著、講談社) という本の著者の執筆だが、具体的には日本で最も自殺の少ない町(徳島県海部町~現海陽町の一部)の秘密を研究者が調査によって解きあかしたものだ。
そこでも語られるのは町民の「異質な要素を受け入れ多様性を認める」姿勢や、「緊密すぎない、ゆるやかなつながりを維持する」人間関係だ。人間関係が緊密でない方が自殺は少ないのだ。ほかにもいろいろあるが、それは本書を読んでいただきたい。
人は他人との関係を求めるけど、それはあくまで緩やかなものであって、緊急時以外は生活に介入しない・されない姿勢が幸福度に響いてくる。それは田舎と都市と二元化できないな、と感じる。
行政の政策で、流出を防ごうとか、移住者を迎えようという動きはたくさんあるが、単に仕事場をつくるとか、住居を与える、地域住民と仲良くさせようとする世話焼きは、かえって逆効果かもしれないよ。どうやって人を迎え入れるか、ではなく、元からの住民の対応を教育することが必要になってくるかも。(無理だけど。)
私なりの結論としては、歴史的に人の出入りが多いかどうか、ということが住民性に大きく影響するように感じた。都市だけでなく農山漁村であっても、わりと人々の往来(移出入)が多いところは、「ほどよい親しみやすさ」の感覚が保てている。昔から交通の要路で商工業の取引があったり、好景気時期に出稼ぎを多く受け入れ、彼らが定着していたりしているからだ。山奥の住民と話をしていると、ときに「実は〇〇の出身でよお。〇十年前に仕事を求めてやってきたんだわ」なんて聞かされることがある。今は田舎でも、よそ者をわりと受け入れている地域はある。
逆に見た目はそこそこの中核都市であっても、人の移入が少ないと、よそ者排除意識がじわりとにじみ出る(^^;)。一方で完全な大都市圏でビジネス中心地だと流入・流出が多すぎて「おだやかな親しみやすさ」が形成されにくいかもしれない。
……なんで、こんなことを考え出したのかと言えば、私も、自身に関わる人間関係の対応を考察していたからかもしれない。
ただ昔とった杵柄?からすると、地方創生とか、田舎暮らしなんて、行政が入れ込みすぎない方がいい(笑)。
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田舎も都会も密すぎるとすぐ自殺しちゃいたくなりますよね〜w
わたしもとっとと死にたかったけど、コロナでもコロナワクチンでもまだ死ねませんでしたw
もう十分地域貢献も林業貢献も結構やったと思ったけど、、、林業界は70なっても辞められない、、、
フィギアスケートなんて30超えて競技していたらとっくにベテランだけど、我々はまだまだ中堅なるかならんかの新参者です。(そもそも地元育ちでもないし、、、)
とはいえ、この仕事もこの地域も大好き過ぎるぐらい大好きなので、たとえ林野庁の予算が使えなくなったとしても、(その世代の)地域住民から総スカンくらっても、生きている限りは一生やり続けますが、、、
だけど時々、もう十分やったから死なしてくれと思うのはたしかです。5〜10年ぐらい、地域に軸足残しつつも海外逃避、他業界逃亡するのもありかなと思う今日この頃です。
(新手の地域活性化、荒手の人材育成wですw)
投稿: 森林プランナー | 2021/10/26 07:29
「荒手の人材育成」。いい言葉ですねえ~。
まだ死ななくてもいいと思うけど、さっさと林業辞めて、海外でも別地方にでも逃避したらよいかと思います。「趣味の林業」ならどこでもできる(笑)。
私も、その誘惑にとらわれます。好きなことを思いつきで書くだけで、人間関係も希薄にして……と。
投稿: 田中淳夫 | 2021/10/26 08:49