頑迷な「林業の常識」と新しい施業法
フォレストジャーナルwebに「病害虫対策や経営的リスクの分散、SDGs貢献も!? 世界で進む新たな森林施業法とは」を書きました。
と言っても、全然新しくなく、本ブログでは繰り返し紹介・論じてきたこと。
ようするに、現在の林業施業法の否定だ。今やってる一斉伐採-一斉造林は時代遅れの「法正林」理論ではないか。世界の潮流は変わっているのに。
それなのに、日本の林業関係者は、頑迷というか後生大事に、この“原則”を守るのが大切だと思っている。一斉に同じ樹種の苗を植えて、伐期を決めて、(間伐も交えるものの)最後は全部伐るのが林業の王道だ、と思い込んでいる。だから多少とも皆伐批判が(マスコミなどで)されると、それこそ一斉に批判する。なんでも一斉にするのが好きなんだなあ(笑)。
お山の大将で、自分の知る林業、自分のやってる施業が世界でもっとも正しいと思い込んでいるのかもしれない。いや、単に新しいことに取り組むのが怖いだけなのかもしれない。択伐だ、混交林だ、と言われても技術が確立していないし……と。そう言うのを、井の中の蛙、臆病風に吹かれる……というのかな。
しかし、世界中の知見は進んでいる。こんな論文があった。
Silvicultural prescriptions for mixed-species forest stands. A European review and perspective
英語読むの辛いので、機械翻訳した(笑)。すると、
混合種の林分のための造林処方。ヨーロッパのレビューと展望
単一種の林分については、これまでに開発された対策や方法と比較して、混合種の林分に対する造林処方は初期段階にあります。しかし、それらは、現在世界中の多くの国で推進されている混合種スタンドのよく考えられた確立、設計、および管理に不可欠です。ここでは、最新技術を確認し、実験のステアリング、スタンドモデリング、および造林用の混合種スタンドの造林処方をさらに開発します。
……この翻訳では、余計わからんようになった(泣)。誰か、訳してくれ。
ま、ヨーロッパの混交林施業に関する論文である。ただ混交林における間伐の方法論などを図解しながら説明しているようだ。
もちろん完全な施業法なんてまだ確立されていないし、ヨーロッパと日本は違う。でも、こんな図もある。十分参考にならないか。
なんだか、よく似た図を見たことがあるなあ、と考えたら、『吉野林業全書』だった。明治時代の吉野林業は、スギとヒノキを混交させて植え、間伐の仕方などを説明している。また先輩が新人に教えるのに、碁盤を使って、白と黒の石でどゃに何を植えて、間伐はこの順序でやる……と教えたと聞く。
ともあれ、混交林は日本にもあったのだ。いや、粗放林業による混交化も含めれば、日本の戦前の林業は多くが針広混交林だったのでないか。決してヨーロッパの新しい林業施業法ではない。硬い頭をほぐして、広く世界を眺めて、真面目に日本の林業、いや自分の山の将来を考えてほしい。このことは、フォレストジャーナルweb版の次号(13日公開予定)にも記している。
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北海道では照査法による択伐施業の実験林や、どろ亀さんこと高橋延清先生が考案した林分施業法とか試験レベルで実施されているのですが、全国的に広がるような動きは無いですね…実行も難ししいし、北海道と同じことをしても本州以南でうまくいくとは限りませんし。
投稿: 0 | 2021/10/11 08:25
照査法は、全国どこでも行えますよ。理念と理論さえ押さえておいて、各地の条件に合わせて技術を工夫すれば。
混交林づくりも各地で個々に試されています。ただ、それが広がらない。一林家の思いだけで留まってしまう。
結局、「林業の王道」は皆伐だ! j思っている人が大多数なんでしょう。
投稿: 田中淳夫 | 2021/10/11 09:15
DeepLの翻訳は試しましたか?
一応は日本語らしく翻訳してくれてるようです。
「 概要
単一種の林分に対する対策や手法が発達しているのに比べて、混合種の林分に対する育林処方はまだ始まったばかりである。しかし、現在、世界の多くの国で推進されている混交林の確立、設計、管理を的確に行うためには、これらの規定が不可欠である。ここでは、最新の技術をレビューし、実験、スタンドモデル、および育林の舵取りのために、種の混じったスタンドのための育林処方をさらに発展させています。我々は、樹種混合のどの側面が管理目標達成に最も関連しているかを検討する。その結果、生態学的目的のために種の多様性と構造的不均一性を維持すること、生産性を安定させること、そして社会的・経済的パフォーマンスが主な目的であることがわかりました。本研究では、森林施業、長期実験、森林モデルのために、種の混じった木立を管理するための定量的に定式化された造林処方を概観する。単種林に対する洗練されたガイドラインと比較して、混交林に対する処方は主に定性的で曖昧なものが多い。次に、混合林の管理のために開発されている方法論的アプローチを紹介します。空間的・時間的な分離のための尺度、作物の木に必要な種固有の生育空間、等価性と密度の修正のための係数、木の数と面積ベースの混合比率を管理するための基本的な関係などです。最後に、実験における育林のための方法論的アプローチのさらなる開発、スタンドシミュレーターへの実装、および育林作業のための結論を導き出しました。木の除去を誘導するためには、種固有のアロメトリー、生育面積、木と木の間の距離、位置に依存した競争指標に関する知識を実証するために、木や集団レベルに基づく空間的に明示的なルールを改善する必要があると考えています。また、単一種の森林よりも複雑になることが避けられない混合種の森林に対する育林処方の見通しと限界を議論し、科学と実践における次のステップに向けた結論を導き出します。
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。」
投稿: 木挽屋次郎 | 2021/10/14 08:49
おお、グーグル翻訳よりはわかりやすい(笑)。
有料版なら、もっと正確でかみ砕いているんですかね。
専門用語も多い論文の翻訳が簡単にできたら有り難いんだけどな。
投稿: 田中淳夫 | 2021/10/14 21:42