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森と林業と田舎の本

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2021/11/27

旅の友『森林美学への旅』

北関東を巡る旅には、幾冊か本を持参した。
その一つが『森林美学への旅~ザーリッシュの森をもとめて 小池孝良著 海青社』である。

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一時、「森林美学」にハマったことがあった。これはザーリッシュが唱えた施業法で、一般には「美しい森をつくれば、林業的にも豊かな恵みがもたらされる」と介されている。それが恒続林思想(メーラー)へと発展し、私も恒続林を学ぶようになるのだが、木材生産至上主義的な日本の現代林業にもっとも欠けた視点だと思っている。言い換えれば現代林業のアンチテーゼとなる視点だろう。

ただ白状すると、私はザーリッシュの執筆した『森林美学』(人工林の美)は読んでいない。日本の新島義直らが解題しつつ独自に執筆した『森林美学』も読んでいない。どちらも入手困難であったことも大きな理由であるが、それ以上に内容が難しくて理解できなかったからである。いやあ、一応手にとったことはあるんだが、こりゃ読めない……と悲鳴を上げてしまう内容だったのである。

が、本書は日本で唯一の森林美学の講座を開いていた北海道大学で担当していた小池氏の本である。小池氏には随分前にお会いしたことがあるのだが、彼の専門は別なのに、森林美学にハマっていたように思う(^^;)。
しかも本書は「旅」という言葉がつく通り、森林美学を講義するために学んだ足跡も含めて記されているのである。これなら!と飛びついて購入した。そして今回の旅の友にしたわけである。

実際、本書は森林美学そのものを講じたのではなく、エッセイ集に近いのだが、森林美学を知ろうと文献を読んだり現地を訪ねたり歴史を追ったり研究者と対話したり……という過程が描かれている。だから読みやすくストンと内容が脳内に落ちる。

本来は土地収益説による木材生産の技術として論じられた森林美学だが、そこに美的な感性がいかに関わってくるか……森林の公益的機能との関係は……と考え出すと奥が深い。たとえば林道ルートも、あえて曲線をつけることで美しくなるのだが、すると生態学的な意味まで生じるというのだ。また日本では明治神宮などの成立にも関わってくる。その点からは、日本の森林近代史と重なってくる。

後半には自身の研究分野なども登場しているし、たくさんのコラムにはCLTなども登場するので、これは?と思わせるのたが、一方で樹木葬の紹介もあり、そうか、美しい森で眠りたいという願望の作り出す墓は、森林美の追求なのかも、とか思ったり。

驚いたのは、最後に「森のようちえん」が紹介され、そこには私も取材した奈良の森のようちえんが登場することだ。日本の森のようちえんは、どうしても保育・教育の方法として論じられがちだが、もっと森林景観や森林生態系の中の子どもたちという視点からアプローチしてもよいのではないか、と考えてしまった。どんな景観が、人にとって美しく感じるのか。美しい景観が人間の心理や精神衛生に与える効果、そして美しさが森林生態系とシンクロする可能性……。

そうか、森林美学とは、林業だけでなく、公園づくりや森林セラピー、そして森のようちえんなど森林空間利用の面からも論じるべきなのだ。むしろ人が森林を扱う際のベースとなる学問なのではないか。そんなことを考えてしまったのである。

小池氏は、現在は島根大学名誉教授なられたようだが、またお会いしたいものである。

目次

1章 森林美学の史的背景
2章 今日的意義
3章 森林美学の基本法則
4章 森林の風景保育
5章 持続的森づくりのために
6章 樹種特性と環境変動
7章 操作実験による樹木応答へのアプローチ
8章 巨樹の扱い
9章 まなざしの意味
10章 好まれる林内風景
11章 森林美
12章 森林教育と永遠の森

詳しい目次を知りたい人は、海青社のHPをどうぞ。
 

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